~エルグランドにて~2
日常回です。この回から新しい章となります。
マオは正直飽きていた。いや、焦っていた。なぜならば、1日休んで次の日には魔界へと出発する予定だったのに、何かにつけて祖父であるミドが予定を引き延ばすからだ。
(…早く魔界に向かわないといけないのに…あの爺さん何かにつけて引き延ばすからな…孫と遊びたいのはわかるが…)
天蓋付きベッドの上でゴロゴロしながら足をバタつかせるマオ。
「ふぅ。」
思わずタメ息がもれる。
『タメ息をつかれて…お暇ですか?』
「‼‼」
いきなり話しかけてきたのはメイドのアルだ。
「…アル…いたの?」
(…こいつ…いつのまに…て言うか、気配が全く無かった…)
『えぇ、先程からここに。』
「ねぇ、アル?私はいつまでここにいなくちゃいけないの?いつ魔界に行けるの?」
『それは王に、マオ様のお爺様に伺ってみないと。』
アルが顔色1つ変えずに言い放つ。
「…はぁ。」
(…なかなかあの爺さん強敵だからな…聞き分けがないからな…)
~コンッ‼コンッ‼~
部屋の扉を叩く音がする。
「…どうぞ。」
マオが気の無い返事をする。誰が来たか見なくてもわかるからだ。マオの返事を聞き、アルが顔色1つ変えず、素早く扉を開ける。
『マオちゃ~ん‼今日はじぃじと何して遊ぶ?』
マオの予想通り、部屋を訪ねてきたのは、この国の王であり、祖父のミドだ。
(…やれやれ…毎日コレだもんな…)
「…じぃじ、お仕事は?」
『今日は無いよ。』
「…昨日も同じ事言ってなかった?」
『う…昨日も無かったんじゃよ。』
マオが呆れた顔をする。それを見てか、メイドのアルが続ける。
『王よ…いくらマオ様が可愛いからといって、毎日仕事をサボるのはいかがなものかと…』
その言葉を聞いた途端、ミドの顔色がかわる。
『さ、サボってなどおらんわ‼』
『皆が困ってましたよ。困り果てて、侍女長の私にまで相談に来たくらいですから。』
『…ぐぬぬ…。』
追い詰められ、グゥの音もでないミド。
(…では、トドメを刺すか…)
「お仕事サボるじぃじはきらーい。」
マオのトドメの言葉に、この世の終わり、かのような顔をするミド。
『そ、そんな…。』
『嫌われたくなければお仕事に戻ってください。』
アルが相変わらずの表情で淡々と告げる。
『…わかった。マオちゃん?じぃじはちゃんとお仕事してくるからね。お仕事終わったらじぃじと遊んでね。』
「いいよ~。お仕事頑張ってね。」
マオに励まされ、ミドが部屋から出ていく。
「…ふぅ。」
(…朝から疲れる…。)
『お疲れ様です。』
マオの様子を見て、アルが労う。
「ねぇ、アル?」
『はい。なんですか?』
「魔界に行く準備は終わってるの?」
『はい。とっくに…。あとは王の許可待ちです。』
(…マジか…どうする?…たしか、こいつもなかなか儂には甘かったはず…。)
「あ~ぁ。せっかくアルと2人きりでお出かけ出来ると思ったのに…。」
アルが少しだけピクリと反応する。
『…そんなに魔界に行きたいのですか?』
(…お、食い付いたか?)
「うん。大好きなアルと2人きりで行きたい。」
(…好きでも嫌いでも無いが…強調しないとな…)
マオのその言葉にアルがピクピクと反応する。
『…そんなに好きなんですか?』
(…ん?…)
「何が?」
マオが尋ね返す。
『…いえ、私の事が…。』
少し照れる素振りを見せるアル。
(…なんか話の方向が変わってるような…だが、予想通り食い付いた‼)
「うん。大好き‼」
マオが元気良く、即答で、満面の笑みで答える。
(…儂のこの笑顔で落ちない者はいない‼)
『………。』
先程見せた照れてる表情とは変わり、急に黙りこみ、少し険しい顔をするアル。何かを考えているのだろうか…。
(…ん?…なんだコイツ?…急に黙りこんで…マズかったか?不自然すぎたか?…)
マオに緊張がはしる。
『…分かりました。』
考えが纏まったらしいアルが驚きの言葉を発する。
『王を亡き者としましょう。』
「えぇっ‼」
マオは驚愕する。
(…コイツなに考えてるんだ‼)
「アル、なにを考えてるの?」
『いえ、王を亡き者とすればマオ様は魔界に行けますし、私はマオ様と2人きりで過ごす事が出来ます。お互いにとって最良の手だと思いますが…。』
(…ヤベェ…コイツ、ブッ飛んでる…)
「最良の手じゃないよ‼そんな事出来ないし、じぃじが可哀想でしょ⁉」
『そうですかね…。仕事もしないような王など要らないと思うのですが…。』
アルが怪訝な顔をする。
(…なんでそんなに不思議そうな顔をするんだよ…)
「とにかく、そんな案は却下です‼」
『かしこまりました。』
「じぃじはアルに弱いから普通に説得してきてよ‼」
『かしこまりました。では、早速…。』
アルが挨拶をして部屋を出ていく。
(…やれやれ…。)
と、思ったらまた扉が開きそこからヒョッコリとアルが顔をだす。
『…マオ様、ちなみに先程のは冗談ですからね。』
「大丈夫。分かってるよ。」
(…本気かどうかわからなかったけどな…。)
『驚いた顔も素敵でした。』
アルの顔がニヤケる。
「いいから早く言ってきて‼」
アルがペコリと頭を下げ、扉を締める。
(…まったく…。)
またもタメ息をつくマオ。
(…これで駄目だったらいよいよ脱走するか…)
そんな事を考えながらアルを待つマオであった…。




