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~戦が終わって~


…~ゴゴゴゴゴ~…


マメが風車に消えた直後、魔導船から変な音が辺りに響く。それと同時に不規則に、小刻みに船体が揺れ出す。

『な、何事です⁉』

小刻みに揺れ、足場が不安定な中、物に捕まりながら足を踏ん張り狼狽うろたえるカップコーン。揺れながら徐々に高度を下げはじめる魔導船。

「…マメ…。」

(…マメが作ってくれた好機…無駄にはしない‼)

甲板へと降り立つリリス。リリスの出現に狼狽えるカップコーン。風車付近から煙があがる魔導船。リリスが揺れる魔導船の甲板をゆっくりとカップコーンに近付く。

「…あんたのたくらみもここまでよ‼」

『企み?何度も言っているように企み等ではありません。全ては神の教え、お導きなのですよ。』

「…そう。なら、このあとどうなるか、神様はなんと教えてくれてるの?是非ともうかがいたいわ」

『………。』

黙りこむカップコーン。ゆっくりと歩みを進めるリリス。周囲の風景に目をやると、魔導船の高度もかなり下がったのがわかる。それにともない避難したはずの兵士達が集まって来ているのがわかる。おそらく、魔導船が煙をあげたのに気付き、好機と見て集まったのだろう。その中にアークの顔も見える。

(…良かった。アークさん無事だったんだ…。)

胸を撫で下ろすリリス。だが、まだ全てが終わったわけではない。

「…黙りこんでどうしたの?」

ジリジリと詰め寄りながら拳に力を溜めるリリス。リリスが進んだ分だけ後ろへと後退するカップコーン。

『……や…て…れ。』

カップコーンが何かを言ったようだが、魔導船の音がうるさくて聞こえない。

「…ん?何?」

『やめてくれ‼』

カップコーンが大声で、叫ぶように懇願こんがんする。その顔は、このあと起こるであろう事を想像し、恐怖で歪んでいる。

「あら…やめろと言われてやめる馬鹿が何処にいるのかしら?」

リリスがニヤリとわらう。

(…こいつのこの反応…どうやら魔導船の機能は完全に停止しているようね…。と、いうことは魔力障壁も今は無い。)

『お願いだ…魔族のちからで殴られたら…私のような老体は死んでしまう…』

「あら⁉それは良いことじゃない。…大好きな神様に会いに行けるんだから。」

『………。』

ジリジリと後退し、ついに船尾まで追い詰められるカップコーン。船尾から下を見下ろし、まだ高度がある事に恐怖する。

「もうあとがないわよ。」

『…くそっ‼』

後がないとみるや、飛び降りる素振りを見せるカップコーン。それを見て瞬時に間合いを詰め、カップコーンの腕を捕まえるリリス。

「捕まえた。」

『お願いだ…。』

一縷いちるの望みにかけ、懇願する。

「どうやら貴方は神じゃなかったみたいね。…どうせなら大好きな神様にでも祈りなさい。どうにかしてくれるかもよ?」

『‼‼』

次の瞬間、リリスの拳が唸りをあげ、カップコーンの顔面に直撃する。吹き飛び、船尾から墜落するカップコーン。

「…もう聞こえないと思うけど…神様によろしくね。」

墜落するカップコーンに吐き捨てるように言葉を投げかける。

(…終わった…マメ…あんたのおかげよ…ありがとう。)

心の中でマメに感謝し、その場を離れるリリス。

(…あとの事は下で待機しているアークさん達に任せましょ…。魔族の私がいても色々と面倒が起こりそうだしね…。)


リリスが魔導船から離れたあと、船は墜落し、下で遠巻きに見ていたアーク達の手によって乗組員の魔導士達は捕獲された。中には最後まで抵抗した魔導士もいたらしいが、それらは全てその場で処分された。コミナ王子はというと、リリスの指示通り、城に残っていた兵士達を指揮し、街の人達の安全を守った。この事により街の人達の心を掴み、亡き王の後継者はコミナ王子しかいない、とまで言われるまでになった。また、存命中の王の命令により戦場へとおもむいていた2人の兄、王子達は、突然現れた魔導船に恐れおののき、自分達だけで敵前逃亡、その後、騒ぎがおさまり、戻ってきた所をコミナ王子の手によって捕らえられ、国外追放の処分となった。国外追放の処分にした理由はおそらく、国の人々に肉親を手にかける非情の人、というように悪く思われたくはなかったのだろう。これによりコミナ王子は当初予定していた武力によるクーデターという血生臭い事による即位などではなく、円滑えんかつに、誰からも異を唱えられる事無く、王へと即位が出来た。


リリスはというと、あの場を離れたあと一先ひとまずは孤児院に戻った。院長に優しく出迎えられ、事の顛末てんまつを話し、良く頑張りましたね、と褒められた。それが照れ臭く、また、自分が受け入れられたような気がして嬉しかった。そして、マッカイ村の村長、父親が迎えに来るまで普段通り、孤児院の手伝いをしたり、コミナ王子の即位の演説を孤児院の皆で見に行ったりと、いくさが始まる前と同じ位に平穏に過ごした。

孤児院の手伝い等で数日が慌ただしく流れ、村長が迎えに来てマッカイ村へと戻ったある日の事。


~コンッコンッ‼~


誰かが玄関ドアをノックする音がする。来客のようだ。

「は~い‼」

返事をし、ドアを開けるとアーク夫妻が旅支度をして立っていた。

「あら、アークさん。こんにちは‼」

リリスが元気に挨拶をする。

『やぁ、リリスちゃん。こんにちは。村長はいるかい?』

「はい。今、呼んで来ますね。」

リリスがその場を離れ、村長を呼びに行く。

(…アークさん何の用事だろ?…あ、そうか。戦も終わったし、マオちゃんを迎えに行くのね…。)

村長にアークが来ていると伝え、2人で玄関へと向かう。

『やぁ、アーク。今日はどうしたんだい?』

『実は戦も終わった事なのでマオを迎えに行こうかと…。』

『おぉ‼そりゃ良い‼留守の間の事は任せなさい。』

『えぇ、お願いします。それとですね…。』

『ん?まだ何かあるのか?』

『えぇ、良かったらリリスちゃんも一緒に行かないかなと…』

『そうだな…うん‼良いんじゃないか?アーク達が一緒なら安心だし、色んな所を見て回るのは良いことだしな‼』

(…あ、そういえばマオちゃんに報告の手紙とか送ってないや…まぁ、この話の流れなら多分一緒に行くことになるだろうし…直接会って話せば良いか。)

『じゃあ、リリム。アーク達と一緒に行くのなら、急いで支度をしてきなさい。』

「はーい‼アークさん。少し待っててくださいね。」

リリスが旅支度をするために自室に戻る。それを確認し、急に村長が神妙な面持ちになる。

『なぁ、アーク。ちょっといいか?』

村長の声量を抑えた態度にアークも身構える。

『なんです?』

『…リリム……いや、魔族のリリスの事なんだが……。』

『…⁉村長、知ってるんですか⁉』

『‼しーっ‼声が大きい‼』

アークは驚きのあまり、少し声が大きくなる。

『あ…すいません。』

『…孤児院に迎えに行った時に院長先生に聞いてな…。』

『…そうなんですね…。』

『…数々の魔族と闘ってきたお前さんから見て、リリスはどうだ?』

『…どうって言われても…。』

返答に困るアーク。

『………少し意地悪な聞き方だったかな?……あの子は良い子か?』

村長がなんともいえない優しい笑顔で尋ねる。

『もちろん、良い子ですよ‼』

先程とは違い、即答するアーク。

『…そうか…なら良かった。』

『…この事はリリスちゃんは?知ってるんですか?村長が知っていることを…』

『…いや、多分知らないだろう。あの子から聞いてもないし、俺からも聞く気もないしな…。』

『…そうですか…では、もし、彼女から打ち明けられたらどうします?』

アークがさっきの仕返しとばかりに、少し意地悪な聞き方をする。

『もちろん受け入れるさ‼』

村長が笑顔で即答する。

『即答ですね…。』

『…娘だからな。親が信じてやらないでどうする?私は何があってもあの子の味方だ。もとより、私は色々な事情を抱えた孤児を引き取ったりしているからな。魔族だろうがなんだろうがそんな事は大した問題ではないよ。』

『…流石は村長ですね。』

『村長とかは関係ないさ…。あの子を私の娘として引き取る事になったときから全てを覚悟、受け入れるつもりだったからな。例え、神を敵にまわそうとも私だけは最後まで味方でいると…。』

『…例えがなんか凄いですね。』

アークが笑う。

『…ふふっ。まぁな。でもまぁ、お前さんも人の親、その気持ちはわかるだろ?』

『えぇ、良く分かります。』

家の奥からリリスの足音が聞こえてくる。

『お、リリムの支度が終わったようだな。』

「お待たせしました。」

リリスが笑顔で駆け寄ってくる。

『それじゃ、行こっか?』

「はい‼」

『リリム、道中、気を付けてな。アーク達を困らせるような事はするんじゃないぞ‼』

「はーい‼」

『アークも気を付けてな‼リリムをよろしく頼む。』

『分かりました。』

村長に見送られながら3人連れだって歩く。リリスが空を見上げると雲1つ無く、お出かけ日和だ。その時、数羽の白い鳩が空を横切る。

(…マメ…ありがとう。あんた、良いおとこだったね…。それと…マオちゃんの言う通り、平和の象徴だったね…。ありがとう。)


胸に押し寄せる、なんともいえない気持ちをこらえながらリリス達はマオが待つ、エルグランドへと向かった。






このお話でこの章は終わりとなります。如何いかがだったでしょうか?読んでくれた方が少しでも楽しめたのなら幸いです。次のお話から今度は主人公メインのお話、新しい章が始まります。お楽しみに。

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