~平和の象徴~
いつもより少し長いですがお楽しみください。
アーク達に指示を出し、覚悟を決めたリリスではあったが攻めあぐねいていた。
(…さて…あのクソ坊主と船を破壊しなきゃいけないんだけど…どうしましょ?)
魔導船から適度に距離をとり、回りを飛びながら観察する。
(…ふーん…なかなか良く出来てるわね…船を空に浮かばすなんて…感心するわ…)
注意深く観察し船とは違う所をいくつか発見する。
(…まず船についてるはずのマストがないわね…その代わりに船にはついていないはずの翼と船底には風車みたいなのがいくつかあるわね…それと主砲の他にもいくつか砲門があるのが見てとれる…。)
船の回りを周回しながら甲板にいるカップコーンを見てみる。俯き唇が動いているのが見てとれる。どうやらまだ独り言を呟いているようだ。
(…あらあら…本格的に壊れたのかしら?…でも、それならば…)
好機とみて、リリスがカップコーン目掛け、一筋の矢のように鋭く飛びかかる。
(…喰らえっ‼渾身の一撃‼)
…~ガキンッ‼~…
またしてもリリスの一撃は魔力障壁に邪魔をされ、カップコーンに届かない。
『…おや?まだいらしたのですか?』
カップコーンが今気づいたかのような不思議そうな顔でリリスを見つめる。
「…えぇ。今戻ったところよ。」
(…不意討ちのつもりでやったんだけど…ダメだったか…それに今のコイツの反応…完全に私に気づいてはいなかった…つまり、この《魔力障壁》はコイツの意思には関係なく常にあるということか…)
『…どうですか?そろそろ降参されては?』
「…あら、まだお楽しみは始まったばかりじゃない?」
『あれだけの物を見ておきながらそんな事を言うとは…やはり魔族とはなんと罪深く愚かな種族なのか…』
「私から見たら貴方のほうが罪深く、愚かに見えるけど?」
リリスがいつもの調子で挑発する。
『…やはり魔族は根絶やしにしないといけないようですね…。』
「貴方に出来るかしら?」
『神に出来ない事はありません。』
「なら、貴方はやっぱり神じゃないんじゃない?それどころかただの凡人だったりして…」
『では、見せてあげましょう。神に出来ない事はないと‼』
カップコーンが手をあげ合図を送る。
(…何?何をするつもり?)
思わず甲板から飛び立ち、辺りを見渡す。主砲に動きは見られない。
(…主砲にエネルギーが集まってる様子はないわね…。)
『…この魔導船の素晴らしい所は魔導砲だけではありませんよ‼』
どうやらカップコーンはリリスが主砲をチラ見したのに気付いてたらしい。続けてカップコーンが挙げていた手を下げ、合図を送る。
『…やれ。』
次の瞬間、先程目視で確認した砲門から一斉に光の粒が放たれ、辺り一面に雨のように光が降り注ぐ。光の粒は着弾すると同時に火柱をあげ、そのあとにはやはり小さな窪地が出来ている。主砲である魔導砲よりも一撃の威力はないが、その数の多さによって威力を補っているようだ。数々の光の粒の内の何発かがリリス目掛け飛んでくる。
「…くっ‼」
身体をよじらせ光の粒をかわすリリス。
『なかなか良い動きをしますね…。では、これならどうですか?』
カップコーンがまたも手をあげる。かと思えば今度はすぐさま手を下げる。それと同時に辺り一面に無差別に降り注いでいた光の粒が今度はリリス目掛け襲いかかる。
(…まずい‼こんなの避けきれない‼)
眼前に迫る光の弾幕を前に、リリスは覚悟を決め、身体の前で両腕を交差させ防御の体勢をとる。
…~ドドドドドッ‼~…
白煙をあげ、リリスが何発も被弾した音がする。
「キャァァァッ‼」
リリスの悲鳴が辺りに響き渡る。
『リリスちゃん‼』
リリスの指示を受け避難にあたっていたアークも、遠くで成り行きを見守っていたらしく、声が届くはずはないと知りながら思わず大声をあげる。
『…おや?』
やがて白煙が霧散し、何かを見つけるカップコーン。
『…フハ…フハハハハッ‼素晴らしい‼素晴らしいですよ‼』
称賛するカップコーンの視線の先にはリリスが空に浮かんでいる。それを遠くから見て、胸を撫で下ろすアーク。
『…流石は魔族です。人よりも頑丈ですね。』
「…ハァハァ…。」
(…まずい…こんなの何度も防げないわ…)
息も絶え絶えのリリス。
『…どうです?まだ続けますか?』
「…もちろん。まだまだ余裕よ。」
リリスが虚勢をはる。
『…そうですか…。では、もう1度…』
カップコーンが合図を送る。
(…まずい‼またあれが来る‼)
咄嗟にリリスがその場から高速で移動する。それを追うかのように光の粒がリリスを追いかける。それを避ける為また移動する。まるでイタチごっこだ。
『おのれ…虫のようにちょこまかと‼まぁ虫のような存在の魔族にはお似合いですね。』
(…まずい‼このままではいずれ被弾する…どうにかしないと…)
光の粒がしつこくリリスを追いかける。
『どうしました?早く私を倒さないとやられてしまいますよ?』
カップコーンがリリスを挑発する。
(…あのクソ坊主…言わせておけば…‼)
カップコーンの言葉が頭に来たのかリリスが身体を反転させ、魔導船の船体目掛け一直線に蹴りをいれる。
「喰らえぇぇ~‼」
…~ガキンッ‼~…
(…硬‼)
何か硬い物にぶつかったような音が響く。
『…先程貴女が甲板を殴ったのを見て、一応、念のため魔力障壁を船全体にまで拡げました。』
カップコーンがニヤリと嗤う。
(…そんな…どうしたら…)
その場に留まっていると標的になるのですぐさま離れ、船の回りを警戒しながら周回する。
(…ますます状況は悪くなったわね…どうしたら…)
またもカップコーンが合図を送り、光の粒とのイタチごっこが始まる。
(…このまま避け続ける事もおそらく無理だし…かといって…私の攻撃も通らないし…)
その時、カップコーンが手をあげ、攻撃がピタリと止まる。
(…攻撃が止まった…。いったい何をするつもり?)
『…逃げる虫を追いかけるのに飽きました。』
「あら、飽き性なのね。」
『なんとでも言いなさい。貴女1人、虫を1匹残した所で何か出来るわけでもないので本来のお勤めを果たすとしましょう。』
カップコーンが合図を送り、ゆっくりと魔導船が回頭する。動きが止まり、主砲の先を見ると、直線上に戦場がある。先程よりも戦場に近づいており、リリスが逃げ回る内にいつの間にか近づいていたようだ。
「まさか‼」
『そのまさかですよ‼』
魔導砲がエネルギーを溜め始める。
「やめなさい‼」
『やめろと言われてやめる馬鹿が何処にいますか‼それに私は神です‼何人たりとも神を止める事は出来ないのです‼』
次の瞬間、主砲から光が放たれ戦場に着弾する。
…~ズドーーン‼ズズズズズゥゥゥゥン‼~…
先程とは違い、距離が近いせいか、音とともに爆風が押し寄せる。
「キャァッ‼」
爆風に飛ばされないようにこらえるリリス。
『素晴らしい‼素晴らしい迫力です‼』
魔導砲の威力、迫力に感激するカップコーン。
「そ…そんな…。」
爆風が落ち着き、戦場を一望し、リリスが落胆する。着弾したであろう場所は深く抉られ窪地になっている。辺りには人の気配はなく、爆風や衝撃によって草木も無くなっているので非常に景色がさっぱりしている。
(…あそこには避難誘導のためにアークさん達がいたはず…それに大勢の兵士達も…それが…なんにもなくなっちゃった…)
『流石は神が造りし物。非常にさっぱりしましたね。やはり掃除はこうでなくては…。』
「………。」
『おや?黙りこんでどうしましたか?感激のあまり声も出ませんか?』
カップコーンが嬉しそうに喋る。
「…なにが…なにが掃除よ‼ふざけないで‼」
『ふざけてなどいませんよ。』
「…こんなに…大勢の…人達の命を理不尽に奪って‼」
『もとより神とは理不尽なものですよ。それに奪ったわけではありません。導いたまでです。』
「………。」
およそ話が通じる相手では無くなったカップコーンを前に、言葉を無くすリリス。おそらく、黙った理由は他にもいくつかあるとは思うが…。
(…アークさん…エルさん…いったいマオちゃんに…魔王様になんて言えば………ん?あれは?)
その時、リリスが遠くの森の木々の間を移動する影を見つける。誰かまではわからないが、おそらくアーク達の指示により避難した兵士達だろう。
(…良かった…助かった人達がいる…お願い‼アークさん達も無事でいて‼)
一縷の望みをかけ、何かに祈るリリス。
『おや?まだ残ってるのがいましたか…。いけませんね。掃除というのは隅から隅まできっちりしないと…。』
どうやらカップコーンも助かった人達に気づいたようだ。
(…まずい‼…気付かれた‼…また何かされる前にどうにかしないと‼…)
爆風が収まったとはいえ、魔導船の周辺には爆風、爆発により巻き上げられた砂や埃が漂い、着弾の衝撃で粉々となり空へと飛ばされた木の破片などが辺りに降り注ぐ。
(…私の命を…全てを力に変えれば…イケるか……な?……。)
カップコーンが手をあげ、合図を送る。
(…もう迷っている時間は無い‼…パパ…ママ…皆…帰れなくてごめんね…。)
決死の覚悟を決め、気合いを溜め始めるリリス。
「ハァァァッ‼」
(…仮に倒せなかったら……イヤ‼そんな弱気じゃダメ‼せっかく命を賭けるんだ‼必ず倒す‼)
傍から見てもわかる位にリリスに力が溜まっていく。
『…今更何をするつもりですか?どんな事をしても無駄ですよ‼』
「…それはどうかしら?」
魔導砲にも徐々に力が溜まっていく。
「私は…この一撃に全てを賭ける‼………ん?」
力が充分に溜まったリリスが何かに気づく。
(…今、船の下辺りに飛ばされた木の破片が船に吸い込まれていったような…?)
カップコーンに悟られないように少しだけ動き、船体の下、船底の部分を見る。船底には合計5つの風車のような物が取り付けられており、回転している。その内の、中央に位置している他のと比べて倍くらいはありそうな風車がどうやら吸い込んだようだ。
(…うーん…どういう構造かはわからないけど…あの1つだけ回りの空気?…を吸い込んで、回りの4つが吐き出して浮いているのかな?…)
試しに、爆風によって空へと舞い上がった手頃な木片を空中で手に取り、付近に投げ入れてみる。すると、木片はリリスの予想通り、吸い込まれていった。
(…今のでわかったけど…船底の部分には魔力障壁が働いて無い…おそらく…魔導船を浮かせる為に空気を吸い込んだり、吐き出したりするから邪魔なんだわ…無駄に逃げ回ったのが役にたったわ…)
時間が残り少ないまま、力を溜める振りをして考える。
(…あの風車から船の中に…若しくは壊したらこの船も墜落するかしら?…でも…)
風車は、羽根が目で見えないほどの速さで回転しており、とてもではないが中に侵入することは出来そうもない。
(…あんな速さで回転している鋼鉄の羽根に少しでも触れたら…考えただけで鳥肌がたつわ…)
『…さぁ、魔導砲に力が溜まりましたよ‼』
カップコーンが嬉しそうに喋る。
(…もう時間がない‼もともと命を賭けるつもりだったんだから行くっきゃない‼)
リリスは風車に飛び込もうと身構え、カップコーンは合図の為に手を振り下ろそうとした時だった。
『ポーゥッ‼』
…~バサバサバサッ~…
魔導砲の被害に遭わなかった森の木々から沢山の鳥が羽音をたて、飛び出す。
『な、なんだなんだ⁉』
予想もしなかった光景に取り乱すカップコーン。飛び出した鳥の内の1羽がリリスに近づいて来る。
『ポーッ‼』
「マメ⁉」
予想もしていないマメの出現にリリスが驚く。
「あんた今までなにしてたの⁉」
『ポポーッ‼』
マメの身体を見ると、所々、羽は抜け落ち、血が滲んでいる。どうやらマメはリリスの言った事を真に受けて一生懸命ボスになるために戦っていたらしい。そんなマメの姿を見て全てを察するリリス。
「…そう…。あんた私の言った事を真に受けて頑張ってたんだね。」
『ポーッ‼』
頷くマメ。
「それで…ボスにはなれたの?」
『ポーッ‼』
またも頷くマメ。辺りを見れば数え切れないほどの鳥達がいる。どうやら全てマメの配下らしい。
「強いのね…。強い男は好きよ…。」
マメの健気さに思わず胸をうたれるリリス。照れる素振りを見せるマメ。
『何をゴチャゴチャとやっているのです‼』
我にかえったカップコーンが怒鳴る。
『こんな邪魔くさい鳥など焼き鳥にしてくれる‼』
良いところで邪魔をされたのが、余程気に入らなかったのか、カップコーンが合図を送り、砲門から次々と光の粒が発射される。
「危ない‼マメ‼逃げて‼」
リリスの叫び声を聞き、鳥達が蜘蛛の子を散らしたように逃げる。だが、光の粒のほうが鳥達よりも速く、1羽、また1羽と撃墜されていく。
「あ…あぁ…。ひどい…」
目の前でおこる惨劇に、なすすべも無く、ただ言葉が漏れる。
『ふむ。数が多くて面倒ですね。やはりここは魔導砲で地上のゴミ共々お掃除ですかね…魔力も溜まっている事ですし…。』
当初の目的を思いだしたかのように呟くカップコーン。
(…もうこれ以上は…‼)
リリスが身構え、船底の風車に飛び込もうとした時だった。
『ポポーッ‼』
リリスの行く手を遮るようにマメが飛び出す。
「ちょっとマメ‼邪魔よ‼どきなさい‼」
マメを手で振り払おうとした、その時。
…~チュッ~…
マメの嘴がリリスの唇に触れる。どうやら鳩の求愛行動らしい。
「あんた、こんな時まで…」
『ポポーッ‼』
リリスの言葉を遮るようにマメが今までで1番大きい、雄叫びにも似た鳴き声をあげる。次の瞬間、逃げ回っていた鳥達が一直線に整列し、速度をあげ、船底へと向かう。
「あ、あんた…まさか…」
リリスの予想通り、鳥達の目的はどうやら船底の風車に突撃する事らしい。
「やめなさい‼」
リリスは叫んだ。だが、マメは聞こえていないかのように無視をし、片方の翼をあげ、まるでサヨナラをするかのように左右に振りそのまま鳥達の最後尾についた。
…~ドドドドドッ‼~…
マメ達が風車に突撃する音が響く。
『鳥ごときが何をしているのかわかりませんが…この魔導船を壊す事は何人たりとも出来ません‼』
どうやらカップコーンがいる甲板からは船底の様子がわからないらしい。
「マメーッ‼」
リリスの叫びを受けながら最後にマメが風車へと消えていく…。
いつもありがとうございます。少しでもお楽しみ頂けたでしょうか?今回本当はもう少し長かったのですが、いつもよりもかなり長いお話になってしまった為、前編と後編に分けました。まぁ、特に意味は無いんですけどね。短すぎてもアレですし長すぎても飽きるかなと…特にタイトルには明記はしていませんが後編はまた近日中に投稿する予定です。これからもよろしくお願いします。




