~神官カップコーン~前編
今回前編後編に分かれています。後編は近日中に投稿する予定です。少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです。
謁見の間をあとにし、足早に次の目的地を目指す一行。次なる目的地は王の居室。おそらく今の時間ならまだ夢の中のはずなのだが…。
『王子、確認です。』
『なんだ?』
アークが王子に尋ねる。
『とりあえずは話し合いの方向で良いんですよね?』
『あぁ…だが、おそらくは無理だろうな…あそこに隊長がいたということはこちらの動きは向こうに筒抜けだろう。もしかしたら反逆者として討ち取るために迎撃の準備をして待ち構えているかもしれん…。』
『…そうですね。』
『…すまんな。』
4人に嫌な空気が流れ、沈黙する。皆、それぞれ色々な事を考えているのだろう。
(…結局、これは王子によるクーデターということでいいのよね?成り行きでついて来ちゃったけど…。)
『…着いたぞ。』
一行の足がピタリと止まる。
『いつも通りならまだ父上は眠っているはずだ。だが先程も言ったように何があるかわからない。皆、準備はいいか?』
『…はい。』
返答を聞き、王子がドアノブに手をかけ、扉をゆっくりとあける。少し隙間が空き、そこから王子が中を覗き見る。
『‼なにっ⁉』
何が見えたのか分からないが王子がいきなり扉を全開にする。
『貴様‼何をしている‼』
王子の怒号が辺りに響きわたる。
『おや?…ようやく来ましたか…。』
全開にした扉から中が見える。中には錫杖らしき物を持った神官らしい服装の老人が立っており、もう片方の手は王様らしき人物の襟元を持っている。王様らしき人物は両膝を床につけ、顔は天井を見上げるように仰向けになり、横顔が見える。様子から見て王様らしき人物は寝ているわけではないのは一目瞭然だ。
『なかなか来ないので先に始めてしまいました。』
『カップコーン‼貴様‼…父に、王に何をした‼』
王子が激昂する。
『何って…王子…貴方の手間を省いてあげたのですよ。貴方もこうする予定だったのでしょ?…あ‼そうそう…王は私が責任をもって神の元へと御送りしましたので心配しないでください。』
『貴様~‼』
王子が益々、ヒートアップする。そんな王子を横目に神官は王の襟元を持っていた手を離した。王がその場にうつ伏せに倒れこむ。
『お初にお目にかかる方もいらっしゃるようなので…申し遅れました。私はカップコーン。この国の神官にして神の代弁者。以後、お見知りおきを…。』
カップコーンがペコリと頭を下げ、丁寧な挨拶をする。その行動が不気味さを醸し出す。
(…人を殺しておいて…この礼儀正しさ…不気味だわ…。)
『カップコーン‼貴様、何が狙いだ‼』
『狙い?そんな物はありません。』
『何⁉どういう事だ‼』
『どうもこうも…あえて言うならば…そうですねぇ…神の意志と言ったところでしょうか?』
『神の意志だと?…ならば、貴様は神がこの惨状を…戦争を起こせと言ったと言うのか?』
『そうです。言ったところで凡人のあなた方に理解が出来るかは分かりませんが…。』
カップコーンがやれやれといった顔をする。
(…神の意志ですって…そんなくだらない事で…皆の平穏を奪ったというの⁉)
リリスに今まで体験したことないような、例えようもない感情が沸き上がってくる。
『そんないるのかどうかも分からん、あるのかどうかも分からん物の為に貴様は兄や父達を利用したのか‼』
『利用した訳ではありません。私が神の意志をお伝えしたところ、皆様、理解して行動してくださったのです。』
『何を言うか‼現に貴様はその手で父を殺したではないか‼』
『あれは私がお手伝いをしたまでです。神の意志を伝えたところ神の元に行きたいと仰ったので…。』
「もういい‼…王子‼このクソ坊主をぶちのめせば良いのよね?」
怒りが頂点に達したのか、リリスが口調を荒げ、吐き捨てるように尋ねる。
『あ、あぁ。』
リリスの怒りを見てなのか、不意を突かれたからなのかは分からないが王子が気のない返事をする。
「よし‼さっさと済ませるわ。…聞いての通りよ。クソ坊主‼今からあんたを大好きな神の元に送ってあげるわ‼」
リリスが居丈高に挑発する。
『ほぅ…これはこれは…珍しい。貴女魔族ですか?』
カップコーンがリリスの身体を舐めまわすように見る。
「だったらなんなのよ‼」
『純粋に珍しいと思っただけですよ。本来、他の種族と相容れないはずの魔族が人間と…それも勇者と一緒に私の所に来たのが…これも神の思し召しなのでしょうね…』
「そうね…そしてあんたが死ぬのもね‼」
そう言い放つと、リリスが隊長の時と同じ姿に変身する。そして、次の瞬間、カップコーンに襲いかかる。
~…ブンッ‼…~
が、カップコーンは空気が流れるようにフワリと避ける。
『ホホッ…これは怖い…こんなの当たれば私みたいな老体はひとたまりもないですね。』
「ちょこまかと…‼」
余裕の表情で挑発するかのように飄々とよけて見せるカップコーン。さらに怒るリリス。
~…ブンッ‼ブンッ‼…~
怒りに任せたリリスの連打が空を斬る。
『そんな事では私を倒す事は出来ませんよ。』
「うるさいっ‼」
その時だった。
『リリスちゃん‼俺も手伝うよ‼』
リリスの連打が空振り、それを見かねたのかアークも参戦する。
『人間と魔族の共闘ですか…素晴らしい‼これなら私を倒せるかも知れませんね…。』
2人に対して1人になってもカップコーンの態度は変わらない。
(…コイツのこの余裕な態度…不気味だわ…)
リリスとアークの猛攻が始まる。アークが相手を牽制し、リリスが必殺を狙う。かと思えば、リリスが牽制し、アークが必殺を狙う。初めての共闘にしては非常に上手く連携している。だが…
『素晴らしい‼素晴らしいですよ‼』
そのどれもが未だに掠りもしない。
「フンッ‼あんたが余裕でいられるのも今のうちだけだわ‼」
(…コイツが避けきるのも時間の問題…何しろコイツはかなりの歳のはず…体力的にもそろそろキツイはず…)
リリスの予想通り、だんだんとカップコーンの動きが鈍る。
「段々と動きが鈍くなってるわよ‼あんたの命もあと僅かね‼」
リリスの態度が段々と高飛車になる。
『…そうですねぇ…貴女方なら良い実験台になれるかも知れませんね…。』
「…‼‼何を今さら…。負け惜しみ?」
(…まだ何か隠しているというの?まずい…急がないと…)
不安を感じつつ、アークに目配せをする。アークもそれに気付き呼応する。
『うぉぉぉ‼』
アークの目にも止まらぬ連撃が始まる。ニヤリと微笑みながら避けるカップコーンの隙を窺う。段々とアークに圧され壁際まで追い詰められていくカップコーン。
(…‼いまだ‼)
リリスの一撃必殺が唸りをあげる。
…~ドカンッ~…
何か巨大な物が勢いよくぶつかったような大きな音がする。
『…殺ったか⁉』
様子を見守っていた王子が口をだす。
…~ガラガラガラ~…
王の居室の壁が大きな音を立て崩れていく。そこから朝陽が室内に射し込む。いつの間にか夜が明けたようだ。




