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~謁見の間~

コミナ王子の案内で王宮への侵入を試みる3人。戦場の最前線の陣営から深夜に抜け出し、ここまでは何もなく上手くいっていた。

「…王子…この先は何があるんですか?何処に出るんですか?」

排水が垂れ流しのトンネルの中、アークが尋ねる。

『…この先は色んな所に繋がっているが…1番良いところは調理場だろうな。』

王子が小声で答えた。

「調理場…ですか?」

『あぁ…この時間だからおそらく誰もいないだろうし、それに1番侵入しやすいからな。』

「…なんでですか?」

『調理場からの排水を点検するためにここに来れるように作られているからだ。』

「なるほど…。」

『他の所は内部に入れなかったり、あとは入口、出口が狭すぎたりするからな…。』

「へぇ、よくそんな事を知ってますね。」

『まぁな、昔は…兄達とよく探検ゴッコをしたものだ…そのたびに父上にバレて、叱られたものだ…あの頃は楽しかった…それが今じゃ…』

昔を思いだし、急に黙りこむ王子。アークは気不味きまずくなったのかエルに話を振る。

「…エル、大丈夫か?」

『えぇ、でも…』

エルが何か言いたそうにしている。

「なんだ?どうした?」

『…早くお風呂に入りたいです。』

エルの一言でその場の空気が和む。

『ハハハ、そうですね。私も早くお風呂に入りたいです。』

「…そうだな。これが終わったら先ずはお風呂だな。」

王子は笑い、アークは微笑む。それを見て、エルもフフフと微笑む。エルの計算なのか天然なのかはわからないが、2人とも先程までの緊張がほどけたようだ。

『…さて、もう少しで王宮の中だ。皆、準備はいいか?』

王子がおそらく調理場へと繋がっている梯子はしごの前で確認する。

「えぇ。」

『はい。』

『…この先は何があるか私にもわからない。調理場にでたら速やかに王の寝室に向かうぞ‼』

王子が辺りをうかがいながら、そっと、少しだけ排水講の蓋を開ける。キョロキョロと目だけを動かし、辺りを窺う。

『…よし、大丈夫だ。』

蓋を全開にし、素早く調理場の中に入る。続けて2人も素早く中に入る。2人が中に入ったのを確認し、そっと蓋を閉じる。

『…室内は暗いな…』

「…えぇ、でも段々と目が慣れてきました。」

『…いけそうか?』

「なんとか…。」

『では、行くとしよう。多分廊下には所々ところどころ松明があると思う。途中、それを頂こう。』

王子を先頭にして調理場をでる。辺りを警戒しながら、早足で駆けて行く。

「ところで王子…。寝室は何処にあるんですか?」

早足で移動しながらアークが尋ねる。

『…アークも何回か入った事があると思うが謁見えっけんの間の奥だ。そこが王族のプライベート空間になっている。』

「へぇ、あの扉の奥が…」

『そうだ…。そこの一室が王の寝室になっている。』

早足で駆けて、謁見の間の前までたどり着く。

『扉を開ければ、謁見の間。その先に王の寝室がある。2人供、準備はいいか?』

王子が再度、確認する。

「えぇ、私達は大丈夫ですが…王子は大丈夫ですか?」

アークが聞き返す。

『私は大丈夫だ。』

「いえ…戦闘の準備とかではなく…」

『…話し合いで済むのならそれが1番良かったのだがな…事態はもうそんな事を言っている暇がないほどなのだ…それもこれも全て覚悟の上、私は大丈夫だ。』

「…わかりました。」

『では、行こう。』

王子が謁見の間の扉を開ける。昼間とは違い、護衛の兵士達もいなければ王族もいない。辺りはしんと静まりかえっている。

『…ようこそ、我が城へ…。』

3人は驚き、声がしたほうを見る。誰もいないはずの玉座に誰かが座っているのが見える。

『…諸君が来るのを待っていた…。』

王子が松明の明かりを玉座の方に向ける。

『き、貴様は‼』

薄暗い中浮かび上がった顔には見覚えがある。王族の護衛を司る親衛隊長だ。

『…なかなか来るのが遅いから待ちくたびれていたところだ…』

『なぜだ?なぜ貴様がそこにいる‼』

王子が声を荒げ、問いただす。

『なぜ?城のあるじがここにいることに何の疑問があるのかね?』

『貴様が城の主だと?ふざけるなっ‼』

王子がさらに激昂する。

『まぁ正確には今夜からだがな…それもこれも、全ては運命。神の思し召し(おぼしめし)なのだよ。』

『どういう事だ‼』

『…どうもこうも…そのままの意味だが?今夜、貴様をここで片付け、老いぼれおうもあの《御方》が片付ける。そして戦場にいる貴様の兄達も片付ける。そうなれば王族もいなくなり私がこの城の主、王となるのだよ。』

『そんな事はさせぬ‼許さん‼』

『…これはおかしな事を言う…。貴様とて王を排除し、この城の主になろうとしたではないか…。お前と私、何が違うと言うのだ?』

『…ぐ…。』

図星を突かれ、黙りこむ王子。

『…まぁいい。それよりもアーク。お前はどうする?お前さえよければこちら側に来い。』

「…いきなり何を…断る‼」

『…フハハハ…。お前ならそう言うと思っていたよ。なぁに、お前の勇者としての人望が惜しくてな。少しからかってみたくなっただけだ。』

隊長が高笑いする。その様子からはもうこの城の主になったつもりのようだ。

「…隊長。貴方はまるでもう、この城の主にでもなったかのように振る舞っていますが…果たして我等を倒すことが出来ますか?」

アークがニヤリと笑う。

『愚問だな。王子はもとより貴様も私の相手にはならん。』

「…貴方より剣を教わり、貴方を越え、私は勇者に成りました。その私が相手にならないと?」

『そうだ…お前が勇者になってから何年経った思っているのだ?そしてお前が一線を退いてから何年経ったと?私はその間も第一線で活躍し、おのれを日々、高め続けてきた。その私が未だにお前に劣るとでも思っているのか?』

「………。」

アークから余裕の表情が消える。

『それに私には神の加護がある。負ける道理など無いのだよ‼』

隊長が玉座から立ちあがり、剣を構える。アーク、王子、それにエルも身構える。

『神の加護だと⁉』

『そうだ…。あの御方、カップコーン様が神より天啓をたまわったからな。こうなるのは運命だと…。だからこそ私には神の加護がある‼負ける道理など微塵もない‼』

『やはり、貴様と神官は繋がっていたのだな…。今回の侵略戦争も貴様ら2人が裏でくわだてていたのだな…。』

王子の疑念が確信へとかわる。

『…やはり、凡人には理解できんか…。全ては運命、企てなどでは無いのだよ。』

隊長が身体を少し低くし、足にグッと力をこめる。

『では、そろそろ始めようか…少しは楽しませてくれよ‼』


~ガキンッ~


隊長とアーク、互いの剣が交差する。




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