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~誕生~

ここは人間界の片田舎。その田舎の片隅にひっそりとある一軒家。ここで今まさに新しい命が産まれようとしていた。その一軒家の一室の前で今か、今かと右往左往する1人の男がいた。


「オギャー‼オギャー‼」


『産まれた…産まれましたよ‼』

男がその声を聞いて待ってました、と言わんばかりに部屋の中に入る。

『…おぉ、なんと元気な…エル、よく頑張ったな‼』

『はい…頑張りました。』

『それにしても…なんてかわいいんだ…』

『旦那様、どうぞ抱いてあげてください。』

産婆さんから赤ん坊を手渡され、戸惑いながらもぎこちない手つきで抱っこする。

『あなた、早速名前をつけてあげてください。』

『…あぁ、もう名前は考えてある。今日からお前はマオだ‼』

(…まだボヤけてよく見えないが…儂はどうやら無事に転生できたようだな…)

『とても素敵な名前ですね。』

『この子はきっとお母さんに似て美人になるぞ‼』

『まぁ、あなたったら。』

『ハハハハハ‼』

(…え、儂、女の子なの?)


こうして元魔王、マオはすくすくと育ち、半月はんつきほどたったときあることに気付く。

(…徐々にではあるが…段々と視界がはっきり見えるようになってきた…しかし、ただ寝ているだけというのも暇なものだな…言葉も話せないし…)

なにやらグズついてるような素振りのマオに気付き、父親が寄ってくる。

『マオちゃーん、どうちたんでちゅか~?』

(…それにしてもこの父親…かなりの親バカだな…)

父親が顔を近づけ、あやそうとしたときだった。

(…この父親どこかで見た気が…あっ‼)


(こ、こいつ…儂を倒した勇者だ‼)

あまりの出来事に驚愕し、泣きわめくマオ。その声を聞いて母親も飛んで来る。

『マオちゃんどうしたの?お腹が減ったのかな?』

マオを抱き寄せる母親。

(…ということはこの母親は…やっぱり勇者と一緒にいたエルフだ‼)

泣き止むマオ。

『やっぱりマオはエルの事が好きなんだなぁ。パパさみしい。』

『そんな事ないよね~。マオちゃんはパパの事も好きだよね~。』

(…なんて事だ…まさか両親が勇者パーティーとは…あのクソ神が‼)

(…でも考えようによってはかなりいいのかも知れん…なんせ勇者とその仲間のエルフとの間の子だからな…それに加えて神の言うことが本当ならば元々の儂の能力も受け継いでるはずだし…)

そんな考えを他所に、両親はマオに沢山の愛情を注ぎ、マオもそれを一身に受けすくすくと成長した。


~10数年後~


ここは人間界の片田舎、中央ブリギッド領内にあるマッカイ村。

その村の片隅にある一軒家のウッドデッキにあるベンチに腰掛け、お茶を飲みながら新聞を読みふける1人の少女がいる。

「今日も平和だ…私の求める平和とはこういうものなのだ…」

マオはあれからすくすくと成長し、誰もが振り向き2度見するような美少女へと変貌していた。

『マオーっ‼マオー‼』

母親のエルが呼んでいる。

「はーい‼」

『マオ、いつものお使いお願いしてもいい?このお弁当を畑にいるパパに届けてくれない?』

「はーい‼行ってきまーす。」

『よろしくね。マオの分もあるからよかったらパパと一緒に食べてあげて。』

「はーい‼」

マオはお弁当を受けとり、早速父親がいる畑に向かった。

(この世界にせいをうけてそこそこたつが…この生活にも慣れたな…)

日課になっているこのお使い。今日も何事も無く畑にたどり着く。

(早く帰って新聞の続きを読まないと…田舎過ぎて世界の情勢を知る唯一の手段だからな…)

「パパ、お弁当持って来たよ‼」

『おぉ、マオ、いつもありがとう。』

父親にお弁当を渡す。

『それじゃ、お昼にするか‼』

「うん。」

地面に座り込み、お弁当を開ける。

「いただきまーす‼」

(…それにしても平和だな。新聞も毎日読んでいるが特にこれといって無いしな…まぁ人間達の情報しか入って来ないからな…魔族や他の種族達はどうなのかな…?)

そんな事を考えていると遠くの方で呼ぶ声がする。

『おぉーい‼アーク‼』

声がする方を見ると、男がこちらに向かって来るのが見える。どうやら村長のイーサーのようだ。

『どうしたんです?』

『ちょっとお前に相談があってな…』

(…なんかまずい事でもあったのかな?)

お弁当を食べながら話を聞く。

『実は村おこしをしようと思ってな…』

『おぉ‼いいじゃないですか‼でも、なんで突然?』

『…まだここだけの話しなんだが…国から増税のお触れが出てな…儂が思うに、もしかしたら近々戦争が起こるかも知れん…』

『え‼本当ですか⁉』

(…いったいどことなんだ?)

『戦争…ですか…』

『あぁ、まぁ儂の予想だけどな…おそらく税を巻き上げてそれを準備に使うんだと思う…何事もなければよいが…』

『それで村おこしですか…』

『見ての通りこの村は畑以外なーんにも無いからな‼少しでも人を呼んでお金を落としていってもらわないと…温泉でもあったらよかったんだが…。』

『それで具体的にはなにをするんですか?』

『それなんだがな…美少女コンテストを開催しようと思う。』

『美少女コンテスト‼』

(…なんで美少女コンテストなんだよ‼)

『なんで美少女コンテストなんですか?』

『それはあんまり元手がかからないからだな‼会場用意するぐらいでいいんじゃないか?それに土地は腐るほどあるし、出場者を色んな所から集めればそこそこ盛り上がるだろ?』

(…会場用意するだけで済むわけないだろ…)

『絶対それだけで済まないと思うんですけど…。』

『あとはうちの村はかわいい子が多いからな…』

『うちのマオとかですか?』

アークがマオの頭をポンポン撫でる。

(…まぁ儂は可愛いからな…)

『マオちゃんもそうなんだがうちのリリムも可愛いぞ‼』

『リリムちゃんなんていましたっけ?』

『そうか…アークはまだ見た事ないか…この間うちで引き取ったんだよ。』

聞けばこの村長、戦争孤児や身寄りのない子供達を養子にしたりしているようだ。

『すごいですね…本当に村長には頭があがらないです。』

『それと今回、コンテストを開催する理由は里親探しも兼ねているんだよ。子供たちの事を少しでも知ってもらえれば孤児達も減るんじゃないかと思ってな…。』

『…そうですね。』

(…やっぱりおさたるもの色々考えているんだな。)

『それじゃ協力してくれるか?元勇者のお前さんが手伝ってくれれば心強い。』

『それはもう喜んで‼』

「マオも手伝うよ‼」

『おぉ、マオちゃんも手伝ってくれるのか‼ありがとう。』

村長がマオの頭を撫でる。

『それにしてもアークは幸せだな。マオちゃんみたいな可愛い子と綺麗な奥さんがいて。』

『そんな事ないですよ…イーサーさんこそ可愛い子供たちと綺麗な奥さんがいるじゃないですか。』

『うちは確かに子供たちは皆可愛いが…嫁がな…わがままで…』

『そうなんですか?』

『あぁ、この間も一緒に出かける用事があったんだが…俺は少し用事があってあとからいく事になって先に嫁さん行かせてたんだ…そしたら俺が目的地に着いたら嫁さんが忘れ物したから取りに戻ってなんて言ってさ…結局1人で取りに戻ったんだよ…』

『大変でしたね…。ちなみに何を忘れたんです?』

『なんか腕輪らしい…』

『………』

『まぁ、嫁さんの事が好きで一緒にいるからいいんだけどな…。』

『結局、愚痴じゃなくてノロケですか‼』

『ハハハ‼まぁな‼うちのプリンはわがままだけど可愛い嫁だよ‼』

(…嫁さんプリンていうのか…それにしても可愛いければわがままでも許されるのか…)

『それじゃ、村おこしの件、よろしくな‼』

『はい。』

村長が去っていく。

『…さて、仕事するか。マオはどうする?』

「パパを手伝うよ。」

『いや、そうじゃなくてコンテスト。』

「うーん。」

(…出ても出なくてもどちらでもいいんだが…それよりも本当に戦争がおころうとしているのか?)

『まぁ、マオの好きなようにするといいよ。マオなら出場したら1位になると思うし。』

アークが微笑みながら頭を撫でる。

(…出場すれば少しは情報収集できるか?他の村からも出場者を募るらしいし…)

「それじゃ私、出場するよ。」

『じゃあパパはマオが1位になれるように応援するね。』

(…コンテストか…中身がオッサンだしな…まぁほどほどに頑張るか…情報が集まればいいし…)

「帰ったらママにも言わないとね。」

このあとは2人仲良く作業をし、家路に着いた。


~人物紹介~

マオ~ 主人公、魔王の生まれ変わり。エルフと人間のハーフでとにかく可愛い。でも中身はオッサン魔王。

アーク~ 魔王を倒した勇者。マオの父親であり、エルの旦那。マオにデレデレで甘やかしてはよくエルに怒られてる。

エル~ 魔王を倒した勇者パーティーの一員で回復役。魔王を倒したあとは勇者と結婚したらしくマオの母親に。良妻賢母。

イーサー~ マッカイ村の村長。お嫁さんであるプリンのわがままに振り回されている。イーサー曰く可愛いから許せるらしい。名前の由来は分かる人には分かる。

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