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~出発~

まだ新章の冒頭部分です。

戦の準備を終え、家を出るアーク夫妻。

『しばらく帰ってこれないけど…戸締まりは大丈夫?』

アークがエルに尋ねる。

『ええ、ちゃんと確認したわ。』

『俺も確認したから大丈夫かな?それじゃ行こうか。』

『出発する前に村長さんに挨拶しに行きましょ。』

『そうだね…しばらく留守になるから…』

村長の家に向かう2人。

『それにしても2人でまた戦闘せんとうの格好で旅に出ることになるとはな…』

アークがつぶやく。

『そうですね…』

『今度は魔族じゃなく、同じ人間相手だけどね…』

『………。』

『………。』

2人とも黙る。どうやらお互い想うことがあるようだ。

『…まぁ、なるべく早く終わらせて二人とも、無事でマオを迎えに行こうか。』

『はい。』

喋りながら歩き続け、やがて村長の家のまでたどり着く。なにやら騒がしい。

『こんにちわ~、村長~?』

アークが元気よく挨拶をする。

『おぉ、アーク‼それにエルさんも…今日はなんの用事だい?』

『実はしばらく留守にするので…』

と、アークが言うと、村長は夫妻の格好を見て全てをさっしたらしく。

『あぁ、そういう事か…』

と、言った。

『はい…。』

アークが苦笑いしながら答える。

『お前さんも大変だな…。』

村長は愛想笑いで答える。

『そういう訳なので留守中の事はよろしくお願いします。』

アークがペコリと頭を下げる。アークに合わせてエルもペコリと下げる。

『あい、わかった。お前さん達が帰って来るまで、村長として責任をもって管理する。だからアーク達も皆で無事に帰ってこいよ。』

『はい‼』

アークが元気よく返事をする。村長がニコリと笑顔で答える。

『ところで…』

アークが話をきりだす。

『なにやらにぎやかですけど…』

『そうなんだよ‼実はウチのリリムも今から疎開するんだよ‼』

『そうなんですね。それでどちらまで?』

『コントラだよ。元々いた施設の方に一時的に避難だな。なにもないこんな田舎より、いくらかはマシかと思ってな…アーク達はどこまで?』

『僕たちもコントラまで…。』

その言葉を聞いたとたん、村長の目の色がかわる。

『そりゃあいい‼もし良かったらコントラまでリリムを一緒に連れて行ってくれないか?』

『それは構わないですけど…』

『本当か⁉』

村長が玄関を開け、声をかける。

『おーい‼リリム‼もう支度は終わったかい?』

家の中からドタバタとした音が聴こえる。

「あと少し~‼」

『終わったら外においで。アーク達がコントラまで送っていってくれるそうだから‼』

「は~い‼」

村長が玄関を閉める。

『支度がもう少しかかるそうだ。すまないが少しだけ待っていてくれ。』

村長が申し訳なさそうな顔をする。

『大丈夫ですよ。』

アークが笑顔で答える。

『それはそうと…今回のいくさが終わったらなにかやりたいと思うんだが…なにかあるかい?』

唐突とうとつに村長がたずねる。

『なにかと言いますと…?』

『いやぁ…このあいだ開催したコンテストがなかなか好評だったからな…こんな田舎に人が沢山来るなんて初めてだったしな…』

『はぁ…?』

アークが気の抜けた返事をする。

『そこで考えたんだが…つねに沢山の人じゃ無くても良い。なにか人が少しでも集まるような事をしてみたくてな…』

『つまり…なにか観光名所になるような事、という事ですか?』

『そうだ。そうすれば村の皆も今より少しはうるおうだろ?』

『それはまぁ…』

『なにかないかい?』

『そんな…急に言われても…』

少し考える。

『そうですね…ここは景色も良いですし…と言いますがほぼ、回りは山しかないですからねぇ…温泉…湯治場とうじばを目指したらどうですか?』

『温泉か…そうだな…いくさで傷ついた身体からだを癒すのにもいいかもしれん…』

『まぁ…それにかぎらず、ここは静かなところですからね。療養りょうようするにはもってこいでしょう。』

アークが笑顔で答える。

『そうだな…よし‼いや、ありがとう。参考になったよ。』

『どういたしまして。』

『どれ…もういい加減、支度も終わってるだろう。』

村長が玄関を開ける。

『おーい‼支度は終わったかい?』

ちょっとしたがあき、返事が聞こえる。

「今行く~‼」

『やれやれ…』

村長がため息をつく。

『もう来るから…すまんな。』

『いえいえ。』

玄関がガチャリ、と開く。

「大変お待たせしました。」

中からリリスが出てきた。

『支度は完璧かい?』

村長が尋ねる。

「大丈夫よ。」

『よし‼それじゃあアーク、よろしく頼むな‼』

『はい‼』

アークと村長、お互いに手を取り合い、ガッチリと握手をする。

『それじゃあ、リリムちゃん。コントラまで一緒に行こうか。』

「はい。よろしくお願いします。」

リリスがペコリと頭を下げる。

『では…村長…』

アークが最後に挨拶をしようとした瞬間、リリスを抱き締める村長。

『リリム…必ず…必ず迎えに行くからな‼』

「ちょっと…パパ…恥ずかしいよ…。」

まるで今生こんじょうの別れ際かのような抱擁ほうようだ。

『では…村長…これで…』

『お…おぉ…』

名残惜なごりおしそうにリリスを離す。

『じゃあリリムちゃん。出発しようか。』

「はい。よろしくお願いします。パパ…元気でね。終わったら迎えに来てね。」

『おぉ…必ず行くとも‼リリムも元気でな‼』

少しだけ目を潤ませる村長。それを胸が締めつけられるような気持ちで受け止める3人。歩きだし、まだ村長が見えるであろう所で振り返るリリム。村長がポツンと立っているのがまだ見える。それを見て、先程よりも強く胸を締めつけられる感じを覚える。

(…この気持ちはなんなの…こんなの今まで感じた事がない…)

初めての感情に戸惑とまどいつつ、3人はコントラを目指す。

(…これで多少は自由に動けるわ…それにしても…人間観察か…手始めにこの2人を観察するか…なかなか勇者を観察する機会なんてないしね…それに陰ながら見守れって言われてるしね…)

多少のわずらわしさを覚えつつ、リリスは歩く。

(…あ‼どこかで白い鳩を見つけないと…)




更新が遅く、申し訳ないかぎりです。少しでも楽しんでいただけたなら嬉しいです。

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