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~エルグランドからの迎え~

リリスと今後の方向性の話し合いから数日が経ち、コンテストの片付けも終わり、いつもと変わらない日常が戻ってきた。

(エルがいうにはそろそろ迎えがくる頃だが…)

目的も決まり、やらなければならないことが山ほどあるマオにとっては何とも言い難い、もどかしい時間となっていた。

(疎開の準備もあらかた終わってしまったし…毎日暇だな…早く自由に動けるようになりたい。)

お気に入りの場所で新聞を読みながら暇を潰していると、なにやら回りが騒がしい。

(…うるさいな…まさか…ついに迎えが来たのか?)

家を出て、騒がしい方に向かうと、そこには貴族でも乗っていそうな立派な馬車があり、それを守るように前後左右に騎士が立っていた。

(…どごぞの御大尽おだいじんでも来たのか?…こんな田舎に…?)

人混みの中をゆっくりと進む馬車。進行方向にはマオの家がある。

(…儂の家の方に進んでいるが…まさかな…)

ゆっくり、ゆっくりと進み、やがて馬車がマオの家の前に止まる。

(…まさかだった…)

人混みに紛れ、様子を伺っていると馬車から1人、エルフの女性らしき人が降りてきた。

(…エルグランドからの迎えに間違いなさそうだな…それにしてもこんな豪華な馬車とは…エルの実家は貴族なのか?)

女性が玄関前に立ち、声をかけると、中からエルが出てきて応対する。女性のエルへの対応、挨拶などを見る限り、やはりエルの方が立場的に上らしい印象を受ける。エルが辺りを誰かを探すような素振そぶりでキョロキョロと見回す。

『あっ‼いたいた‼マオ、ちょっとこっちにいらっしゃい。』

エルに手招きされ、人混みの中から2人の前に立つ。

『この子がうちのマオよ。』

『おぉ…この子が…エル様に良く似ていらっしゃる。』

女性が感嘆の声をあげる。

『マオ、ご挨拶は?』

エルに促され、挨拶をする。

「はじめまして‼マオです。」

(…何事も第一印象が大事だからな…とびきりの笑顔を見せてやる。)

マオの営業スマイルを見て、女性がまたもや感嘆の声をあげる。

『おぉ…笑った顔もエル様によく似て……うぅ…。』

女性が感極まって嗚咽おえつを漏らす。その様子を見て、エルとマオはドン引きする。

(…えぇ…なんかこの人ちょっと怖いんですけど…。)

2人の様子を見て、女性が我に帰る。

『…失礼しました。わたくし、エルグランドにおきまして侍女長を勤めさせて頂いております、アル、と申します。マオ様、何かございましたら私にお申し付けください。』

(…侍女長‼…そんな人が迎えに来たの⁉…エルはいったい何者なの?)

マオが驚いた顔でエルを見つめる。エルは少し気まずそうな顔をしている。そんな2人を見て、アルがエルを問い詰める。

『…あの…エル様?もしかして…マオ様にご実家の事をお話になったことはございますか?』

『………ない。』

アルが驚く。

『…っ‼なぜですか⁉』

『なぜって……お父様とはなんかギクシャクしてたし…なんとなく…。』

アルがタメ息をつく。

『…まぁ、良い機会です。マオ様にご実家の事をお話ししてください。』

今度はエルがタメ息をつく。

『…しょうがないわね。マオ、驚かないで聞いてね。』

「うん。」

(…いったいなんだ?まさかエルは王族か?)

『…実はね…ママはエルグランドのお姫様なの。』

(…まさかのお姫様だった。)

マオが驚いた顔でアルにたずねる。

「…本当に?」

『本当です。しかも王位継承権第一位のお姫様です。さらに言うならば王にとっては目に入れても痛く無いほどの、大事な大事な1人娘でございます。』

今度はエルの顔を見る。

『フフフ…マオちゃん驚いた?』

エルが無邪気に微笑む。

「…うん。驚いた。」

(…しかし、そんな箱入り娘がよくアークと結婚したな。…まぁ、王にとっては大事な1人娘だから猛反対されて駆け落ちしたのか…)

「…ママはおじいちゃんにとって大事な箱入り娘だったんだね。だからおじいちゃんは怒ってるの?」

エルが少し悲しそうな顔をする。

『たぶんね…』

「そっかぁ…」

マオも少し残念そうな顔をする。その様子を見て、エルがフォローする。

『でも…今回の事で仲直りできるかも知れないし…こうしてマオを受け入れてくれるんだから、きっと大丈夫よ。』

(…そうだな…日頃、アークとエルには世話になっているしな…儂も一肌脱ぐか…)

「そうだね‼マオに任せといて‼ママとパパと仲直りするようにおじいちゃんに言うよ。」

マオが胸を張る。

『フフフ…それじゃあ、マオにお願いしようかな?』

「任せといて‼」

マオとエルの様子を見て、アルが話をきりだす。

『お話しがまとまったようなので…そろそろエルグランドにむかいましょう。』

『そうね…あんまり長居していると別れがつらいものね…マオ、すぐに迎えに行くからいい子にしててね。』

「うん‼」

(…すぐに脱走してやるがな‼)

『アルもマオの事をよろしく頼むわね。』

『はい‼この命にかえてもお守りします。それと、この際なので立派な淑女しゅくじょにしてみせます‼』

今度はアルが胸を張る。

『それはいいから…』

エルが苦笑いする。

『それではマオ様、準備はいいですか?』

「うん。」

『では、参りましょう。』

「じゃあ、ママ行ってくるね‼パパの事をよろしくね‼早く迎えに来てね‼」

『わかったわ。』

こうしてマオは沢山の人に見送られながらエルグランドへと旅立った。旅立つ際、沢山の人の中にリリスの姿を見つけた。羨ましそうにマオを見送っていたのが印象的だった。

(…リリスのやつ…羨ましそうにこっちを見てたな…なんかお土産でも買ってやるか…)

これから何日もかけて馬車に揺られエルグランドを目指す。途中、魔界へと向かうチャンスは沢山あるはず。そんな事を思っていると、馬車の揺れが案外心地よく、いつの間にかしばしの眠りにつくマオであった。

(…早く魔界に行かないと………。)


一方その頃魔界では…。


『ええぃ‼まだ、アムドの奴は見つからぬのか‼』

新魔王となったソードナーが玉座の間にて、いきり立ち、怒鳴り散らしていた。

『申し訳ございませぬ。草の根を分けるように探してはいるのですが…未だ、足取りはつかめませぬ。』

『あの糞野郎を見つけて殺さぬ限りは安心して人間達のところに攻める事が出来ぬではないか‼』

『おっしゃる通りでございます。必ずや見つけ、八つ裂きにしますのでもう少々お待ちくださいませ。』

部下が平身低頭、誠心誠意をもって謝罪する。

『…先にお前を八つ裂きにしても良いのだぞ?』

『………。』

ソードナーの脅しに対して部下は恐れおののき、声もでない様子ようすだ。

『…まぁよい。皆のものよいか‼一刻も早くアムドを見つけ出し、殺すのだ‼』

『ハッ‼』

部下たちが威勢のよい返事をし、蜘蛛の子を散らすように散会さんかいする。

『…まったく…使えない奴らばかりで参る…。』

玉座にドカッと座りこむ。

『…しかし、アムドの野郎はいったい何処に隠れているのだ…?』

アムドが潜伏していそうなところを考え込む。

『…これだけ広範囲を探してもいないとなると魔界にはもういないのか?……わからん。』

そのとき1つの考えが脳裏をよぎる。

『案外近くにいるのかもな……まぁ、それはないか。』


様々さまざまなもの達の思惑をよそに、物語は進む。



~人物紹介~


アル~ エルグランドで侍女長をしているエルフ。エルに対して主従以上の気持ちを持っている様子。実力はまだ未知数。

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