~今後の話2~
~日常回です~
昨晩のアーク一家の家族会議から一夜明け、今日も朝から片付けに精を出す。
(…やっぱり目標というか目的が定まると気持ち的に違うな…疎開も乗り気じゃなかったが…今は早く迎えに来て欲しいくらいだ。そして迎えのやつらの目を盗んで魔界に向かうのだ‼)
などと考えながらゴキゲンで鼻歌まじりに片付けをしていると、時折、誰かからの視線を感じる。
(…はやく迎えが来ないかな~……アッ‼)
視線に気付き、そちらに目をやると、物陰からジーっとこちらを見つめているリリスに気づく。
(…やばい…すっかりリリスの事を忘れてた…アイツもなんか話があるって言ってたな…)
これでリリスの用件を忘れるのは2度目だ。
(…あの顔怒ってるよな…うん、間違いない。怒ってる。素直に忘れてたっていうか?…う~ん…火に油を注ぐようなもんだな…どうしよう…)
リリスもマオが視線に気づいた事をわかっているはずなのになかなか近づいて来ない。お互い見つめあったまま膠着状態が続く。
(…仕方ない、悪いのは儂だから素直に謝罪するか…怒られても仕方ない。転生前は怒られたりしたことなかったのになぁ…。)
リリスに近づく。
「…リリムちゃんおはよう。」
『………おはようございます。』
声でわかるように明らかに不機嫌だ。
「え~と…昨日はごめんね。ちょっと忘れ……‼…ママに急用を頼まれちゃって…。」
(あっぶね…テンパって本当の事を言うところだった…)
だが、リリスは聞き逃さなかったようだ。
『……忘れてたんですか?』
「そ、そんな事ないよ‼あるわけないじゃない‼」
マオがしどろもどろになる様子を見て、リリスは確信したようだ。
『…忘れてたんですね?』
(…仕方ない…観念するか。)
「…はい。忘れてました。」
『…これで2度目ですよ?』
リリスがマオに追い打ちをかける。
「…はい。ごめんなさい。」
(…魔王やってた時もこんなに追い詰められた気持ちになった事はないぞ…)
『……ふ~ん……まぁ、いいでしょう。』
(…許してくれたのか?)
『今後の事で相談があります。今、よろしいですか?』
「今、片付けの最中なのでよろしくないです‼」
(…緊張のあまり言葉がおかしくなってしまった。)
『…では、のちほど手が空きましたら少し時間をいただきます。よろしいですね?』
リリスがニコリと不気味に微笑む。
「…はい。」
『では、のちほど…。』
(…ふ~、終わったか…)
リリスが去り際にまたもや耳打ちをしていく。
『…3度目はないですよ。』
マオに特大の釘を刺し、リリスが去っていく。
(…こ、恐い。これは早めに処理した方がよさそうだ。)
片付けを区切りの良い所まで終わらせ、急いでエルのところに向かう。
「ママ。」
『あら、マオどうしたの?』
エルが片付けの手を止める。
「あのね…ちょっとリリムちゃんと遊んできてもいい?」
(…本当は片付けをしていたいんだが…リリスの所に早く行かないと何をされるかわからんからな…)
『片付けはもう終わったの?』
「…ううん、まだ。」
『じゃあ、片付けをしてからにしなさい。』
エルにたしなめられる。
(…まぁ、普通はそうだよな。儂もそう思う。…だが…)
「でも…お迎えが来ちゃったらリリムちゃんとしばらく会えなくなっちゃうし…」
その言葉を聞いて、しばらく考え込むエル。
(…本当はこういう言い方はしたくないんだがな…)
『…そうね…仕方ないわね…あとはママが片付けておくから…行ってらっしゃい。』
「ママありがとう‼」
(…エルの許可も得たし…リリスの所に行かないと…)
走ってリリスの所に向かう。
「…リリムちゃんお待たせ‼」
片付けをしているリリスに話しかける。
(…てかお前も片付け終わってないんかい‼)
『マオちゃんもういいの?』
「うん。一応ママに許してもらったから。」
『…そう…じゃあ向こうに行って遊びましょ。』
リリスが人気のないほうを指さす。
「いいけど…リリムちゃん片付けは?もういいの?」
『あとで終わらせるから大丈夫だよ。』
(…多分、やらないな。)
辺りに人気が無いことを確認して、話し出す。
「…それでリリス、話と言うのは?」
『はい。いくつか相談があります。』
「なんだ?」
『まず始めに…私も疎開することになりました。』
(…まぁ、そうだよな。)
『疎開場所は元々居た場所、つまり、孤児院です。』
「…そうか。」
『マオちゃんはどちらに?』
「儂はエルフ達の国、エルグランドだ。」
『そうですか…結構遠いですね。』
リリスの顔が曇る。
(…儂と離れるのが寂しいのか?)
「リリスの所はどこなんだ?」
『私の所は首都コントラです。』
「首都…遠いな…でもなんでわざわざ首都に?普通、疎開をするならもっと攻める価値もないような、攻め込まれる心配もないようなド田舎とかじゃないのか?」
『…さぁ?…なんでもお父さん、いえ、村長が言うのには逆に安全なんじゃないか?…と言うことらしいです。』
「なんで?」
『首都だから兵士達が一杯いて守っているし、そもそも首都までは攻め込まれないだろうとの考えからだそうです。』
(…考えが甘いな…だが…逆に好都合かもしれん。)
「話はわかった。それで相談と言うのは?」
『今後、どういたしますか?』
「そうだなぁ…。」
(…儂は魔界、リリスには人間達をどうにかしてもらうか…アーク達も心配だし…)
「リリスには人間達の事を頼みたい。」
『…具体的には?』
「まず、アークとエルが戦争に参加する。それを影ながらサポートして欲しい。」
『なかなかの無茶振りですね…あの2人にサポートなど要らないのでは?』
「そうかもしれんが…」
(…万が一という事もあるしな…)
マオの心配そうな顔を見て、リリスがタメ息をつく。
『…わかりました。影ながらでいいんですね?』
「あぁ、そもそも、表に出たら色々とマズイだろ。」
『まぁそうですね。ちなみに戦闘行為はどうですか?』
「…う~ん…積極的にというのは好ましくないな。その点、リリスなら性格的に心配はいらないと思っているんだが…」
『そうですね。色んな魔族がいる中でも私は、性格、身体、共にあまり戦闘にはむいていないですからね…』
「戦闘行為についてはリリスに一任する。もちろん、自分の身に危険が迫っている場合については自分の判断でおこなうこと。」
『わかりました。』
「それと…こっちの方が重要なんだが…」
『なんですか?』
リリスが怪訝な顔をする。
「今回、なぜ戦争になったか調べて欲しい。」
『なぜって…それは単純に人間達の領土争いではないのですか?魔族の長である魔王がいなくなったからチャンスとばかりに他の国を侵略してやろう的な……』
「それならそれで……なぜそのような考えに至ったのか、人間達の事をよく観察して欲しい。」
『…そんなのわかるわけ無いじゃないですか‼人間じゃないんですから‼』
リリスが語気を強める。
「だからこそだよ。今まで我々は長年、何代にも渡り、お互いに争ってきた。語り合う事も無くな…。だから今回、リリスに色々と人間達の事を調べて欲しい。」
『それならこの村でも出来るんじゃないんですか?』
「この村だけではサンプルが少ない。今回、せっかく都会にある程度滞在するんだから色々な職種、年齢別に様々な人間を観察してふれあい、人間達の事を少しでも理解して欲しい。」
『…わかりました。』
リリスは少し腑に落ちないようだ。
「まぁ、儂も色々と調べてみるから…よろしくな。」
『それと緊急時はどうします?あとは連絡を取りたい場合は…』
「緊急時の対応はリリスに任せる。儂の判断が必要な場合は使い魔でもなんでも飛ばしてくれ。」
『…使い魔なんて居ません。』
「え、いないの‼」
マオが驚く。
『いないですよ?』
「え、だって、普通サキュバスって言ったらコウモリ的な使い魔いるじゃん‼魔女にはカラス的な…」
『そんなの勝手なイメージに過ぎません。まぁ、私の能力を使って何かを使役は出来ますけど…』
「そうなんだ…じゃあハトでも飛ばしてくれ。」
『…なんでハトなんですか?』
「伝書鳩っていうじゃん。」
『………。』
リリスが不思議そうな顔で見つめてくる。
(こいつ…アホの子を見るような目で見つめてくる…)
「それに、都会だから広場に行けばいっぱいいるだろ?…たぶん…。」
『………。』
「それと、ハトなら怪しまれないし…コウモリとかカラスだとなんか不気味だろ?」
『…わかりました。』
リリスがヤレヤレといった感じの表情で返事をする。
「出来たらハトの色は白色がいいな…」
『…なんでですか?』
「平和の象徴って感じがするから…。」
『………。』
「………。」
こうして今後の事を話し合い、あとは迎えを待つばかりとなった。
(ひとまず、人間達の方はこれでいいかな…?それよりも魔界に急がねば。早く迎えが来ないかな…。)




