~今後の話~
なかなか更新出来ずすいませんでした。お話は少しだけ進みます。少しでもお楽しみいただけたら幸いです。
コンテスト終了から一夜明け、今日から村人総出で片付けに追われる。マオも早朝からアーク達とともに、片付けに精をだす。
(…準備は色々と手間がかかったが…片付けはそれほどでもないな…)
アークは村の男衆に交ざり力仕事、マオはエルとともに村の婦人部に交ざり細々とした雑用をする。そこにはリリスの姿もある。片付けの最中、時折アークの姿を見かけるのだが、ふとした時に、何か考えているような難しい顔をしている。昨夜の打ち上げの時の事を知るよしもないマオはまた何かあったのだろうな、といった感じにしか感じていなかった。エルはいつもと変わらずホンワカとした感じだ。片付けに追われ、気がつけばお昼だ。
『みなさーん‼お昼ですよ~。』
どうやら村の婦人部の何人かが炊き出しの準備をしていたらしい。
『マオ、アークを呼んできてあげて。』
「うん。」
少し離れたところにいるアークを呼びに行く。
「パパ~ご飯だよ。」
『お、もうそんな時間か。』
アークも時間に気づいていなかったらしい。2人でエルのところに行く。炊き出しをもらい、親子3人で空いている場所に座る。
『さぁ、食べましょうか。』
「いただきまーす。」
(…うん。うまい。やっぱり身体を動かして食べるご飯は美味しいな…。それにしても…どうやって魔界に行こう…行き方はわかるとしても…アークとエルをどうやって説得するかだな…。)
そんな事を考えながらご飯を食べていると村長のイーサーがやって来た。
『アーク‼ここにいたのか。』
(…このおっさん、またアークになんか頼みにきたのか?)
『なにかあったのですか?』
アークも村長が来るときは大抵、頼みたい事があるのだろうと認識しているらしく聞き返す。
『あぁ、今、村の子供がいる家庭に聞いてまわっているのだが…アーク達はもし仮に戦争になったとしたらどこかにエルさんやマオちゃんを疎開させれるような伝手はあるのかい?』
(…やっぱり戦争になるんだな…)
『一応はありますけど…。』
『それなら良かった。』
『どうしてです?』
『昨日のコンテストの時に殿下に伺ったんだが…やはり戦争になるらしくてな…そこで村の子供達を集団で疎開させようと思ってな。』
『そうなんですか…』
『まぁ、伝手があるならそれで良い。もし、そちらがダメだったら早めに伝えてくれよ。』
『…わかりました。』
村長が次の家庭へと、去っていく。
「…パパ、戦争になるの?」
『あぁ、戦争になるらしい。』
アークが難しい顔をして答える。
「パパも戦争に行くの?」
『…そうだよ。パパも行かなきゃならない。』
「ママは?」
『エルは…』
………パンッ‼………
エルが手を鳴らす。
『そこまでにして後はまたお家に帰ってから、ゆっくりお話しましょう。』
『あぁ。』
(…なんだよ…いいところなのに…)
『さぁ、それじゃあ午後も頑張りましょう。』
食べた物を片付け、午後の作業を開始する。黙々と作業を続ける合間にエルを見ると、午前とは違い、たまになにやら考えているのかボーッとしている。
(…エルも何か考えているのか…?まぁエルの場合、いつもおっとりしているからよくわからん…)
『マオちゃん!』
少し暇になったのかリリスが来た。
「リリムちゃん…」
『どう?今、少しお話できる?』
(リリスも何か話があるのか?)
「…う~ん…あと少しで手が空くかな?」
『じゃあ、手が空いたら私のところに来てね。』
「…わかった。」
リリスが去り際に耳打ちしていく。
『…今後の事で少し相談があります。』
そういうとリリスはまた自分の持ち場の方に去っていった。
リリスが去り、また黙々と作業を続ける。
(…リリスも多分、戦争の事だろう…それにしても…どうやって魔界に行こう…あの2人が許してくれるかな…?まぁ許しが無くてもいいんだが…今後の事を考えるとやっぱりな…)
色々と考えながら黙々と作業を続け、気がつけば辺りがうっすら暗くなりはじめている。
(…もう夕方か…時間がたつのが早いな。)
『マオ、そろそろ終わりましょ。』
エルが呼びに来た。
『残りは明日またしましょ。』
「うん。」
後片付けをし、家に帰る。家に着くとアークの姿はなく、どうやらまだ片付けをしているらしい。
『さぁ、パパが帰ってくるまでに夕飯を作りましょ。マオ、手伝ってくれる?』
「うん!」
エルがテキパキと夕飯を支度しはじめる。マオもおもに配膳や食器の準備等を手伝う。手際よく準備をし、あとはアークの帰りを待つだけとなった。
(…アーク遅いな…)
「パパ遅いね。」
『そうねぇ…村長さんとお話ししているのかしら…。』
2人でアークの帰りを待つ。
『ただいまぁ‼』
アークが帰ってきた。
「パパ、おかえり‼」
『ただいま。』
『あなた、遅かったわね。』
『あぁ、少し話をしていたからね。』
『…それじゃ、パパも帰ってきたから夕飯にしましょ。』
3人で食卓のいつもの席に座る。
『それじゃあ、いただきます。』
「いただきまーす‼」
夕飯を食べはじめる。時折、今日あった出来事や、他愛ない話を交えながら楽しく食事する。
(…家族団欒はいいなぁ。…なんとしてでもこの団欒を守らねば…。)
夕飯を食べ終え、一息つく。
『…さて、エル、悪いけどコーヒーを入れてくれるかい?』
『はい。』
(…いよいよ、今後の話が始まるのか。)
エルが席を立ち、コーヒーを準備する。
『マオも飲む?』
「うん。」
『いつものでいいの?』
いつものとはコーヒーにミルクと砂糖をたっぷり入れた、コーヒーと言うよりも甘いカフェオレに近いものだ。
「…う~ん、今日はブラックにする。」
『あらあら、大人になったのね。フフフ…。』
エルが微笑む。
(…魔王やってた時もよく飲んでたし…転生してからは初めて飲むけど大丈夫だろ?)
コーヒーが入り、エルが席に着く。
『…さて、マオ。今日はちょっと大事な話をするよ。』
「うん。」
アークが一口コーヒーを飲み、フーッと溜め息をつく。マオも一口飲む。
(…苦っ‼…この身体になってから初めて飲むが…前と違い、やはり色々、勝手が違うのか…。)
『マオももうわかる歳だと思うから言うけど…近々、戦争になるんだ。』
「…うん。」
『それでパパは戦争に行かなきゃならないんだけど…その間、マオとママには安全な場所で待っていてもらいたいんだ。』
「うん。」
「本当はパパがそばにいてあげたいけど…戦争になれば、パパの事を必要とする人は沢山いるだろうし…それに元勇者だからね。」
「うん。」
『良い子で待っててくれるかな?』
「わかった。」
マオの返事を聞き、緊張がとけたのか穏やかないつもの顔に戻るアーク。その顔を見て、ふと、疑問がわく。
(…安全な場所ってどこだ?)
「パパ。1つ聞いてもいい?」
『ん?なんだい?』
「安全な場所ってどこ?」
『あぁ…おじいちゃんがいるところだよ。』
(…おじいちゃんいたの⁉…生まれてから初めて聞いた…)
「おじいちゃんいたんだ…今まで会った事なかったから知らなかった…なんで今まで会わなかったの?」
普通、思いつくであろう疑問をアークに聞いてみる。
『………ん~、それはな…。』
なにやら歯切れが悪い。
(…なんだ?駆け落ちでもしたのか?)
ゴニョゴニョとなにやら言っているアークを見て、我慢出来なくなったのかエルが口を開く。
『…パパとママはね、半分駆け落ちみたいに一緒になったのよ。』
(…やっぱりな…)
『昔、パパ達が魔王討伐の旅の途中にママがいる国によったのよ。そこでママはパパに一目惚れしちゃってね。おじいちゃんが止めるのも聞かずに黙ってついていっちゃったのよ。あのときのパパはカッコよかったわぁ~。今もカッコいいけどね。』
『おい、よせよ…』
アークは満更でもなさそうだ。
(…え、なにこの茶番…)
『それ以来、おじいちゃんとは会ってないの…でもお手紙のやり取りはしていたわよ。と、言っても結婚したときとマオが生まれた時に送っただけだけどね…その時はお返事も来なかったわ…』
エルはうつむき、寂しそうな表情を浮かべる。
『だけど、今回、こういう事情だからマオを預かってくれないかと、手紙を送ったら返事が来たのよ。迎えを送るから安心してマオを預けなさいってね。』
エルが嬉しそうな表情を浮かべる。
「そうなんだ。ママ、良かったね。それで…どこなの?」
『あぁ…それはね…』
今度はアークが喋る。
『エルフをはじめ、他種族が多く暮らしている国、エルグランドだよ。』
(…エルフ達の国か…転生前も行ったことはなかったな…)
「ママの国か…どんなところなの?」
『いいところよ。』
今度はまたエルが喋り出す。
『皆優しいし、いろんな種族がいてもケンカなんかちっともないし、なにより、安全だしね。』
(…転生前に噂で聞いていたが…儂の理想郷そのものだな…楽しみだ…しかし、その前に魔界にいかねば…)
「よかった。パパとしばらく会えないのはさみしいけど…パパの事を必要としている人は沢山いるもんね。私、良い子で待ってるから…早く迎えに来てね。」
マオが寂しげな表情から一転、満面の笑みを見せる。
(…儂の良い子の手本のような百点満点の演技はどうだ‼…まぁ、演技でもいいからアーク達を安心させてあげないとな…魔界は…どこかのタイミングで隙をついて向かうか…。)
『…マオ…』
どうやらマオの演技はアークにとって会心の一撃だったらしく、瞳を潤ませ、感極まっている。
「それで、いつ、お迎えはくるの?」
アークの様子を見て、喋るのは無理だと判断したエルが喋る。
『そうねぇ…1週間前後じゃないかしら?』
「そうなんだ…」
(…よし、迎えに来た連中には悪いが…エルグランドに向かう途中どこかで魔界にむかうぞ‼…だけど…)
「…ママも一緒にくるんだよね?」
『…その事なんだけど…』
『そうだよ。』
エルが返答しはじめたとたん、それを遮るように、会心の一撃から復活したアークが答える。
『ママも一緒だよ。』
『…アーク…ちょっと聞いて。』
エルが神妙な顔つきになる。場の空気が先程とは違い、少し重く感じる。
(…一体、何が始まるんです?)
『私はあなたについていくわ。』
『ダメだ‼』
『なぜ?』
重苦しい空気を纏い、冷静に、静かに喋るエルとは違い、アークは少し感情的になっているようだ。
『なぜって…それは危ないし、マオの事も心配だし…とにかく、ダメだ‼』
『あら、マオの事は心配いらないわよ。ねぇマオ?』
(…こっちに話を振るなよ…しかし、エルが来ないとなると好都合だぞ。)
「うん。私は大丈夫だからママはパパについていって。」
『しかし…いや、でも…危ないからダメだ‼』
『その事なら心配いらないわ。私だって仮にも元、勇者のパーティーですもの。自分の身ぐらい自分で守れるわ。』
『しかし…』
アークが言葉につまる。
(…もう一押しか?)
「そうだよパパ。私も、もう子供じゃないから大丈夫だよ。」
『エル達は戦争の、人間達の残酷さを知らないからそんな事が言えるんだ‼』
(‼っ…アークがキレた…)
アークが声を張り上げる。それと同時に辺りに静寂が訪れ、そのなかを今度は静かなトーンで語り出す。
『…エル達は…戦争の…人間達の残酷さを知らないから…人間は時に、本当に残酷な事をするんだよ…魔族や、他種族では考えもつかないような…本当に残酷な事をするんだよ。俺は…エルやマオにそんな酷い目にあって欲しくないんだよ…』
(…アーク…)
『アーク…』
『…だから2人とも、おとなしくエルグランドで待っていてくれないか?』
(…これはもうダメか?エルがついて来ちゃう雰囲気か?)
『いいえ、私はついて行きます‼』
(お、いいぞ‼)
『あなたが私達を思ってくれているように私達だってあなたの事が大切なのよ。』
『…ダメだ…。』
『それにマオの事なら心配はいらないわ。迎えの人も来るし、なによりお父様が保護してくれるんですもの。』
『………。』
(…もう一押しだ‼)
『なによりアークだってわかっているでしょ?私が1度言い出したら聞かないって。』
エルがニコリと微笑む。それを真顔で見つめるアーク。しばらく見つめていたが、やがて氷が溶けるようにアークもニコリと微笑む。
『…わかった。負けたよ。』
ハニカミながら頭をポリポリと掻く。
『エル、ついてきてくれるかい?』
その言葉を聞き、とびきりの笑顔でエルが答える。
『えぇ‼もちろん‼』
(…これで後々動きやすくなったぞ。)
「ママ、良かったね。私の事は心配いらないからしっかりパパの面倒をみてね。以外にパパは抜けてるところがあるから。」
『もちろんよ‼』
『…こりゃ、参ったな。』
アークが頭をポリポリと掻く。途端に、3人とも笑い声を上げる。
(…なんだこの茶番…)
こうして今後の話もまとまり、夜はふけていくのだった…。
(…そういえばリリスの事をすっかり忘れていた…あいつの事を忘れてるの2度目だけど…まぁいいか。)
~国紹介~
エルグランド王国~ エルの故郷。名前の由来は偉大なエルフが作ったからだそう。やっちゃえ〇〇とは関係ない。




