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神がもたらすもの

神がもたらすものは大きく分けて3つである。恩寵(ブレス)呪い(カース)契約(ギアス)がそれにあたることとなる。基本的にはこの3種はバランスが取れるようにできている。

まず最初に恩寵が与えられる、それは身体の強さであったり特殊能力であったりそれぞれである。次にそれに対応した呪いもまた与えられる。ここで第一の天秤が決定される。

次に契約だが、それは生きていくうちに結んでいくものであり、それが何になるかは分からない。新たな能力であったり制約であったりを受け取るときバランスが取れていた天秤はまたどちらかに傾く事になる。

傾いた天秤は正されなければならない。その埋め合わせは幸運であったり不運であったりで行われるがごく稀にこの世界になかった異物の天秤がこの作用を受けるときその影響がどうなるかは未知数である。

あるものは記憶を失い、あるものは身体を、あるものは知識を、心や道徳を失うこともあり得るのである。

この天秤の揺り戻しは何者にも止めることはできず、また防ぐことも予期することもできはしない世界のルールである。

失ったものを取り戻す術はないわけではないが、それは今までの全てを手放すことに等しい所業となる。

「ふむ……権能と命を手放したか。なれば天秤を揺り戻そう。望みは敵対者の全滅……そうか……であれば地下を荒らす竜を遣わそう……それで死ななければお前の負けだ」

システムのように淡々と理を働かせる。転生者・転移者がもたらす理への影響は大きい。故に勝手に潰しあってくれるのであればそれは管理者としては願ったり叶ったりなのであった。

「NO12005 君原 十一の生命と保持権能を粉砕し、災厄へと変換する」

バランスを保った時点で理の仕事は終わりだ、この先に何が起ころうともそれは管理者の知ったことではない。

だが、管理者には1つの懸念があった。それは一番最後にここに来た少年のことだ。少年にはあまりにも多くの呪いが付加されていた。名前の剥奪、心的平衡の脆弱化、厄寄せの呪、身体強化への枷、自罰への誘い、不運の星、その他にも呪いが積み重なっていた。それに対する恩寵はただ1つ。言語制限の突破のみであった。

「あまりにも酷い……この者が一体何をしたのだ……」

転生であればそんな魂はここへは来れぬはず、転移でここに訪れたのならば何か理由があるはずと思わずそう呟いた管理者はその理由を知る。

「未来での……負債か」

少年の未来は元の世界において決定していた。それは人類の敵対者と言って相応しい所業だがその咎を少年に背負わせるのはあまりにも無慈悲だった。

「なんだこれは……」

少年の身体には1つの細工がされていた。それは夥しい量の病原体の保持者であることと本人が死なないことを両立させるものだった。言わば歩く細菌兵器とでも言うべきものだ。少年はある科学者の夫婦の元に生まれていた。もちろん禁忌とされた技術をこれでもかと使って望む体質を持つ子として造られたものである。

「おぞましいな……」

子を使った計画を実行する前に夫婦は事故で死んだ、計画のための資金は潤沢にありそれらは全て少年へと相続されることとなった。そして少年はなにも知らぬまま1000年の眠りについたのだ。

「そしてこうなるのか……」

1000年の後少年は目を覚ます。冷凍された身体を温めて1000年の後の生活を謳歌する……はずだった。温められた身体に眠っていた病原体もまた動き始めたのだ。1000年のうちに病気の根絶をほとんど完遂させていた人類には病気に対する抵抗などなく瞬く間にパンデミックが始まった。伝染病が次から次へと発生して人類は大幅に数を減らすこととなる。だがこの少年さえいなければ何の問題もない。

「こちらには人類は存在しない、人類への病原体のなどに意味はない……か」

地球の神は決定を下した。少年を他の世界に放逐することを。その際に起こる不具合を全て少年に押し付けて無かったことにしたのだ。

「全く自分勝手なものだ……だが、恐ろしいことに天秤は今の状態で釣り合っている……今から何かを施すことはできない……」

そう思いつつ海の一角に少年を落としたのだった。そして今少年をもう一度確認する。

「そうか……まだ生きていたのか……契約も結んでいるとは……だが悲しいかな……今のお前の天秤は負の方向に揺り戻すぞ……その試練を超えてみろ……その時にお前は力を得るだろう」






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