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10万年後に失った声 4

『おの……れ……辱めを受けるくらいなら……私は私の手で幕を引く……神の見えざる手よ……我が手を離れて荒れ狂え』

なんだ!? 何かが内側に集まっている……まさか爆発!?

『(危ない!!)』

咄嗟に手を叩く、どうか伝わってほしい。これが今の僕にできる最大限のメッセージだ。

『最初はどこからいこうか……?脚がいい? それともはらわたが良いか?』

ダメだ、カツランさんに届いてない!! 聞く気がない人に僕のメッセージは伝わらない……!!

『ぐぁぁあああああああああああああああああああああああああ!!?』

『なんや、自害でも……うあっ!?』

身体の中から……なんだあれは……芋虫? にしては大きすぎるしどことなく竜っぽい……いったいあの生き物は!?

「ギシュアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」

っ!? 何を言ってるか分からない。それはつまり話す知能がないか、もしくは話す機能がない。

『最悪や……樹食竜(ニヅヘグ)がなんであいつの中から……他の長を呼ばなどうにもならんよあんなもん。坊たちは呼んでくるまで勝手なことしたらあかんよ!』

にづへぐ? ダメだ分からない。あれがどう脅威なのか僕には伝わらない。

『うあああああああ!?』

カツランさんが食べられてる!?

「(デリ、燕間、カツランさんを助けてあげて!!)」

「もうやってる!!」

燕間の姿は既になくカツランさんの近くまで飛んで行っていた……僕が言うまでもなかったか……良かった……険悪だったから見捨てるんじゃないかと思った自分を戒めよう。

「身体の中は水が多い……それなら!!」

身体が少し震えているように思える、おそらくデリの声の振動の範囲に入ってしまったのだろう。どいたほうが良いな。

「ぎっ!? 」

身体をよじらせて苦しんでいるみたいだ、身体から湯気が出ているのを見ると振動で温められているみたいだ。

「あちち!? デリさん!? えんまも熱いですよ!?」

「……!!」

今デリは他の声は使えないみたいだ。多分大雑把な指定はできてもピンポイントで狙うのは難しい技なんだろう。

「そうでした……あれ無差別攻撃でしたね……ですが耐えられます……回収しました!!」

燕間の手がカツランさんを抱えた。そのままこっちに戻って来れば助けられる。

「シャアアアアアア!!」

い、と? あの幼虫糸を吐いた!? まずい、燕間の手はふさがってるし空中だ。どうにもならない!!

「……諦め……ないで。それと耳を塞いで」

デリが喋った? それはつまり熱攻撃の終わりを意味する。とりあえず言われた通り耳を塞いだ。

「すぅっ……」

大きく深く息を吸った、上半身が膨らんでいると思うほどに肺を使っているのか……

「ーーーーーーーーー!!!!!!!!」

爆音、そう形容する他なかった。出どころが分かっていなければそれが声なのかも分からなかっただろう。しかも恐ろしいことにこれでも漏れ出た程度の音でしかないみたいだ、土埃を見る限りでは幼虫に向けて一直線で声を放っている。それならばこれを正面から受けた幼虫は。

「ゲシャア!?」

大きく吹き飛ばされることになった。物理的破壊力を伴う量の声を出せるなんてすごいや!!

「げほっ……ごほっ……かはっ……」

デリ…… 血が!?

「(口から血が出てる!? いやこれ胃とか肺とかからの血でしょ!?)」

「だい……じょうぶ……これくらい……それに……これをやらなきゃ燕間は……捕まってた……から」

僕が……僕がもしも強かったなら……デリや燕間にこんなことをさせずに済むのに……僕は肝心なところではいつも人任せだ……僕は……情けない……仲間を守ることすら満足にできないなんて……

「まぼろしさん、離れましょう。アレはすぐに動き出します。アレは違います、生き物ではありません……まるで絡繰のような……」

からくり……機械的ってことか……もしかしてアレは鯨のようなシステムなのか!? だとしたらあの幼虫は鯨と同じレベルの災害……でもそこまで脅威だとは思えない……もしかしてあれは見た目通り幼虫なのか!?

「(今のうちに倒さなきゃダメだ……そうしないと取り返しのつかないことになる)」

「……分かりました。えんまはまぼろしさんの羽です。どこまでもご一緒に」

デリはもう戦えない、燕間だけが頼りだ……相手の能力は未知数……それでもやるしかない……!!

「おち……ついて」

「いたあっ!?」

デリに頬を張られた……でも今回は意識が飛ぶほどの衝撃じゃない……

「じぶん……だけでなんとかしようとしないで……まつのも……ゲホッ……だいじだから……くじらのときをくりかえさないで……」

っ!? そうだ……また僕は勝手に自分で突っ走ろうと……

「まぼろしさんどうしますか?」

「(リコリツスさんを待とう……あの人は他の長がいなきゃどうにもならないって言ってた。つまり他の長がいればどうにかなるってことだよね?)」

「ですが……アレがどうにかなるのでしょうか」

燕間が指を指す方向にはいつの間にか繭を作っていた幼虫が大きな口のある胴の長い竜のような姿になっていた。

「ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」

……どうにかなることを信じよう。











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