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10万年後に失った声 3

『……いったいどうなっているんですか!!』

『(どうなっているんでしょう?)』

僕の喉は別に損傷している訳ではないらしい、それどころか健康体そのものであるとカツランさんとデリから言われた。薬師と人間超音波検査機が言うんだからそうなんだろう。

『どこも悪くないのに声が出ないなんて……』

『(不思議ですね)』

実際のところ困ってはいない、意思疎通に全く不都合が生じていないからだ。別にわざわざ声を出さなくても通じるならば良いのではとさえ思っている。

『わたくしの知っていることはほとんど試してしまいました……お手上げですわ』

『(ありがとうございます、でも声が出なくともなんとかなりそうなのでこれ以上は……)』

『そういうことじゃないのです。無くてもなんとかなるから無くて良いなどということは無いのですよ。

あなたはそれを言う段階には至っていないのです、それは万策尽きた時に言うものです。まだ他にもあなたの為に何かをしてくれる者はいるでしょう?』

……そういうものかなあ……たぶんどうにもならないと思うけど……

「どう? 声は出そう?」

「(まだ無理みたい)」

「そっか……諦めないでやっていこうね」

そんな優しい目で見られても……別に取り戻したいとも思ってないんだけど

『喉に良い薬草を煎じたから飲んどいてな、坊は治したるから安心してええよ』

カツランさんも……そこまで決意した感じにならなくても良いのに……

「何か欲しいものはありますか? えんまが調達できるものならなんなりと」

「(今は特にないかな)」

「分かりました。ご用の時は何か合図をいただければすぐに」

そんな事態には……なるかもしれないから気をつけよう……いつでも助けは呼べるようにしないと……

『取り込み中の所悪いなあ、とりあえず目ぼしい奴らが見つかったから見てくれるか?』

本当に3日以内に炙り出したんだ……すごいなあ。

『こっちや』

連れていかれた先には5人ほどが縛られていた。構成は土竜の人が1人にキノコみたいなのが2人ミミズの人が1人植物の人が1人だった。

『これが地上の情報を言いふらしてた連中でなあ、この中に坊を殺そうとしたのもいると思うんやけど……坊は分かったりするんかな? 今から拷問にかけて吐かせようと思うてるんやけど……』

拷問!? 尋問じゃなくて!? そうなると1人は当たりだとしても他の4人はただ嬲られるってことになる……それはあんまり気持ちのいい話じゃない……

『(見てみますね)』

涙を出す方法を考えてたらカツランさんが刺激の強い胡椒のような粉をくれたのでそれを吸う。

「ゲホッ!? ごほっ!?」

思ってたのより刺激がすごい……胡椒かと思ったらワサビみたいだった……ツーンとする……

『(なるほど)』

1人1人に糸の跡のようなものが見える、つまりは全員操られていたってことになるのかな、そしてその出どころは……あそこか

『(あっちの菌の人が犯人です)』

たぶん容疑者操作してこの5人に絞らせるようにしたんだろうけど……近場にいなきゃいけなかったのが運の尽きだね

『あっち? ただの壁しかないんやけど?』

見えてない? ということは姿を消せるのか元々ないのか……どっちだろう……実体がない系だと困るけど……

『(そこの壁に同化していますから一気に縛り上げてください)』

『……坊がそう言うんやったら』

リコリツスさんがそちらに視線を向けるにと壁が根で囲まれるのは同時だった。

『なぜだっ!? 完全に溶け込んでいたはずだぞ!?』

良かった、実体はあったみたいだ。

『そんなところにおったんかいな……探したわぁ……落とし前つけようなあ?』

『くそっ……!!』

身体が崩れていく、身体を細分化できるのか……そんなのどうやって捕まえればいいんだ……このままじゃ逃げられる……なんとかしないと……

『追うとしますわあ、菌が細かくなるとその分力も弱なるから今は何もできひん。次に身体戻した時が最後やわ』

あ、追えるんですね。たぶん転生してきた人だと思うけど何か隠し玉とか持ってるんだろうか……

『ここら一帯は体内と一緒や。覚えたからには逃さんよお?』

何か持ってると考えておこう、どんなことをするか分からないけど心構えだけは必要だ。

『こっちは行きどまりや、観念したか?』

行った先にはこちらに背を向けたままで犯人が立っていた。

『ふぅ……追い詰めたと思っているんだろう? だがな、私の大願は終わらない!! ここでお前らを殺せば全て元どおりだ!! 我が名はヅァーランダ。世界を平定する君主になる者だ!!』

犯人改めヅァーランダとやらが吠えた。こんなところで大声を出したら他の人に聞こえるとは思わないんだろうか。

「今の音は何!?」

「敵ですか!?」

デリと燕間が駆けつけてくる。その少し後にカツランさんもゆらりと姿を見せた。

『ほぉん……お前がなあ? 坊を傷つけてぇ……そのうえ殺させようとした奴やなあ……惨たらしく死ぬ覚悟はしてきたんやろうなあ?』

バキバキという音と共にカツランさんの身体が変形していく……人の部分は完全に隠れて蔦の化け物といった感じの姿へと変じていった。こっちの姿が素なら確かに人の部分は飾りだろう。

『カツランのキレた姿なんて久しぶりに見たわあ……覚悟しとき?』

『ふん、いくら揃った所で私を打倒することなどできないと知れ!!』

ヅァーランダが両手を広げた、指から糸みたいなものが出ているからあれで人を操るんだろう。

『これが神から与えられた私の支配の力……神の見えざる手(ゴッドハンド)

神からの与えられた力かぁ……それって神様よりも強いのかな?

『小賢しいですわ!! わたくしの前で類似した権能をひけらかすなど愚かの一言です』

伸びた糸が瞬く間に食い尽くされていく、見た目的には糸が蔦に絡まれて切られていっている。

『な、なんなのだ!? 私は選ばれた人間だぞ!? それがこのような愚民どもに追い込まれるなどあってはならないのに!?』

『この程度の力で図に乗ったのがあなたの過ちですわ』

『くそっ!!三度も私が逃げるはめになるとはな!!』

また身体を細かくしていく気か……あれがある限り逃げるのを止められないのは困ったな……

『うふふ……可愛らしいことやわぁ。まだ逃げられると思うてはるところが特に』

『は? 身体が……動かない!?』

『寄生とはこうやるものでしてよ? 迅速に気づかれずに全てを手遅れにするのです』

うわあ……味方ながらひどい力だと思う……

『くそ、くそおおおおおおお!!!』

『それじゃあ……もうええなぁ? あとは死に難いよう少しずつ欠片にするからなあ……せいぜいわめくと良いわあ。薬師やからどこを削ったら死ぬかは分かっとるから安心して地獄を味わうと良いわあ』

終わりだ、ここから何か逆転するような手はないだろう。









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