10万年後の女心は複雑怪奇
なんだかんだで泣いた後に記憶の欠落が治っていた……僕は……僕だったじゃないか……最初から今までずっと……気がかりなのは僕がもたついてる間に居なくなった神格だけど……あの感じだと多分消えてないね……何かしてくるようだったら対策を考えなきゃな……でもそれは先の課題だ……今解決すべきなのは演説の方だ……よく分からないけど政治利用されるみたいでなんかもやもやする……でもやらないと返してもらえなさそうだしやるしかない……で……今の課題は……
「あのう……デリさん、燕間さん……ちょっと離れてもらえると動きやすいんだけどなあ……」
「や」
「心苦しいですけど今は無理です。観念してください」
僕の両腕をホールドして離してくれない……なのですごく動きにくくて困っている……やんわり止めてと伝えてもさっきみたいに突っぱねられてしまうし……どうしよう……
「さん付けもやめて、私のことはデリって呼んでよ」
「ああっずるい!! えんまもえんまと呼んでください!! いえなんならお前とかそこのとかでも良いですから!!」
……すごく嬉しそうな顔をしているから強く言うのも憚られるし……本当に困った……こういうときにカツランさんを召喚したらなんとかしてくれたりするのかもしれないなあ……
「……今他の人のこと考えたでしょ……音で分かるんだよ?」
「まぼろしさん……? 今はえんま達との時間ですよ?」
正直ぞっとした……表情にここまで変化が現れるものなのか……さっきまでの幸せそうな顔が一瞬で機械のような冷たい顔になった……女の人って怖い……!!
「ごめんなさい……カツランさんに助けてもらおうと思ってました」
正直に言ってしまったほうが良いだろう、僕は隠し事をしたせいでこんなことになってしまったんだから……隠すのは極力なしだ。
「ふーん……」
「そうですかー」
んんっ!? 腕がミシミシと音を立てているような気がするなあ!? 気のせいじゃないなあ!! 実際に腕がミシミシと軋んでいるぞお!!?
「あ、あの、デリさん?」
「ぷいっ」
あれ? 腕の力を緩めるどころか増してきた上に顔を背けられてしまった……このままだと僕の腕は胴体とグッバイしてしまう……!!
「燕間さん?」
「ぷーい」
燕間さんまで!? そんな!? 僕を助けてくれる人はもういないじゃないか……待てよ……こういうときの神頼みじゃないか?
『モルト母さん、アバ姉さん、パクさん、誰か助けて!!」
そういえば僕から助けを求めたのはこれが初めてかもしれない……応えてくれるのかな……でもこれで応えてくれなかったら僕は……困るなあ
『……我が子よ……その……今の状況は……言いにくいのだが……我が子が悪い……腕は動かせぬだろうから心の手を胸に当てて考えてみるのだ……妾からはそれしか言えぬ』
『バーカバーカ!! だからお前は愚弟なんだヨ!! 救えねえ馬鹿に与える福音なんざねえんだヨ!! 自分のにっぶい頭で考えんだナ!!』
『名無は3回瞬きしたらものを忘れる力があるネ、よくよく思い出して見る事よ。賢い名無はそれで分かると信じてるネ』
……僕の神様達は僕をボロクソに言うみたいです……心が痛い……そんな風に言わなくても良いじゃないか……というかこれ僕が悪いの……? 胸に手を当てて考えろとか思い出せとか……そんな作業が必要なほど伏線が張られていたようにはおも……あれ? もしかして……
「えっと……デリ……燕間……で良いかな?」
「えへへ~……照れるね」
「っ……!! 染みわたります……」
名前を呼び捨てにするのってそんなに重要なことなのか……でも腕の痛みもなくなったってことはそういうことなんだろう……やっぱりよく分からないなあ……いっそ良い機会だから聞いてしまおうかな……
「……1つ聞いてもいい?」
「良いけど……本当にそれを聞いて良いの?」
「まぼろしさん……覚悟はお有りですか?」
え? 怖い……僕が何を聞くか分かってるの? そんな心を読む能力なんてないと思っていたんだけど……僕の顔がそんなに分かりやすいのかな……
「うん。大丈夫」
「そう……じゃあ私も覚悟するよ(とうとう来てしまったのね……きっと君は私達の気持ちを聞いてくる……そこで嘘はつけない……今の関係のままじゃいられなくなる……それでも……私は構わない……秘めてるだけじゃ何にもならないのはよく分かったから……)」
「分かりました……(ついに胸の内を話す時が来たのですね……いつか来るとは思っていましたが思ったよりは早かったですね……えんまはまぼろしさんの……1番になりたいです……一対の羽を分かち合って飛ぶ伝説のように比翅の番になりたいのです……)」
それじゃあ聞いてしまおう……
「僕の呼び方統一しないと面倒じゃない? 呼び捨てみたいな感じで呼びやすいの考えた方が良いと思うんだけど……」
「え?」
「は?」
なんでそんなキョトンとした顔を……?
「……君には強めのお仕置きが必要だね」
「ええ……えんまもそう思っていたところです……」
「え? なんで? ちょっと待って!?」
じりじりと寄ってくるのが非常に怖い……!!
『……甘んじて受けるが良い』
『ま、当然だナ』
『次の機会があるといいネ』
腕が鉛のように重くなった!? 目をつぶることもできない!? なんで!? 僕何かしたの!?
「いやあああああああああああ!!!?」
僕は……恐怖を刻み込まれることになった……心って難しいなあ……
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