演説が……進まない
「うぁああ……(なんてことをなんてことをなんてことをなんてことをなんてことを!!? まぼろしさんになんて言いました!? えんまはまぼろしさんに弱くて可愛いだなんて!? 畏れ多いし不敬だしなんであんなことを!? 確かに守ってあげないとまぼろしさんはすぐに死んでしまいそうですし小さいし柔らかいし温かいから愛らしいと思ったこともありますけどぉおおおお!?)」
燕間さんが空中で悶えている……すごいなあ空中で姿勢制御が完璧だ……まるで地上みたいに転げ回ってるよ……
「燕間さん大丈夫?」
「大丈夫じゃないですぅぅぅぅ……!!! しばしお顔を見せないでくださいぃぃ……!!」
燕間さんにも言われてしまった……また何か間違えてしまったみたいだ……難しいなあ……こんなんじゃあまともにコミュニケーションもとれやしないじゃないか……もっと繊細に気をつけて話さないとなあ……
「そっか……じゃあ離れるね」
「すみませぇぇぇん……お願いしますぅぅぅ……」
……1人になってしまったなあ……いや良いんだ……僕ももともと1人だったから……1000年後に行きたいと思った……んだったかなあ……何を話そうか……決めてしまわないと……
「っ……!? どうしてだろう……なんでこんなに痛いんだろう……なんで……?」
怪我をしているわけじゃないのに……ただ僕が悪かっただけなのに……どうしてこんなに胸が痛むんだろう……どうして……?
「い……たい……」
頭まで痛んできた……頭をドリルで削られるような……そんな痛み……ガリガリと……削られる……僕……痛い……なんで……どうして……僕を……信じてくれないの……どうして僕は1人になるの……悪いところはなおすから……謝るから……また……僕と……
「なんだ……これ……!?」
知らない感情……知らない映像……そんなものがフラッシュバックする……なんだよ……これ……なんなんだよ……知らない……こんなもの僕は知らないんだ……!!
「う……ぐぎぎ……ああ……くっそう……こんな……なんなんだよう……!!」
痛い……景色も歪む……僕は……僕なんだ……何も悪い事なんてしてないよ……なのにどうしてこんな苦しい思いをしなくちゃいけないの……!?
「なんで……?」
分からないんだ……何が何だか……何がどうなのか……なにも分からない……どうして……僕は……僕は……なんなんだ……誰か教えてよ……僕は……何なのかを……
「はっ……はっ……かはっ……は……あ……!!?」
暗い……息ができない……なにも……見えない……苦しい……助けて……誰か……助けてよ……身体が固まる……足だけがガクガク震えている……もう……ダメだ……僕は……もう……
「……あ」
右手だけが自由になった? どうして……他のところは動かないのに……いや今も僕の意思では動かせない……ならなんで動いたんだ……?
「冷たい……?」
微かにひんやりとしている……なんだろう……
「あれ……?」
左手も……? こっちは少し堅い……?
「ごめんね……また1人にしちゃって……私達はもう離れないよ」
「まぼろしさん……えんまはずっとお側にいますからね……」
デリさんと燕間さんが手を取ってくれたみたいだ……少しだけ僕の身体に自由が戻る……少しだけ僕の周りの空気が戻ってくる……
「君も辛かったんだよね……私は……それを分かってなかったんだ……」
「勝手に仕えようとしていたえんまは……まぼろしさんのことを蔑ろにしていました……」
「……違う……違うよ」
言葉が勝手に出た……それに戸惑うことはない……自然に……考えるまでもなく……言葉は浮かんできた……それをただ出す……それだけのことだった。
「僕は……デリさんと燕間さんに勝手に押しつけたんだ……それで2人がどう思うかなんて考えもせずに突っ走ったんだ……だから謝るのは僕のほうなんだ……僕は……僕のせいで……悪いのは僕で……だから……見捨てられても当然で……だけど……1人は寂しくて……それで……それで……」
あふれ出すのは白い涙、捧げた涙は僕の視界をクリアする。見えるのはデリさんと燕間さんの周りにある空気に色のついたもの……オーラっていうのかもしれないけど詳しいことは分からない……その色はお日様のようで優しかった……不思議なことにそれは僕を包んでいて……僕の青黒い空気と混ざり合っていた。
「泣かないで、君が泣くと私も悲しくなるの……君だって1人で行かなくちゃいけなかったんでしょ……理由があったのならそれは勝手じゃないよ」
「でも……でも……!!」
「えんまは……えんまはまぼろしさんに捨てられて良いと思っていました。羽のないえんまに価値はないと思っていました……それでもまぼろしさんは見捨ててくれませんでした。そのおかげで今えんまの……背には……はねがありばず……だがら……ひていしないでくだざい……えんまは……にどもまぼろじざんにずぐわれだんでずから……!!」
燕間さんが泣いている……僕がしたことは……正しかったのかな……正しいと思っても良いのかな……僕はデリさんと燕間さんと一緒に居てもいいのかな……?
「ゆるして……くれ……るの……?」
そんな資格を持ってもいいのかな……僕は……
「許して欲しいのはこっちの方なんだから……また君と一緒に旅をしても良い?」
「えんまも……ゆるじてもらえまずか……?」
「そんなの……あたりまえ……じゃないか……ぼくがそれをこばむわけ……ないよ……」
デリさんの顔がくしゃっと歪んだ……デリさんも泣いている……?
「良かったあ……ほんとうに……だめっていわれたらどうしようかと……うあああああああああん!!」
号泣は連鎖して……3人分の泣き声はしばらく続いた。




