底に沈む花
「燕間さん。地面から切り離して!!」
「分かりました……まぼろしさんがやれと言うのなら……えんまは……!!」
羽が高速で動いている……なにかの予備動作……? 刀を横に寝かせて……身を沈めたみたいだけど……どうやって斬るんだろう……?
「すぅ……はぁ……地走り!!」
燕間さんが消えた……!?
「よく見て、燕間はもう君のお願いを叶えたよ」
え? デリさん?
「あっちだよ」
燕間さんはもう斬りぬけている……!? 抜けてるってことは肉塊はもう……切り離されてるのか!?
「浮いてる……ってことは……もう治らないはず……燕間さん……中心以外の肉をそぎ落として!!」
「空中は蜻蛉の領域……やってみせます!!」
うっそ……あんな遠くにいたの急停止してまた向かってくる!? UターンどころかIターンができるの!? 一体どんな飛行性能をしているんだ……
「まぼろしさん……これはあなたが取り戻してくれた羽なんですよ」
長い刃が煌めく……きれいだなあ……
「はああああああああああああああああ!!!!!」
目にもとまらないっていうのはこういう事を言うんだろう……肉が少しずつ確実に削がれていってる……これで中の人も助けられる……!!
『坊!! あの肉塊に手を出したらアカン!! あれの中には手の付けられない古代の化けもんが封じられているって姐さんが言うてはった!!』
え? 手の付けられない化けもんがあの中に……?
「燕間さん!! ちょっと待って!!」
「え?」
ダメだ、もうほとんど残っていない……中の人まであと少し……あの中にそんなものが入っているとしたら……封印は破られてしまう!?
『アアアァアアアアアアアアァアアアアアアアアアアア!!!!!』
「っ!?」
耳をつんざくような大きな音が肉塊から響いた……!? 耳から手を離すことができない……なんて音だ……!!
「くっ……これは……!?」
「あああ……!?」
そうか……2人は僕よりも感覚が鋭い……僕よりも音によるダメージが大きいのか……!! 今一番ダメージが軽いのは僕だ……僕が動かないと……!!
「でも……どうしたら……あつっ!?」
腕が……熱い!? 鱗みたいな腕の方が熱を持っているのか……!?
「耳が焼ける……!! でも……この腕で……なにができる……?」
よく分からない腕でいったいどうすれば……この状況を打開できる……考えろ……考えろ……何か……なにかできるはずなんだ……!!
「なにも……できない……?」
ダメだ……僕はなにも知らない……僕の事も……肉塊の中のことも……それでいったい何ができるっていうんだ……ただ突っ立っているだけしかできないじゃないか……
「それ……でも……!!」
諦めちゃいけない……僕は……こんなこところで……死ねない……んだから!!
「やああああああああああああああ!!!」
なんでもいい……土塊でも……石でも……投げつけてやれ……できることをやれるだけやってやれ……!!
「ダメ……なの……か……やっぱり……!?」
全く効果があるようには思えない……声は止まないし……助けも……
『ふうん……うるさいなあ……やっぱり時間でもあのお化けはどうにもできないんやなあ……それじゃあ……死のうか?』
『なんやもう……けったいな鳴き声あげよってからに……結局のところ土に還した方が良かったみたいや』
『シカタナイ、ジヒハアタエタ、アトハモウスルコトハナイ』
『仕方ないだ……やるしかないだな……』
あれは……偉い人たち……だよね……? どうしてこんなところに……?
『悪かったなあ……坊がアレに手を出すなんて思ってなかったからなあ……まさか起こすなんてなあ……まあちょうど良いかもしれんし……気にせんといてな』
すごい……すごく大きい根っこが肉塊を縛り上げた……あれを操っているみたいだ……あんな力が僕にあればなあ……
『たたき壊したるわ……去ねや!!』
縛り上げられた肉塊を土竜みたいな人がスコップらしきものを叩きつけた……ここまで衝撃が伝わってくる……とんでもない威力なんだろう……
『セメテイナクナルトキハ、スミヤカニ』
殴られた場所からカビのようなものが広がっていく、すごい速さだ……こんな速さで広がる菌類なんてないからきっとあそこのキノコっぽい人の力なんだ……きっと命を吸っている違いない……
『終わりだど』
え……蚯蚓の人ってあんなに大きかったっけ……!? それに持ってるのはどでかい岩!?
『ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!』
ぷちっという音が聞こえてくるほどに見事に岩の下敷きになった……
「僕は……なにもできなかったなあ……」
『そんなことないですわ。わたくしは救われました』
え?
『肉の枷というものがあるとしたら、さっき潰れたものがそれでした。あなたはわたくしを救ったのです』
誰……?




