知りたい隣人
『はーい、できたでー』
カツランさんが根っこにお盆のようなものを乗せて再登場した。
『これで大丈夫だとええんやけど……どうかな?』
そこには僕の分と思われる煮物と血でテカっている肉の薄切りのようなものがあった……あんまりと言えばあんまりな状態だ……2人はどう思うのかな……
「これなら食べられそう」
「刺身ですか、久しぶりですね」
あ、そういう感じなんだ……良かった……これで一悶着あったらどうしようかと思った……というかこれでいいんだ……
『大丈夫みたいです』
『良かったわあ、腐る前の肉はあんまり蓄えてないからこれで駄目やったらどうしようかと思ってたんよ』
腐ってからの肉の方が蓄えてあるのか……土に混ぜて養分にでもするのかな……きっとそうだよね……そうじゃなかったら……どうなんだろ……深く考えないようにしよう……ところどころカツランさんに血がついてる様な気がするのも気のせいだ……そういうことにしよう
「いただきます」
うん。美味しい……かどうかはなんとも言えないけど……ちゃんと食べられる。食べないと動けないから全部ちゃんと食べないと……
「あむ……」
うわあ……デリさんの口ってちゃんと見てなかったけど……すっごい危険な形してる……ギザギザというか肉を裂く形というか……見てると怖くなってくる……ホントすごいなあ……歯って言うよりも牙って言った方が良いかもしれない……
「失礼します……ん……」
ええ……燕間さん……口ってそういう風に開くんだ……そこは虫さんの形なんだあ……ええ……ああ……顔が整っているだけに衝撃的だなあ……よく見たら顔の形が少し違うもんなあ……うわあ……すごいや……ほんとすごい……
『坊……そんなに女が食べてるところをじっと見るもんじゃないで。あんまり見つめられると食べづらいやろ?』
『あ、はい……ごめんなさい』
『ん~……謝るならそっちの2人なんやけど……気にしてないようだから良しとしましょ』
確かに口とかをじっと見るのはマナー違反だった……礼儀とかはちゃんとしないとな……最低限やらなきゃいけないとこだもんな……
「ん……ごくっ……(うわあああああ!!? 君がじっと見てる……変な食べ方してないかな……大丈夫……だよね……どこを見ているだろう……口なの? 口……は特におかしなところはなかったと思うけど……汚い食べ方とかしてないよねえ……?)」
「ふぅ……(ああ……まぼろしさんえんまの事をじっと見ていらした……味なんて分かりません……身体がポカポカしてきました……えんまの身体に興味があるのかも……言ってくださればどんなところでもお見せしますのに……えんまはいつでもお待ちしていますから……いつでもおっしゃってください……)」
なんだろう……おかしい所はないはずなのに……なんか2人からの圧が強くなったような……何か言いたいことがあるのかな……?
「あの……どうですか? 美味しいですか?」
自分でもへたくそだと思う……でも他になんて言っていいのか分からなかった……僕のコミュニケーション能力のなさを恨む……でも仕方ない……
「おいしい……けど……こんな肉は食べたことがない気がするよ……なんの肉なんだろう……」
「そうですねえ……えんまもこのような肉は経験がありません……底の肉なのでしょうが……」
何の肉なのかは僕も気になるけど……聞くの怖いなあ……大丈夫かなあ……聞かなくても良いことを聞くことになるんじゃないのかなあ……
「聞いてみます?」
「良いの? 別にしなくても……」
「大丈夫です……たぶん……」
聞いてみるならタダだし……やってみよう……
『カツランさん、この肉っていったいなんのお肉なんですか?」
『気になる? そんなに言うなら見に行こか? ここの事も知っといたほうがいいしなあ、こっちやで』
カツランさんが案内してくれるみたいだ……本当に見てもいいものなのかなあ……
「カツランさんが見せてくれるっ言ってるんですけど……行きませんか?」
「うん、良いね。君と一緒ならどこでも行くよ」
「えんまも一緒です。まぼろしさんとならどこへでも行きます」
よかった、僕1人は流石に心細いからね。
『こっちやで、早くしいな』
『はい、今行きます』
農場のような場所に連れて行ってもらえるのかなあ……地下で……農園?
『上の人がどんなもん育てとるかは知らんけどそんなに変わってるとも思わんけどなあ。見てもつまらんと思うよ』
そうだよね、地下にあってもそこまで変なものがいるわけないよね……
『ここやよ、あれがさっきでてきた肉の元やよ』
あ、大っきい空洞がある。この中で飼われて……え? なにあれ? 肉の塊が蠢いて……?
「おえええええええ……」
なんだあれなんだあれなんだあれなんだあれなんだあれなんだあれなんだあれなんだあれなんだあれなんだあれ……
『なんや、吐いてしもうたか。繊細やねえ』




