知っているかもしれない隣人
「……あ……れ……どうしてまた寝ちゃったんだろう……?」
記憶の最後のほうには朧げにカツランさんに何かされたような覚えがあるけど……それで眠っちゃったのかな……もしかしてクロロホルム的なものを嗅がされてたりして……でもあれって嘘らしいんだけど……
「くー……くー……」
「すう……すう……」
今気づいたけどデリさんと燕間さんも同じところで寝かされていた……この人たち僕のことを知っているような風だったけど……ここで目覚める前に僕は何かをしていたんだろうか……
「あ、デリさん半分くらい目が開いてる……ドライアイになっちゃうなこれじゃ……でもお魚さんに瞼なんてないからその名残なのかも……それなら変に直さないほうがいいよね……」
近くで見るとますます不思議な感じがする、どうやったらこんな風に人間は進化できるんだろう……それとも超科学のなせる遺伝子改造でこんな風になったのかな……?
「でもなあ……いくらなんでもこれは……というかSFチック超科学の産物だとしたらここにそんな風な感じが全くしないのはおかしいんだよなあ……機械の一つも見当たらないし……いったいどうなっているんだろう……?」
謎は尽きない……でも平安時代とか産業革命の時代とかから見たら僕のいた時代も訳のわからないもののオンパレードだろうからなあ……きっと理解が進めば分かることなんだろう……たぶん……
「……君ってそんなに独り言多かったんだね……」
「ひゃあ!?」
「駄目ですよデリさん、まぼろしさんが驚いているじゃないですか」
2人とも起きていたのか……すごく恥ずかしい……人に聞かれていない前提で話していたのに……うわー……すっごく恥ずかしいよ……顔が熱い……
「ふふふ、真っ赤になっちゃった。そんな顔するんだ」
「耳まで赤いですね、意外です。もっと動じずにいるものかと……」
2人はそう言ったあとにはっとしたような顔をした、何かに気づいたような良いな感じに見える……今のでなにか引っかかるところがあったのかな……?
「……つまり私たちの前ではそんな余裕も甘えも出せなかったってこと……になるよね」
「はい……今思えばまぼろしさんは常に何かに追われているような状態でしたから……張りつめてしまうのも仕方ないかと……」
まただ、まるで僕と一緒にずっと居たかのように話す。僕自身にはそんな記憶は全くないんだけど……それを2人の妄想だと切って捨てるようなこともできない……
「2人は僕のことを知っているの?」
「知ってる……けど君にそれを聞かれるようじゃ私から話せることなんて……」
「そういうところですよデリさん、打たれ弱すぎます。少しくらい強引に行くくらいでないとまぼろしさんは取り戻せません」
取り戻す……? どういうことだろう……まるで僕がここに攫われてきたみたいじゃないか……まさか……僕はここで初めて目覚めたんだ……そのはずだ……
「……ここの国は地下にあるみたいなんですけど……どうやって来たんですか? そういう道があるんですか? 地下へのエレベーターみたいな」
「えれべーたー? それは聞いたことがないけど……私たちはここまで穴を掘ってきたの」
「大変でしたね……まさかそんあ直接的な行き方を教えられるなんて思ってもみませんでした……だから強制的に休ませられたんですね」
掘ってきた? おそらくものすごーく深いところにあるだろうここに……?
「冗談……ですよね?」
「ううん、残念だけど本当なの。自力で掘ってここまで来ようとしたんだけど……途中で捕まっちゃったの」
「そこから先はまぼろしさんのご存知の通りです」
どうして……なんでそこまでするんだろう……僕はこの2人に何かをしたのだろうか……そんなことをさせるほどの何かが僕と2人の間にあったのだろうか……?
「なんでそんなことを……? 無駄足になるかもしれなかったのに……」
「え?」
「は?」
鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしている……なにかとんでもない質問でもしてしまったに違いない……もしかしたらすごく失礼だったのかも……
「いや、忘れてください……」
手がひんやりとした。デリさんに手を握られている……なんだろう懐かしいような……そんな気がする………どうしてだろう……
「忘れないよ。私は君のことを忘れない。君が忘れても絶対に」
「え……?」
どうしてそんな目で僕を見るんだ……分からない……何かあるんだろうけど……なにも浮かんでこない……
「大丈夫……君はそれで良いの……今度は私達が君に刻む番だから」
怖い……身体が震える……本気だ……本気の目だ……何をしようって言うんだ……
「まぼろしさん、あなたはえんまに空をくれました。今度はえんまがまぼろしさんに羽をあげます。……答えはいりません……えんまがそうすると決めたというだけの話ですから」
燕間さんが僕の背中をなぞる……身体が動かない……まるで金縛りみたいな……
『あれまあ、随分仲良うなったみたいで良かったわあ。話はまとまったん?』
カツランさんの声は僕にとって福音だった。




