ここはどこで僕は誰
「……? 土の上?……コールドスリープは……?」
訳が分からない、僕は眠りについて……それで……どうしたんだっけ……何かあったような気もするし……何もなかったような気も……?
「うわあ? 何これ……?」
僕の腕がなんか……変になってる……?
「ちょっとかっこいい……でもこれっていったい……」
情報が全然処理できない……一体何が起こっているんだろう……月日の中で僕の居た場所は埋まってしまったとでも言うのだろうか……?
『やっと目を覚ましたんかいな、とりあえず食べ? 話はそれからや』
目を疑った、僕の目の前には球根から身体が生えたクリーチャーが居た。
『う、うわああああああああああああ!? 化物だぁああああああああ!?』
『化物ねえ? 化物とまともにお話できると思ってはります?』
言われてみれば……僕は目の前のクリーチャーと話せている……それはつまり……このクリーチャーは人間の進化形ってことになる……それだったら怖がる必要なんてない……多分植物と融合する技術でも生み出されたんだろうし……そうだそうだ……1000年だもんな……それくらい起こるさ……
『ごめんなさい……化物だなんて……失礼でした』
『随分と物わかりが良いなあ、でも素直な子は嫌いじゃないよ』
そうだそうだ……こんなに人みたいな身体をしていて人間の進化形じゃないなんてことがあるわけない、そうじゃなかったらここは僕の知らない世界ってことになっちゃうじゃないか……ないない……ここは10万年後の地球なんだから……え? 10万?
「っ!?」
頭が痛んだ……何か思い出しかけたような……覚えていないってことはどうでも良いことのはずだ……まずは目の前の人(仮定)の話を聞かないと……
『大丈夫? 身体の疲労も酷かったから起きたばっかりだと辛いやろうねえ』
身体の疲労……そりゃあ超長期間寝てたわけだから身体は飢餓状態だろう……頭の痛みはそのせいか……できれば消化に良いものでも食べたいところだけど……ここの食べ物はどんな感じなんだろう……
『ああ、上の人が何を食べるか分からなかったもんでとりあえず湖の水で根っこを煮てみたんやけど……食べられます?』
茶色の陶器のような器に乗せられていたのは大根?とか人参?のような根菜を煮込んだもののようだった。良かった……これが毒でもない限り僕にも食べられそうだ……
『大丈夫だと思います……ありがとうございます……』
……素手でいくのがここの礼儀なのかも……でもほっかほかだし……火傷しそうだなあ……
『あの……何か箸のようなものとかって……』
『ハシ? 何それ? 遠慮せんとお食べ』
箸は文明の淘汰に勝てなかったか……でもなあ……素手はちょっと抵抗が……ええい……これは食べるしかない……
『あ。分かったで……全くもう……甘えるのが下手やねえ? 食べさせて欲しいならそういえばええのに……ほら口開けてみ』
……結果オーライ?
『ほら、口開いて?』
根っこのような手で大根?を刺して差し出してくれた……なんか恥ずかしいなあ……
『は、はい……あーん』
なんだろうこの既視感……遙か太古の光景が蘇るような……何かお約束的な何かの強制力が働いてしまうような……
『あ』
『え?』
一瞬何が起こったのか分からなかった、でも僕のほっぺたはその事実を冷酷に残酷にダイレクトに僕の脳に叩きつけた。
「あっちゃああああああ!?」
『ああっ!? 堪忍な!? わざとやないよ!?』
なんだろう……吸い込まれるように僕のほっぺたに大根?が直撃した……なにか偉大な力が働いたのは分かるけど……いくら何でも寝起きでこれは辛い……涙が出てきた……
「ええ!?」
涙で霞む筈の視界はなぜかすごくくっきりとしていて……それどころか……なんかオーラみたいなものまで見えていた……何これ?
『泣かんといてえな……坊は散々苦労してきたんやから……ここでは笑っとき』
『ぼう……?』
僕のことだろうか……僕にはれっきとした……あれ? れっきとした名前が……あったはず……なのに……思い出せない……これもコールドスリープの影響してるのかな?
『ああ、あんたの事どう呼んだらいいか分からなかったさかい。坊って呼んでるんやけど……嫌やった?』
『いえ……大丈夫です……そのままで……それでここは?』
どう見ても地下っぽいんだけど……シェルターのようなものの名残だったりするのかな?
『ああ、そこから話さないかんよね? ここは底や、上の獄から逃げてきた者の楽園よ』
『楽園……?』
らくえん? 地下が? よっぽど地上の汚染が酷くなってしまったのかな? だから地下で生きられる身体になる必要があったとか……?
『正式な名前は……えっと……なんやったかな……ここまで出てるんやけど……あ、そうやそうや底の国「地下楽園」やったな』
かなん……カナン!? 箸はなくなってもそういう名前は残るんだ……宗教の力ってすごい……
『それで……僕はどうしてここに……?』
『そんなことええの、坊はゆっくり休んで甘えとき』
どうしてこんなに良くしてくれるんだろう……何か裏があるようにしか思えない……気を抜かないようにしよう……
『疲れてきたんとちゃう? そこでまた寝てもええよ?』
起こした身体を横にされてしまった……すると不思議なもので睡魔が襲ってくる……
『寝るまで横にいるから……安心して眠りや』




