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10万年後の地下事情

『こっちか?』

『はい、見覚えのある景色になってきました』

 パクさんに乗せられて僕は虫さんの国への帰路についている、それはいいんだけど……どうやったらくがねさんとかフミさんのいる場所に戻れるのかが分からない……

『どうしようっかなあ……』

『名無どした?』

『ううん……なんでもない』

 そもそもあそこに行けるの術者っていう人たちだけっぽいんだよなあ……宗茂さんは別の術者の人に送って貰ったんだろうなあ……

『(やっと帰ってきやがったな!! 早く来い!! 時間をかけるだけ事態はまずくなるぞこの野郎!!)』

「うわああ!?」

 頭に直接!? て、テレパシーだあ!?

『敵か!?』

『違うよ、少し驚いただけ……』

 くがねさんの声だよね……事態がまずくなるって一体……何が起こっているんだ……

『(話は後だ、とりあえずお前を引き込むからな)』

 ということは……パクさんとはここでお別れになるんだな……

『パクさん、ありがとう。迎えが来たみたいだ』

『え? 随分と急ネ』

『お世話になりました』

『ちょっと待つネ!!』

 身体の周りに霧のようなものが出始めた、きっとコレに覆われたとき僕は移動するんだろう。

『名無、また……!!』

 言葉を最後まで聞くことなく僕の視界は変わった。

『パクさんは何を言おうとしていたんだろうな……最後まで聞ければ良かったのに……』

『よう……おかえり……』

 くがねさん!? どうしてそんなにやつれて……!?

『おお……帰ってきたのじゃ……であれば……あれらを止めるのは……任せたのじゃ……がくっ……』

 フミさんまで……一体僕がいない間に何が……!?

「逃げても無駄……どこまでも追えるの忘れたの?」

「フフフ……ダメデスヨ……エンマハマダ、マンゾクシテイマセンカラ」

 デリさんと燕間さん……だよね……でもどうしてあんなにボロボロなんだ……ここはそんなに過酷な場所だったのか……? とりあえず今は帰ってきたことを伝えよう。

「ただいま」

「……また、幻覚はもうたくさん」

「マボロシサンノ……マボロシダナンテ……ジョウダンンニモ、ナリマセンネ」

 え? 信じてもらえない……そんな……どうしよう……あれ?

「ここにも雨って降るんだ……」

 いきなり頬が濡れている、ここって別次元的な特殊な空間だと思っていたんだけどもしかして別の場所ってだけなのかな……

「ふん……泣くなんて……今回の幻覚は随分と手が込んでるね」

「ソンナコトデ……エンマガダマサレルト?」

 え? そうか……僕泣いてるんだ……どうしてだろう……悲しいのかな……それとも……寂しいのかな……止まらない……

「きっと……ぼくは2人を傷つけてしまったんだね……だからそんな風に……でも……僕は良いんだ……僕は……それでも」

 そうだ……僕は燕間さんを治す手段を持ってきたんだ……拒絶されても……それだけは……絶対に届ける……やってみせる。

「これだけは飲んでもらうよ……大丈夫毒なんかじゃないから……」

 ラオさんの血だ……これを飲めば燕間さんの羽は治る。それで僕と燕間さん達の関係は終わりだ、失われた信頼はもう戻らないんだ……

「何か差し出してる……」

「クスリデスカ……キヤスメニモホドガアリマスネ……イイデショウ……ドウセイミハナインデショウガ」

 受け取ってもらえた……あとは飲めば……

「ン……ズイブント……シンニセマッタ……ングッ……」

 飲んだ……!! 効果は……

「ギッ……ガ……!? カラダガ……アツイ……!?」

 身体からメキメキと音がしている……本当に大丈夫なのかな……僕みたいに身体が耐えられないなんてことはないと思うけど……

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!?」

「う……そ……羽が……生えた……違うこれも幻覚……意味がない……ただの気休め……!!」

 治った……良かった……これで……僕がやることは終わった……きっとこの2人なら大丈夫だ……僕が運命を狂わせてしまったけど……2人なら強いから……きっと生きていける……僕は去った方が良いんだ……もういい……離れてしまおう……

「違い……ます……これは……本物……羽は……戻りました……それどころか……えんまの耳が……聞こえます……潰された筈の耳が……聞こえるんです……!!」

「そんな……それじゃあ……あの幻覚は……本物の……君だったの……!?」

 大丈夫だ……僕も多少は強くなった……1人で燕間さんを治すことだってできたじゃないか……大丈夫だ……旅人だもん……さすらうよ……どこにでも行けるんだ……どこにだって……

「あれ? 何かゆらぎみたいに……見えるな……」

 涙で一杯の視界はなぜかクリアだ……それどころか今まで見えなかったものまで見えているような気さえする、たぶんあそこの揺らぎから出ることができる……そんな気がする。

「早く出よう……僕はここに居るのが……辛い……」

 出た先は永世京の外だった、フミさんが刺されたと思った場所……前来た時とは何もかも変わってしまったなあ……僕は1人になった……

「少し歩こうかな……」

 これからどうしよう……どこに向かって歩けばいいんだろう……ああ、分からない……僕はどうすれば……いいのかな……?

「あれ……前に進まない……?」

 見ると僕の足は土に足首まで埋まっていた……どういうことだろう……アリジゴクの人にでも捕まってしまったのかも……

「待って!! 本当に君だと思わなくて……だから……だから……もう……おいていかないでよぉ……!!」

「まぼろしさん!! えんまは……えんまは……あなたの側でないと飛べないんです!! だから……側においてください……!!」

 ははっ……僕も二人のことを笑えないや……こんなにリアルな幻聴ってあるんだね……僕に都合の良い幻聴が……これに身を委ねたらどれだけ心地よいだろうなあ……でもこれは違う……二人は僕と分かたれたんだから……

『どうか、こちらの都合で招くことをお許しください……』

 え? 足下からの声?

「うわあああああああああああ!?」

 一気に地面に引きずりこまれた……今の僕には地面の底がお似合いだよ……ちょうど良いなあ……

 



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