10万年後の竜の腕
『どうネ名無、腕ちゃんと動くか?』
『はい、萎んじゃったけど大丈夫です』
ラオさんに傷を付けた時は大っきかったんだけど……少しずつ萎んでしまって今は前の腕とほとんど変わらない位になってしまった。それでも爪が鋭くなっていたりするので違う点は結構ある。
『良かった……名無の腕変わってしまったから動かなくなる思た……ほんとに良かったネ。まさかこんなことなると思ってなかったけど……ごめんネ……ホントに……竜にするつもり……なかたよ。信じて欲しいネ……ぐすっ……ごめんネ……』
『泣かないでください、結果として僕はラオさんの血を手に入れることができました。驚いたけど僕の為にやってくれたことですから。パクさんの血と肉がなければ僕は死んでいましたし……』
そのせいか、パクさんのことが前よりも身近に感じるっていうか……親しみを感じる? なんでだろう、何か関係があるのかな……?
『名無優しいネ、きっといい男になる』
『そんな悠長なこと言ってて良いのかい? 多分だがこいつの連れは女だ、短い命だからさっさとくっついてしまうかもしれないよ?』
ラオさんが後ろから茶化しながら出てきた。そういえばラオさんにちゃんとお礼を言っていないような……言わなきゃ。きっとラオさんの仕上げがなければ僕はこんな風に安定していないんだろうし。
『ラオさんありがとうございました。何から何まで……』
『いいってことさ、パクがあんなことしちまったからには何かお詫びをしたいくらいさね』
そんなものまで貰ったら罰があたってしまう、十分に僕は得ることができた。神様からあげたいって言ってるから当てられることはないと思うけども……
『腕はもう良いと思うが……ふむ。少しばかり癒着が甘いね、もっと固定しないと暴走するかも……』
『ぼ、暴走ですか……』
前みたいに勝手に動いたりしてしまうのだろうか……それは困る……ラオさんに傷を付けられるような腕が暴れたら近くの人を傷つけてしまう……
『だから……まあ。役得だと思って契約しときなパク』
『そ、そんな!? 名無からこれ以上何か奪えない!? そんなことしたら……もう合わせる顔ないネ……これ以上嫌われたくないよ』
『何言ってんだい……竜は強欲なんだ。欲しいものに印付けるくらいやりな』
契約? それはアバ姉さんとかモルト母さんと同じになるってことかな……?
『でも……』
『良いからやりな、そうじゃないと力に耐えきれずにこいつが破裂しても知らないよ?』
え? 暴走ってそんな風になるの!?
『パクさん僕からもお願いします!!』
いきなり内側から爆散するなんていやだ!!
『名無まで……それじゃあ……』
パクさんが近づいて来た、いつもの流れだとここから僕はどこかしらを神様に持っていかれるんだけど……今回は腕がもう変わってしまっているからどうなるんだろう……
『名無の身体にもう私の血と肉が入ってるから……代価はもう良いネ。でも何か貰わないといけないから……少しだけ貰うネ』
ヌルリとした……え? 顔を舐められた? もしかして目とか鼻を持っていくの!?
『ちょっとしょっぱいネ、でもこれで良い』
汗? いや涙だ……涙の跡を舐められたのか……なんだか恥ずかしいなあ……確かに痛いし熱いし寒いしで涙が出てきたのはあるけど……
『我が血に誓って命ずるネ、我が血肉と涙を供物として名無に竜の抱擁を。私が命じるネ、我が同胞に安寧を。白暴竜の名において命じるネ、名無と私の間に血脈の契りを』
腕が……温かい……熱ではなくて内側からじんわりと感じる温かさ……太陽で温められているかのような……
『これで終わりネ、名無の腕と涙は私のものになってしまったよ……本当に良かったの?』
『ありがとうございます、パクさん。これで僕は安心して帰れます』
爆散する可能性はなくなったってことだよね?
『本当に……帰ってしまうか? もうここには来てくれないか?』
服の裾を掴まれた……まるで帰って欲しくなさそうな感じだ……気のせいかな?
『くくく……パクはお前にご執心みたいだねえ。こいつが神域の方に来てからしばらく経つからねえ……その間同族にもあってないしで寂しかったのかね』
『でも……僕は帰らなくちゃ……』
『分かってるネ……私も蓬莱山からは出られない……だから……これも持っていって欲しいネ』
パクさんの手にあるのは練習したけど使うことのなかったスリングと牙だった。
『うん、分かったよ。大事にする』
『ありがとう、できればまた会いに来てくれたら嬉しいネ』
『終わったかい? じゃあ用が終わった後はとっとと失せな。なに……その腕がある限りここに来るのに困ったりはしないだろうさ』
この腕が通行手形になるのかな……?
『どこから来たんだい。送ってやろうじゃないか』
『えっと……虫の人の国から来ました』
確か芦原の国って言ってたような気がするけど……どうだったかな……?
『ああ、そっちから来たのかい……それじゃあまだ移動範囲内だ。パクに乗っていけばいいさ』
『ラオ……良いの?』
『問題ないさ、まだ薄いうちに動いておきな』
パクさんの背中に乗って変えることになりそうです。デリさんと燕間さんは元気にやっているだろうか……
おや……デリと燕間のようすが……




