10万年後の親心
『おいこら……愚弟に勝手に手を出してんじゃねえヨ』
『海から遠い……が……わが子の為ならば無理を通そうではないか』
アバ姉さん……モルト母さん……どうして……?
『ほほう……確かにここはあたしの神域だが、姿まで現すとは随分必死だね?』
『うるせえよババア、他人のもんを断りもなく取っていいなんて思ってんじゃねえよナ?』
『アバドンまでわが子と繋がっているとは思いもしなかったが……言いたいことは一緒だ。勝手なことをやめてもらうぞ』
僕のために……来てくれた……?
『面倒なことしやがって……龍化なんてしたら原型残んねえだろうが……今から食い止めさせてもらうが構わねえよナ?』
『事は一刻を争う。始めさせてもらう』
『できるものならやってみるといい、神2体がかりなら何とかなるかもしれないねえ』
腕と胸が一気に熱を持ち始めた……熱い……!?
「うああああああああああああ!?」
今の僕がどれくらい竜になっているかは分からない……でもこの熱の分だけ僕の体が変わってしまっていると言うのなら……きっとこれに耐えられなければ僕は戻れないんだ……
『気張れよ愚弟。これでお前が変わっちまったら何のために心臓をやったのか分からねえからナ』
『痛むだろうが……耐えておくれ……わが子よ』
大丈夫……耐えられる……二人が僕にために頑張ってくれるなら……いくらでも……
『おお、やるものだね。鱗が引いてきたよ、これなら半日くらいで終わるんじゃないかい?』
これを……半日か……正直気が遠くなる……けど耐えるしかないんだ……僕は帰らなきゃいけない……んだ……絶対に……!!
『まずいナ……意思力はともかくとして……身体の方がもたないぞ……治す前に愚弟が死んじまう……』
『諦めるでない……妾達の身を削れば補填できる……!!』
また……僕の身体が弱いせいで……迷惑をかけるのか……強い身体を持っていないばかりに……僕は……足を引っ張るのか……!?
『なら私の身体を使うネ!! 名無の龍化は私の血で行われたよ、きっと私の血肉なら馴染むはずネ。罪滅ぼしになるわけもないけど……』
パクさん……も……
『お前のせいじゃねえか!! じゃあ遠慮しねえぞ、根こそぎ持っていくから精々死なねえように気を付けるんだナ!!』
『そういうことなら……もらうぞ!!』
パクさんの身体を……使うって……いったい……
『ぐうううううううううう!?』
腕が勝手に……パクさんを……掴んだ……すごく苦しそうだ……
『今こいつの肉と血でお前の身体の損傷を治してる、内側から削られるようなものだから相当痛えぞ』
『それを分かってこやつも言ったのだ、治すことに専念しろ』
僕は……やっぱり……助けてもらわなきゃ生きていけないのか……
『よし……良いぞ……元凶だけあってお前の身体に合う……これならもっと早く終わる……!!』
『ああ……もう少しの辛抱だ』
一気に身体の熱が引いてきた……これは治っている……のか……な……逆に寒気がしてきた……
『なんだ……? 一気に身体が拒絶を始めた……!?』
『さっきまで順調だったのだぞ……!?』
寒い……痛い……頭も……重い……
『くそ……どんどん身体が死んでいきやがる……!!』
『なぜだ……何が悪い……!?』
目も霞んできた……ぼやけ………
『おいおい、そんなんじゃ死んでしまうよ。拒否反応があるのに無理に血肉を補おうとするもんじゃない。身体の自然な働きで追い出されちまうのさ……だから身体自体の力を使うんだよ』
ら……お……さ……
『もうパクから手を放しな、これ以上は毒にしかならないよ』
て……が……はなれ……
『ここまで来てるんならあとは放っておいてもいいくらいさ。でもまあ……やるならこれくらいかね』
いし……きが……はっきりとしてきた……
『……あとは……完全に取り去るのは負担が多いから……一部に残そうかね』
また……熱が……戻ってきた……左腕に……集まっていく……
『うん、これでいい。少し暴れるかもしれないが……とりあえずこれで固定さね』
腕に熱が移ってから一気に身体が楽になった気がする……
『あの……僕は……どうなったんでしょうか……』
『もう心配いらないさ。慣れないかもしれないけどすぐに元のように動かせるようになる』
『そうですか……っ!?』
腕が……跳ね上がった……!?
『随分とやんちゃな腕になったもんだね』
僕の腕? これが? こんなに太くて鋭い爪があるのが僕の腕……?
『だけど、あたしに血を流させたのは見事だね』
あ、ラオさんの頰に引っかき傷……
『これはお前があたしから奪ったもんだ。好きに使うといい』
流れ出る血を陶器っぽい瓶に詰めてくれた、これを持ち帰れば……
『これを飲ませれば羽が治るんですね……!?』
『ああ。おめでとう、お前の待たせてる人は治るよ』




