10万年後の恐ろしい竜 4
顔に息が当たる。不思議といい匂いがする……香木のような……
『……少々不恰好だが、汝の善性は証明された。自らを善だと言い張るものほど手に負えぬ……汝は自らを信じられないと申した……それでいい……それでいいのだ』
えっと……?
『分からんか、合格だと言っているのだ』
『いいんですか!? 僕はその……善き者なんですか……?』
『何言ってるネ。何も悪いことできないのにそれでも自分は悪いかもなんて言うの善い奴しかいないネ』
そんな風に言ったかなあ……きっと言ったんだろうな……絞り出した感じだからもう覚えてないや。
『さて、見極めも終わったところで汝の目的を聞こうか。待たせてる人がいるとか言ったな? 何を求めてここまで来たのだ?』
そうだ、僕はここに燕間さんの羽を治す術を手に入れに来たんだ。
『実は身体の一部を失った人がいるんです……それを治す方法を教えてもらいに来ました』
『そんなものはない、失われたものは失われたままだ』
『っ!?』
そんな……それじゃあ燕間さんはずっと……
『が、例外というのはあるものでな。何を失ったかによるのだが……』
『羽です!!』
『ほう……羽のある者だったか。であれば何とかなるやもしれんな』
『本当ですか!?』
良かった……良かったあ……これで燕間さんを置いて行かずに済む……!!
『ああ……だがそれが成るかは汝次第だ』
『なんでもします!!』
きっとどんなことだってやってみせる……それで燕間さんの羽が治るなら……
『だがなあ……いや行って聞いた方が早い……ラオの元へ行くが良い。そうすれば何をせねばならぬのか教えてもらえるだろう』
『らお……さんですか……その人は今何処に?』
『私知ってるネ。連れてってあげる』
パクさんが胸を張って言ってくれた、頼りっぱなしだけど今はそれに甘えるしかない……恩返しがいつかできれば良いなあ……
『ならば心配はないな……汝が目的を果たすことを祈っている』
『はい……ありがとうございます!!』
『じゃあ行くネ。ラオの住処は遠いから日が暮れてしまう』
パクさんが僕の手を引く、ちょっとカサカサしていて爪が鋭いのを見るとやっぱり爬虫類系なのかな、鳥とのハイブリッドみたいなものなのかも……
『さあ出発ネ!!』
ティラノサウルス状態になったパクさんの背に乗って飛び上がった。思ったよりも助走がいらないようですぐに身体が宙に浮いたので身体は思った以上にスカスカなんだと思う。その割にものすごく力が強そうなのは不思議だ……
『少し空気薄い、気をつけて』
『はいっ!!』
気をつけろと言われても、僕にできることはほとんどない。頂上の見えない山肌に沿ってどんどん上がっていくのに合わせて頭痛や息苦しさを覚えた。
『うぐ……!?』
『大丈夫? 戻るか?』
こんな所で戻ってたら燕間さんを治すなんてできない……これくらい……平気だ!!
『大丈夫……です』
『そう、ならこのまま一気に行くネ』
一層の加速に合わせて僕の頭痛はひどくなり、加えて吐き気や目の奥の痛みまで出てきた。
『もうすぐ、頑張るネ!!』
『は……い……』
意識が朦朧とし始めた時にパクさんの身体が上昇を止めた。
『見えたよ、あれが薬師のラオの住処ネ』
『あ……れが?』
雲に囲まれた山頂にポツンと建っている山小屋のようなもの……あれが燕間さんを助けられる人がいる場所……
『行くよ、ラオなら名無のも治してくれるネ』
『そう……だといいんですけど……』
パクさんが人型に戻って山小屋の扉を叩き始めた
『おーい!! ラーオー!! お客さんだよお!! おーきーてー!!』
『やかましいわ!! お前の声は鼓膜を破る威力があると何度言えば分かる!!』
怒鳴りながら出てきたのはパクさんと似たような形の白い服を着た人だった、心なしか尻尾と角がとても龍っぽいような……
『パク……あれなんだ』
『ラオに用があるっていう人、ここまで連れてきた』
『っんの……馬鹿!!』
罵声と一緒にパクさんの頭をラオさんが思い切り叩いた。すごい音……
『ただの人型を!! ここまで一気に持ってきたら!! 下手したら死ぬんだよ!! 空気の圧と身体の関係とか空気の濃さと肺の関係とか色々あるんだよ!! 見るからに死にそうな顔してるだろうが!! お前は病人作りに来たのか!!」
『そんなこと言ったって名無はすぐにここに来たそうにしてたネ』
『んなことぁどうでもいい。あたしがやるのは治す事さ』
ラオさんが僕に近づいてきた……お願いしなきゃ……燕間さんの羽を……
『無理に喋らなくていい、症状は大体知ってる』
何か粉薬のようなものを流し込まれた、驚くほどきめ細やかそれはすぐに溶けていった。
『それで一回寝な、起きた頃には良くなってるさ』
眠い……目を開けていられ……な……い
『おやすみ』




