10万年後のサプライズパーティ 8
身体のあちこちに鈍痛を感じる……きっと殴られたとこ以外にも色々とガタが来ていたんだろうな。
「いてて……あれ……?」
ここはどこだろう……古民家のような気もするし……でも見たことのないものも多い……
『起きやがったな? お前がぶっ飛んでから大変だったぞ……マジで』
『くがねさん……デリさんと燕間さんはどこに……?』
見たところいないみたいだけど、どこかで寝ているのかな?
『それがな……死んだぞ』
『え?』
クガネサンハイマナニヲイッタンダロウボクニハワカラナイ
『実は毒を盛られてたみたいでな……気付いた時にはもう……』
『……』
オトガシテイルノハワカルデモイミガワカラナイ
『手は尽くしたんだが……』
クガネサンハサッキカラナニヲ……?
『悪趣味なことをするでない!!』
『あいたっ!?』
『あれを見ろ! ガラス玉のような瞳になっているではないか……言っていい事と悪いことがあるじゃろ!!』
エンマサントデリサンハ……もういない……?
『ただのお茶目だっつの……嘘だよ。向こうの部屋で泣き疲れて寝てる』
『くがねさん……一発殴りますね』
僕の渾身の力を込めて殴る、狙いは顔面ど真ん中……仮面ごと割ってやる……僕が受けた衝撃の半分でも味わえばいいんだ……
「やあああああああああああああ!!!」
『うっそだろ……』
完璧に決まった……
『人間ってここまで脆弱だったか……?』
僕の手から激しい痛みが登ってくる……完全に押し負けた……ただ突っ立っているくがねさんと助走つけた僕の拳の対決さえくがねさんに軍配が上がってしまったのか……悔しい……
「いったあ……!!」
そしてすごく痛い……モルト母さんの腕で殴ったらそんなことないのかもしれないけどこれは僕の拳でやりたかった……
『殴られても仕方ないことをしたのじゃ、それは分かったじゃろ』
『ああ……すまん……イタズラで言うようなことじゃなかったな』
強くなったら改めてくがねさんは殴ろう……絶対忘れないからな……
『お主が寝ている間に呪の施しは済んだ。これでお主は不問とする。これからどうする気じゃ?」
どう……しよう……できれば燕間さんの羽を治す方法を知りたいところだけど……あれ? フミさんなんか言ってたような……
『あの……フミさん、腕が生えるような種族ってなんでしたっけ?』
『ん? それなら竜じゃろうな。桃源郷とか蓬莱とかにいる奴らじゃ……まさかお主……』
そのとうげんきょうとかほうらいって所に行けばもしかしたら燕間さんの羽が治るかもしれない……
『やめておいた方が良いのじゃ……あいつらの気位は山よりも高い……それにこことは言葉も違う……旅人が寄るような場所ではないのじゃ』
『それでも……可能性があるのなら……僕は行きたいと思います』
それが僕にできる最大限……やるだけのことはやるんだ……!!
『竜は排他的じゃぞ……おそらく3人で赴いても門前払いをされるはずじゃ。1人で行くことになる……その弱き身体で1人で行って無事に帰れるとは思えないのじゃ……』
『そうだぞ、殴られた側が言うのもなんだがそんなパンチしか打てない身体だと最悪握手しただけで手が潰されるかもしれねえ……それくらいお前の身体は弱い』
そんなこととっくに知っている、僕が弱いことは何度も何度も何度も痛感した。だけどこうして僕は生きている。
『大丈夫です……何とかします』
『決心は固いのじゃな……2人には何と言うつもりじゃ……あの様子だと這ってでも付いて行こうとすると思うが……』
2人を置いていくのは辛い……でも1人で行かなきゃ竜の人たちに受け入れてもらえない……それなら……
『今から行きます、2人には僕の行き先を伝えないでください……それが一番だと思います』
きっと2人も分かってくれる……はず。
『あい分かった……場所は教えよう……足も用意しよう……じゃができるのはそこまでじゃ。そこから先は何の手助けもできぬ……それでも行くというのじゃな?』
『はい……行きます』
『そうか……では餞別をやろう……』
フミさんが手をパンと鳴らすと奥から料理が次々と出てきた。虫さんの食べるものだから蜜とか木とかだと思ったらそんなことはなく普通に肉や魚、野菜が使われているようだ……10万年後の家畜がどんな感じなのか気になるけど……
『これは計画の成就を祝ってのものじゃが……お前の送別会も兼ねるのじゃ……娘達が起きる前に好きなものを食うておけ。過酷な旅になるじゃろうからな』
『すげえな……宮廷晩餐会並みじゃねえか、奮発したな』
『これでも足りぬくらいじゃよ、人生をかけた大勝負に勝ったのじゃから』
そうだった、フミさんは戦いを終えた後だった……
『おめでとうございます、フミさん』
『ん、くるしゅうない……我は最期の虫皇……史廻であるぞ!!』
『ぷっ……似合わねえよ』
『やっぱりそうか?』
フミさんとくがねさんは顔を見合わせて笑った、本当に楽しそうな心からの笑みだった。
『それではやるか……杯を持つのじゃ』
『おう』
『これ……ですか?』
白く濁った液体の入った杯を手に取る。
『うむ、乾杯』
『乾杯!!』
『か、かんぱーい!!』
2人も真似をして一気に液体を流し込む。
『うわっ!? これお酒じゃないですか!!』
『当たり前じゃろ』 『当たり前だろ』
何言ってんだお前みたいな顔で見られた……




