10万年後のサプライズパーティ 5
『やった、フミさんが勝ちました……ってあれ? 映像が……』
いきなり鏡の映像がぶれだした、あっちで何かあったのかも……
『あっちで何かあったんですかくがね……さん』
『くっそ……裏切り者……が……!!』
え? くがねさんから血が……でも宗茂さんはもう……じゃあ誰が……裏切り者……?
『いえ、そういうわけではないのです。もとより四守は虫皇様の下僕だったというだけの話です』
器頭……さん? 手に持った血のついた刃物は……?
『ば……かやろう……早く逃げろ……』
『ああ、そこの人なら逃げてもいいですよ。戦力になりそうな分はもう潰しておきましたから』
戦力になりそうな分はもう……? それって……
『すみません……まぼろしさん……羽を裂かれました……えんまはもう戦えません……置いて逃げてください……』
「げほっ……げほっ……ぎ……みだげで……にげで……は……や……く」
そんな……2人とも……どうして……!?
『まだ分かりませんか? いえ、ここで逃げ出したとしてもあなたの力では生きていくことも難しいでしょうね。ではここで殺してあげるのが慈悲というものかもしれませんね?』
黒く、光を反射しない刃が僕へ向かってくる……早い……動けない……でも、どうしてこんなにスローに見える……ああ、だめだ……胸に吸い込まれて……
「あっ」
衝撃、痛みは不思議とない、ただ刃の刺さった場所がひどく熱い。触れるとなにかぬるりとした……なんだろう……赤い……そうか……これは……血だ……
「あ……ああ……あああああぁああああぁぁぁぁあ!!!!」
熱は一気に痛みへと変わった……痛い痛い……死に至る痛みってこんなにも……!!
『ふふ、無様ですね。苦しませすぎるのも可哀想ですし、息の根を速やかに止めてしまった方がいいですかね』
逃げなきゃ……逃げなきゃ……死ぬ……死にたくない……死にたくない……まだ……僕は……なにも……でも身体が動かない……痛い……怖い……
『逃げますか? その身体でどこまでいけるというのでしょう、そもそもここは術者の聖域です。本当の意味で出られる訳もないのですが』
にげ……られない……ぼくは……むりょくだ……まもられる……だけ……なにもできない……じぶんではなにも……それで……いいのか……ぼくは……それで……
「よく……ない……ぼくは……いつまでも……最期くらいは……ぼくだって……!!」
どうせこの傷なら僕は助からない……一矢報いるくらいは……できる……かもしれない……僕は侮られている……から
「げほっ……!!」
血が……口から……時間は思ったよりない……かも……どうしたらいい……
『反抗的な目になりましたか、でしたら遊びは終わりです。死になさい』
目の前にもう…刃が……ダメだ……もう……
『えぐり出してあげます。目の前で自分の心の臓腑が潰されるのを見なさい』
僕の……心臓……? その心臓は……僕の……ものじゃ……
『あなた……これは……!?』
これが……僕の心臓……どうみても臓器などではない……これはもっと……見てはいけない類の……禁忌の……
『あ~あ……なんで暴かなくていいもんをヨ、暴いちまうのかナ。入れ物に入れておけば安全なのにヨ、取り出しちまったらヨ。禍が起きちまうだろうが』
僕の口から……アバ姉さんの声……どうして……
『ふはははははははは!! 久しぶりの飯だぁ!! お前だけじゃあ足りねえかも知れねえけどヨ』
心臓が、震える、何かが、起きる、たくさんの、なにかが、生まれ出る。
『いただきます』
出てきたのは、夥しい数の、バッタ、10万年の間に人型になったはずなのに。僕が知っている形のバッタが視界を埋め尽くす。
『い、いやああああああああああああああああ!? なに……なんなのコレ……気持ち悪い……気持ち悪い……!!』
分からない……どうしてこんな……蝗害……みたいな……ことが……ぼくの心臓から……
『やめて……囓らないで……痛い……食べないで……いやぁ……』
器頭さんの身体がバッタに覆われた、きっと全身を食いちぎられているのだろう……このまま少し待てば骨も残らず食べられてしまう……僕が器頭さんを殺すのか……それは……嫌だ……なあ
『あ? おいおいこいつに殺されたんだぞ? 正気か……まあ愚弟がそういうなら瀕死くらいで済ませてやるけどヨ』
ありがとう……アバ姉さん……
『ちっ、喰った分でお前の身体を治すけどヨ。そう何度もこうやって助けてもらえると思うなヨ』
うん……分かった……もうこんなことないように……するから……
『まったく……心配させんじゃねえヨ』
身体の痛みが引いていく……本当に治っているんだ……心臓の位置の傷ももう……ない
『あ、かはっ……』
傷だらけだけど器頭さんも生きているみたいだ……良かった……
『お前……心臓になんてもん仕込んでやがる……黙示録じゃねえか……見かけによらず苦労してんだな……』
『くがね……さん、無事だったんですか……?』
血は止まっているみたいだ……顔色も大丈夫そう……
『これだけ時間があればな……こっちは片付いた……あっちも見てみねえと……どうなってる……』




