10万年後も失われたものは戻らない 7
『うそだあああ!?』
『あの……そんなに驚かれるとこっちが傷つくんですけど……』
話しかけておいてこのリアクションをするのとこんな大声出しておいてデリさんと燕間さんの反応がない……つまりこの人は普通の話し方もしくは音によるコミュニケーションを行ってないってことになるのかな。
「どうかしましたかまぼろしさん? そこの紫ローブの方がなにか?」
「ん~……多分聞こえてないけどお話してるんだと思うよ。偶に聞こえない話を君はするから」
「なんと……そんなことが……」
デリさんのフォローのおかげでこっちの話を中断せずに済みそうだ……目の前の人の動揺が激しめだからちゃんと相手しないと。
『ど……どうして……!?』
『それの説明は長くなるので割愛したいです……それで占いの話をしたいんですけど?』
『そ、そう……ものすごく気になるけど……よけいな詮索は身を滅ぼすってお祖母ちゃんが言ってたからなあ……。占いはここでもできるけど……もう始める?』
ここでもできるって……手相占いも空手とかと同じように10万年の時を超えて存続していたりするんだろうか……そうだとしたらすごいなあ……
『それで……何を占って欲しいですか?』
『実は人を探してます。術者と呼ばれる人たちに会わなければならないのに居場所が分からなくて……』
『っ!? どうしてその人達に会いたいのですか……占いの精度を上げるにはその……情報が多い方がいいので……言いたくなければ構いませんが……』
精度は少しでも上げておいたほうが良いだろうし……この人の言葉が特殊なことを考えると言ってもそんなに広がることはないと思う……
『命がかかっているんです。その人達に会って話を聞かないと僕たちは処刑されてしまう』
『ええっ!? そんなことに!?』
『はい……その人達だけが頼りなんです。なんとしても会わなくちゃ……』
そうしないと……僕だけじゃなくてデリさんも燕間さんも一緒に死んでしまう……そんなことにさせられない……絶対に……
『……そこまで言うなら……大丈夫かな……こちらへどうぞ……お仲間の方も一緒にどうぞ』
占いの人がすたすたと歩き始めてしまった、人混みのに紛れてしまったら探せなくなる……急がなくちゃ……!!
「デリさん、燕間さんついていくよ!! あの人が何かを知っているみたい!!」
「っ!? 分かりました!!」
「見失わないように気をつける!!」
するすると人の間を縫っていく占いの人が足を止めたのは建物と建物の間の薄暗い空間だった。
『よかった、ここなら見ている人もいないでしょう』
占いの人が紫色のローブを脱ぐ。
「すごい……!」
脱いだ占いのひとは同じ色の布を身体に巻き付けたような格好をしていた、顔には仮面がついているからよく分からないけど何より目を引くのはその羽だった。
「きれい……」
薄く白光する極彩色の羽はきっと蝶のものだろう、だけどこんなに幻想的な模様と配色のものなんてあったのだろうか……まるで本当の羽ではないみたいな……
『あなた望みは叶いました、占うまでもなく。あなたの言う術者とは私達のことです、なにやら切羽詰まっておいでの様子。秘された郷へとお連れします』
羽が一瞬だけ強く発光する……やっぱり10万年で生き物には発光する機能が追加されたようだ……ここまで強い光は初めてだけど……!!
『ようこそ……ここが術者の郷。比類なき霧の村、まほろばです』
目の前に広がる光景は一面の霧だった、よく見ると大きな湖のようなものが中心にあってその周りを囲むように長くつながった家があるようだ。というか……瞬間移動したの……まさかね……何かしらのトリックで一気に移動したように思ってしまっただけだよきっと。そんなことができたらまるで魔法じゃないか、いくら10万年経ったといっても物理法則まで変わるわけないし。
「こ、ここは……まさかそんな……実在するなんて」
「どうしたの? ここってそんなに危ない場所には思えないけど……」
燕間さんの驚き方がすごい、雪男とかネッシーとかそういうものを発見したような驚き方をしている。デリさんは僕と同じようにしているからきっと虫の人の間でなにかあるようだ。
「霧に包まれた村……まほろば……神隠しの舞台……おとぎ話にしか出てこないのに……」
え、なに天狗なの……僕たちは神隠しにあったの?
『随分とまあ……部外者を大勢連れてきたもんだな? そんなに重要な奴らだってのか、こっちは大変なのによお……今から奴がなんかでかいことするって言うから問題は勘弁してくれよ……』
村の奥の方からのっしのっしと歩いてきたのは蝶の男の人だった、占いの人よりも大きく複雑な羽を持っている。
『長。なんでも私達に会わなきゃ死んでしまうそうで……』
『ああん? 聞いてきたような口ぶりだなあ?』
『それが、そこの少年は私達の言葉が話せるんです……』
『はあ? そんなわけ……おいおい嘘だろ……どうして人間がここに居やがる……!?』




