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10万年後の偉い人

「なにがあったの?」

 デリさんは話が分かっていないから不思議そうな顔をしている、途中から共通語じゃなかったからしかたない。

「この子凄く偉い人みたい」

「ええ!?」

「はやく跪いてください……不敬で罰せられますよ」

 燕間さんが焦っている、こんな様子は見たことがない……本当にまずいんだ。デリさんと一緒に同じ姿勢をとらなきゃ。

『待て待てそこまで畏まらなくていい、我は皇位継承権順位もそこまで上でもない木っ端のような存在じゃからな』

『しかしそういうわけにも……』

『良い、我のことは気軽にフミとでも呼んでくれればいい』

 フミさんか……ほんとにそんな風に呼んで大丈夫なのかな……怖いなあ……やっぱり不敬だから首ちょんぱみたいにならない?

『分かりましたフミ様。しかしえんま達もここで迷ってしまった身ですので都までの案内は難しいと思いますがよろしいですか?』

『え?そうなのか?それじゃ仕方ない……奥の手をつかうとするのじゃ』

 奥の手……そんなものがあるのなら最初から使っていればここで迷うこともなかったんじゃ……それとも……なにか理由が……?

『すう……』

 あれ、大っきく息を吸って……

『たーすーけーてー!!』

 うわあ大っきな声……ていうか大きな声を出したくらいで助けが呼べる場所だったんだここ……もっと奥まった土地だと思ってた。

『あ、最初に言っておくが我は木っ端といえど皇族なのでそこそこ命を狙われていたりするのじゃ。ここで大声を出すと居場所がバレて刺客がくるかもしれんので護衛よろしくなのじゃ』

 そりゃ1人じゃこんなことはできないよね!!命の危険があるもんね!!だけど僕たちの命も一緒に危険に晒すのはやめてほしいな!!

「デリさん!!今からここに刺客が来るかもしれないから気をつけて!!」

 僕はどうすることもできないからフミさんの近くに居るくらいしかやることがない……情けないけど僕が戦闘面で邪魔にならないように避けておくくらいしかできない。

「……早速ですがまぼろしさんフミ様を抱えて離れていてください。上空から来ます」

「そうだね、結構早いよ……それにこの感じだとかなり大きい……」

 刺客が来るのが早すぎる……こんな状況でフミさんはよく生きてこられたな……僕だったら1日で死んでる自信がある。

『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!』

 目の前の林が一気につぶれた……大っきいものが落ちてきたことしか分からない……でもこのノリは感じたことがあるような……あ、村長だ……

『ご無事ですか!!皇子様ぁあああああああああああ!!!!』

 声の圧が凄い……なんかもう全身が叩かれている感じ……でも刺客の人じゃなくて良かった……これで戦う必要はなさそうだね。黒茶の鎧みたい感じで全身が包まれていてかっこいい、それに1カ所の主張のおかげで何の虫さんかは一発で分かった。あの角を見て他の虫と間違える訳がないよ。カブトムシだもん。

『きさまらああああああ!!!皇子様を放せえええええええええ!!!!!』

 あれえ!?完全に僕たちのほうが敵だと思われてる……でもよく考えたら見失った偉い人が知らない人たちと一緒にいるなんてもう疑うまでもなく助けにいくよなあ……

『ふう……この一守宗茂いちのかみむねしげの前に立って生きて帰れると思うなよ』

 待って……いきなりクールダウンしたらその瞬間に全身の毛穴から汗が噴き出してきた……さっきまでとは全く違う氷のような雰囲気を纏っている。大きな身体と厚そうな鎧をまるで重さを感じさせないのが怖い……というかこの人一守って言った……じゃあ絶対強いじゃん……

『ふむ……蜻蛉の娘にイオの娘が1人ずつ……後ろの男は論外と見た……蜻蛉は手練れだがイオは素人か……話にもならんな』

 正しい観察眼だけど……燕間さんが達人級だと分かっても話にならないってどういうこと……?

「まぼろしさん……一守様の言っていることは事実です……この人の前ではえんまなど風の前の塵とかわりません。時間稼ぎすら……」

「このまま戦いになっても君は絶対動かないで……変に動くと殺されるから……」

 このままだと皆死ぬ……のか……現実味がなさすぎてどうしたら良いのか分からない……僕はこのまま棒立ちするしかない……いや違うだろう……ここで何かできるようにならなくちゃいけないんだろう……僕は

『どうあっても貴様らは私には勝てぬ、それでも無駄に抵抗するか? それとも潔く首を差し出すか、少なくとも痛みはなく逝かせてやろう』

 がちゃりと腰にさげた太く大きな大剣のような刀を鳴らされた、本当にあれで斬られれたなら痛む前に即死するんだろうな……でも死ぬわけにはいかない……

『僕たちは……旅人です。道に迷ってここでフミさんと会いました』

『ほう……その首輪は本物か……しかしそれで貴様らの疑いは晴れぬぞ?』

 そりゃあそうだ、少なくとも話を聞いてくれることが確認できた……それだけ分かればいい……少なくとも話せるなら……どうとでも……なる……かなあ……?

『どんな戯言を吐いてもいいが、今から起こることは変わらないぞ。貴様らが死に、私が皇子様を取り戻すのはな』

 くっそ……話せてもこれじゃ聞いていないのと一緒……考えろ……どうにかして突き崩さないと……なにか気を引けるものは……

『ん?貴様……匂うな……蜜の匂いだ……しかも極上……八守の蜜か……?』



 





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