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10万年後の地図は読みにくい 2

 迷っちゃったか……森に入っていったあたりからうすうす感じてはいたんだけどね……

「ここはどの辺りなのか見当はつく?」

「ここは恐らく一守様の収める鎮守の森ではないかと……」

 鎮守の森……それっておいそれと入ったら怒られるではすまないやつではないかな

「燕間さん、鎮守の森って勝手には行っていいのものなの?」

「本来ならば神職が管理する聖域ですが、旅人ならば迷い込んでしまったと言えばお咎めなしかと」

 旅人すごい……故意じゃなければフリーパスみたいなものじゃないか。そうは言っても相手方の機嫌次第で首が落ちるかもだから危険も十分に背負ってるけど。

「……誰か居るよ?」

「本当ですね、こんな所に来るということは一守様の直轄の者でしょうか」

 僕には気配とかそういうものが分からないから何かいるというのが分からないけど高性能センサーを持った2人が言うんだからきっと居るんだろう。

「あっちに人らしき者がいますがどうしましょう。討ち取りますか?」

「そんなことしたらお尋ね者になっちゃうよ、攻撃は極力しない方向でお願いします……」

 燕間さんって結構血の気が多いよね。これで僕が行けって言ったらたぶん本当に討ち取りに行くんだろうし。軽率な発言には気をつけよう……

「とりあえず声をかけてみようと思うけど良い?」

 2人が頷いてくれた、良かった。ダメって言われたらどうしようかと思った。

「……とりあえず刀から手を放そうよ」

「駄目です。まぼろしさんの身体を考えると不意の一撃で即死しかねないのです」

 そんなに弱いんだ僕……いや知ってたけど……即死って……いやいや今までの常識は通用しないのは十分痛感したからね……きっと言うとおりなんだろう。

『聞こえますか!!僕は旅人です!!できれば姿を見せてくれませんか!!』

 なんか刺客をあぶり出すみたいになってしまった、もしかしなくても失礼かもしれない。さっき気をつけようって思ったばっかりなのにやってしまった……猛省。

『分かった……分かったから刀から手を放して欲しいのじゃ……見ればそっちのは蜻蛉じゃろう?そんな戦闘特化が武器に手をかけてたら怖くて出て行けぬ』

「燕間さん……お願い」

「分かりました、くれぐれも気をつけて」

 燕間さんが刀から手を放した、その代わりに地面に突き刺したので抜こうと思えばいつでも抜ける状態であることに変わりはない。

『馬鹿め!!かかったな!!』

 僕の目掛けて僕よりも小さい身体の何かが突進してきた、もちろん僕には反応なんてできない。かろうじて何かが来ているということが分かっただけだ。その時僕にできるのはお願いだけだった。

「殺しちゃダメ!!」

 ピタリと燕間さんとデリさんの動きが止まる。危なかった既に燕間さんの手は首に掛かっていたしデリさんも深く息を吸ってためていたから何かしらの攻撃をするつもりだったのは明白だ。

「しかしまぼろしさん。子どもとはいえ命を狙ってきたのですよ。殺される覚悟もあってのことだと思いますが」

「そうだよ、初対面の相手の命を狙うような外道は内側から弾けても文句は言えないんだよ?」

 いやいや物騒が過ぎる。それとも弱肉強食の世界の価値観に寄っているのかな……一歩外に出たら殺るか殺られるかの世界なの……10万年後は危険だなあ……僕もそれに慣れてしまうのだろうか……

『ち、ちがう、殺さないで……ちょっと優位に立ちたかっただけなのじゃ……だからやめて欲しいのじゃ……』

 燕間さんに吊られている少年は独特な衣装を着ていた、狩衣っていうんだっけ。そんな平安貴族が着ていそうな服に烏帽子みたいなものを乗っけている。小さいけど緑色の羽がついているけどこれだけだと何の虫さんなのかよく分からない……

『ほら、やめてあげて。たぶん力の差は十分すぎるほどに分かったみたいだし。燕間さんとデリさんをかいくぐれるとも思えないよ』

「分かりました」

『ほっ……お主良い奴だな、褒めてつかわすぞ。話には聞いていたが蜻蛉とはここまで恐ろしかったのじゃな』

 カタカタと震えてしまっている、強がってはいても相当に怖かったようだ。そりゃあ殺意を正面から2人分浴びたら誰だってそうなるよ。

『大丈夫?もうこんなことしちゃダメだよ』

 手を握ってあげたら落ち着くだろうか、ここでもセクハラ問題で訴えられたりするんだろうか。だとしてもこのまま放っておくわけにもいかないし。

『お主ぬくいのう、まるで同胞ではないような……あれ……あっちはイオの者じゃし……こっちは……なんじゃお主、なんで我らと同じ言の葉を紡げる?』

 何度かされた質問だからどう答えればここの人が納得してくれるかは分かっている。

『先祖に虫の人がいるから』

『なるほど……先祖返りか……そんなこともあるんじゃなあ』

 センゾガエリってなんだろう……でも納得はしてくれたようで良かった。

『しかし旅人か……これは好都合じゃな……依頼があるのじゃが良いかの?』

『依頼?内容によるけど……』

『なに、この国の都へと連れて行ってくれれば良い。報酬は弾むぞ、これを見せれば信用してもらえると思うのじゃ』

 少年が懐から出したのは黒色のケースだった。なんだろう財布かな?

『そこの蜻蛉は目が見えぬようじゃから何が描いてあるか教えてやって欲しいのじゃ』

 確かに何か描いてあるけど……金色で羽かな……?

『黒の四角い箱に金の羽が書いてあるんだけど燕間さん知ってる?』

『金の……羽……!?』

 なんだ!?燕間さんが膝をついてしまった。なになに偉い人なの!?

『ここに居るのは虫皇様の血族の方です……皇族の方になんという無礼を……どうか私の首だけで話を収めていただけないでしょうか……』




 

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