10万年後の地図は読みにくい
「終わったよ!!」
良かった、途中なんだか怖い顔をしていたから喧嘩でもしているのかと思ったけど特にそんなことはなかったようだ。
「はい、言葉を教えていただきました」
「すごい!!さっきまで片言だったのにもう違和感がない!!」
口が動いていないのが違和感と言えば違和感だけど完璧な発音のように思える、すごいなあこんな早くマスターするなんて……あれ?
「もしかして燕間さんがいれば僕は要らない……?」
「何言ってるの。君が居ないんだったら私は旅なんてしてないよ」
「そうですよ、えんまの言葉はあくまで模倣。それが正しいか判断していただけなければとても使えたものではありません。まぼろしさんには及びません」
なんかフォローされてしまった……みんな優しいなあ。
『さて、話はまとまったのか。であればそろそろ報告をもらいたいものだ』
しまった、蜜千代をほったらかしにしてしまった。
『燕間さんは僕たち一緒に行きます。お手数おかけしました』
『そうかそうか、ならばよい。旅人を長々と引き留めてしまったな、いつまでも空中にいては落ち着くまい。疾く地上に降ろさせよう』
あ、そういえばこの辺りのこと何も分からないや。できれば蜜千代さんから何か情報が欲しい。
『あの、ここから近い場所に寄れるような場所はありませんか?』
『ん?なんだ次の目的地を決めておらなんだか。待てよ……一応聞いて置くがここがどこだか分かっているか?』
正直なにも分かっていないのが正しい。ここが蜂さんの国で燕間さんのところが蜻蛉の国だってことくらいしか分かっていない。
『いえ、分からないです』
『であろうなあ……そも同族でもないのにここに来ること自体希有なものだから致し方ない。本来は外の者に見せるものでもないのだが……』
蜜千代さんが首のモコモコからなにか巻物のようなものを取り出した。そこって収納スペースなのかな……
『これが地図であるが……読めるか?』
広げられているのは分かるのだけど、形とか点とかがあるのだけしか。それが地形であるようには思えない。
『読めません……』
『我らとは目が違うゆえ読めぬのだろう、燕間こちらへ』
燕間さんはそもそも読めないんじゃ……
『まさか……それは地図ですか? そんな貴重なものを……よろしいので?』
『よいよい、旅人はどこにも属さぬ者。それで我が害を受けたならば首を落とせば済むゆえな』
地図に直接触って確認しているようだ、点字のように凹凸が入っているのかな。それでも指で地図の読みなんかできるものなんだ……
「むう、私だって声が届く範囲なら分かるもん……」
あ、デリさんがむくれている。なんだろうちょっと可愛い。
「デリさんはいつも頼りにしてるよ、でも得意なことは違うからできるところは任せた方が良いと思うんだ」
「分かってるよぉ……」
それにしても他の所でもその場所の人でしか分からないようなものが多いのかな……そうだったら現地の人を頼っていった方が良いな。
『分かりました。ありがとうございます蜜姫様』
『うむ、息災でな』
燕間さんが戻ってきた。心なしか複眼がキラキラしているような……
「次の目的地は都です!!」
みやこ……ミヤコ……都かな?一番大っきな街のことでいいのかな?
「虫皇様の収める永世京ですよ!! 知らないんですか!?」
知らないとは言いにくい……でも知らないものは知らないし……エイゼイキョウもなんだか想像もつかないなあ。
「知らないよ、私たちはここの人じゃないんだから」
「……!?」
絶句してしまった。まさかそんなことも知らないのという顔をしている。仕方ないじゃないか……ミコ様もよく知らないし。
「虫皇様はこの国全体を収めている一番偉い人です。この国は一守から八守まで虫皇様に任命されて土地を収めるのです!!」
すごいなあ、それじゃあ本当に一番偉い人じゃないか。
「そこに行けるだなんて夢みたいな話なんです、一生に一度は行ってみたい場所として有名なんですよ!!」
出雲みたいな感覚なのかな? もしかしたら宗教的な色が強い場所かも、そうなったらより一層言動には気をつけないと……
「とりあえずそこにはどうやって行ったらいいの?」
「ばっちりです。えんまにお任せください。まぼろしさんを永世京へとお連れいたします!!」
なんか燕間さんのテンションが異常に高いなあ、こういうときにはだいたい失敗するものだけど大丈夫かなぁ……
「さあ、地上に降りたらすぐに出発しますよ!!」
蜂さんに地上に降ろされた後に燕間さんは張り切って僕たち先導し始めた。本当に自信満々だったので僕もデリさんもここまで言うのなら大丈夫なのだろうと高をくくっていた。
「……まことに申し上げにくいのですが……」
「うん、うすうす感じていたからそれ以上言わなくても分かってるよ」
「迷ったね」
「申し訳ございませ~~~ん!!!」
空中で行う土下座というものがあることを僕は初めて知った。




