10万年後の女の友情は怖い
『……断るか、この場面でそれができるのは見上げた胆力と言う他ないな』
『あら、娘はいりませんか?』
圧力を感じる……いやそんなこと言われたって……いきなり妾とか困るし……それに僕1人で旅をしているわけでもないから勝手に同行者を増やすわけにもいかないよ。
『そう……ですか……えんまは……まぼろしさんの近くに侍ることもできないのですね……』
うう……そんな寂しそうな顔をされると困る、確かに助けたいと思ったのは本当だけどそれで一生を捧げろだなんて言うことはできないよ。
『では……人質にもなれぬ愚物はここで果てるといたします……つかの間でしたがあなたがえんまにくれた空はとても素晴らしいものでした……さようなら』
いつの間に小刀を!?それを喉元にあててる!?このままじゃ喉を搔き切ってしまう!!
『待ってください……!!』
『いや、お前にそれを止める権利はない。お前はそれを要らぬと言ったのだ、今の燕間にはお前の所有物になる以外の選択肢はないというのにな』
『……1人娘の末路が自決というのは残念だけれど……巡り合わせが悪かったのね……ふがいない母親でごめんなさい……せめて来世では幸せにね』
いやいやいや!!こんなことになるの!?判断が速すぎるし諦めも早すぎる!!潔さってこういうことじゃないと思う!!
『違うんです!!僕だけじゃ決められないんです!!僕の同行者に聞いてみないと!!』
『ほう、そういうことは早く言わんか』
『良かった、自決させずに済みそうね』
なんだろうこのはめられた感じ。手のひらの上で転がされるような……
『分かりました……えんまはその人に認められるように頑張ります』
ごめんなさいデリさん……へんなしがらみに巻き込んでしまったよ……あとで蜂蜜を多めにあげることにしよう。
『同行者っていうのはあのイオの者だな?』
『はい……』
『では、我の城にいるはずだ。戻るぞ』
あ、嫌な予感がする……これはまた高速輸送で意識と骨と内臓がぶっ飛ぶやつだ。雑に担がれているから来たときよりもダメージが大きくなる気しかしない。
『あの、蜜姫様。まぼろしさんは酷く脆いのであまり早く飛ばれると死んでしまいます』
グッジョブ燕間さん……身を以て僕の弱さを学んでくれたんだね。
『なんだそんなことか、分かっておるわ。こやつの体つきやら何やらをみればな。少しばかり息苦しいかもしれんが許せ』
僕ってそんなすぐに弱いって分かる見た目してるんだ……あれ……担がれた状態からどうするんだろう。あ、首回りのもこもこに埋められた。
『ふわふわ……すごい……』
『そうであろう、そうであろう!!なかなか使うことがないゆえ褒められると嬉しいものだな』
これならクッションになって僕への負担が少なくなるのかも……それしても嬉しそうだ。もしかして褒められることって蜜千代さんないんだろうか。
『ゆくぞ』
おお、すごい。来たときよりも確実に早いはずなのに全然辛くない……これが女王蜂の力か!!
『ぐぬぬ……蜜姫様……』
後ろについてきてる燕間さんが悔しそうな顔をしているくらいが問題かな。あっという間に城まで戻ってきてしまった。
『こやつの連れのイオの者をここに』
「やっと戻ってきた!!」
呼ばれる前にデリさんが来た、後ろに慌ててる風な蜂の人がいるから振り切って来たのか……すごい……デリさんは陸上でも普通に走れるのか……
「心配してたんだからね!!」
まずい……あの勢いが乗ったままのタックルでも食らったら僕の貧弱ボデーでは耐えられない……どうしよう……
「あれ、指どうしたの?怪我してる?」
「指?」
そういえば燕間さんに指ポキされてたなあ。怪我って言うほど怪我でもないけど……なんで分かったんだろう。
「ちょっとズレてる……何があったの?」
「ぶつけちゃったんだ……それがどうかしたの」
「嘘、そんな風じゃない。これは外からの力が加わった感じ。誰にやられたの?」
まさかエコーで内側のこと分かるのかな?
「君をさらったあの子だよね?」
あれ、おかしいな。なんだか前のダークサイドが揺り戻ってきてるような……目のハイライトが消えているような……
「黙ってるね、ここに来てから変わった心臓が跳ねてるからきっとそれで合ってるんだよね?」
心臓のこともバレてる……どれだけ精度が高いんだろう。
「待って!!僕が弱いのが悪いんだ」
「違うよ、君を傷つけた人の方が何千倍も悪い」
ダメだ、これは止まらない。話を聞いていない……聞こえてるけどそれが影響を与えることはない。
「大丈夫、一発殴ってそれでチャラにするから」
大いなる確執を生むから本当にやめて欲しい……でもそれを言っても届かない……聞いてくれる人じゃないと僕は無力だ……
『燕間さん逃げて!!今のデリさんは冷静じゃない!!』
『これが試験ですか……分かりました。受けて立ちます!!』
違うのに……もう止められない……




