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悪夢の夜にさよならを

村を出るまでのデリのお話です。

 私がおかしな人を拾ったのはやっぱり運命だったのかもしれない。君にそんなことを言ったら絶対に違うって言うんだろうけど。

 私は別に今まで虐められてきた訳でもなければ迫害を受けてきた訳でもない、だから不幸だったかと言われればそんなことは全くない。村長もダレおばさんも村のみんなも優しかった。でも、それでも私は鯨の尾を持って生まれた子だった。

 気にしなくていい、そんなものがなんだって言うんだ。そんな言葉も山ほどかけてもらって救われたような気がした。

 それでも私は夜になるたびに震えが止まらなかった、だって、他の人がどれだけ私を認めて仲間に入れてくれていても私自身が私のことを怖がっていたんだから。

 眠るたびに悪夢を見た、皆が私を見ている夢だ。その表情はみな一様で。「やっぱりそうだったのか」という顔をしていた。私はそれを遙か上から見下ろしていた、私は大きくなった身体で村から離れようとした。

 でも、それはいつも叶わない。ダレおばさんが私の尾に槍を打ち込んで楔とする、私は痛いのとショックなので絶叫する。

『痛い……いたいいたいいたい……やめてよ……ダレおばさん……私だよ……デリだよ……迷惑はかけないから……このまま遠くに行くから……だから……殺さないで……!!』

「……こうならないことを祈っていたよ……でも……そうはならなかった……それだけのことさ」

 でも、私の言葉は届かない。そもそも鯨の言葉なんて分かる人なんているはずない。だからこれから先の展開も一緒だ。

「ぬうううううああああああああ!!!!」

 私と同じかそれ以上に大きくなった村長が私を殺しにくる、その顔は悲しみに歪んでいる。それでも私を殺し損なった事なんて一度もないけれど……

『いや……やめて……いやああああああああああああああああ!!!』

 私は心臓をえぐり出される、それでいつも夢は終わる。抵抗も逃亡も許されず、ただ殺される。それが私の末路なんだと思い知らされる夢だ。

「はぁ……」

 そうして最悪の目覚めを繰り返してきた。

「やっぱり……駄目なの……?」

 そうするうちに私の夢に変化が現れた、私の夢と鯨の行動が一致するようになった。鯨が殺されるまでその夢は続いていく、だからいつも私は村長達に殺されるまでの夢を見ることになった。この村に不満なんかない……けどここには居たくない……そんな風に思うようになった。

「鯨が来るのが分かるの今回は随分と早かったなあ……」

 数日前から夢を見るようになってたから来ることは分かっていた、でもいつもはもっと遅くなってから分かるはずだ。殻持ちの人が知らせを持ってきたと分かるまでに時間がかかるから。それを君がすぐに伝えたことで準備が早まったんだね。お手柄だよ。

「……また見るんだね……」

 鯨になった私が殺される夢だ。もう慣れてしまったけど……やっぱり死ぬ感覚は好きじゃない。

「えっとね。あっちの方から3日後くらいに来るらしいよ?」

 分かっている情報を君に教えた、そうは言っても君の役割はもう終わったんだけどね。後は村長とダレおばさん達が鯨を狩って終わりだよ。

「鯨とお話しに行ってくるよ」

 驚いた、鯨と話そうとする人なんて今までいなかった。当たり前だ。

 鯨は災害に過ぎない、定期的に訪れて恵みと災禍をもたらす存在にすぎない。むしろ狩らない方が村にとって損害となるくらいだ。

「まっ……!!」

 止められなかった、いつの間にか君はびっくりするほど海と仲良くなっていたから。何があったのか分からないけど腕が海神様と一緒になってたのが関係しているんだと思う。でも神と人とのことを問いただすのはタブーだ。

「行っちゃった……まさか……ね?」

 鯨はまだとても遠い所にいる、まさか本当に鯨にたどりつけるはずもない。きっと適当なところで諦めて帰ってくるだろう。

 そう思っていた。

「どうかここから先へは行かないでください!!もっと良い場所があるはずです!!」

 目と耳を同時に疑った、鯨の夢でまさか君の姿を見るなんて。本当に鯨と話そうとするなんて。恐怖を必死に押し殺してわたしに語りかけていた。でも、わたしには対話に応じる気なんてない。目障りな小魚を殺そうとした。

 でも君は死ななかった、驚くほど早くわたしから遠ざかっていた。私には分かる、君はここで死んではいけないんだ。きっと何か運命的なものが君を生かしているんだと、つまりそれは私との……まあこれは私の勘違いだったんだけど……恥ずかしいものを見られたからこの記憶はできるだけ奥底に封じておきたい……。

「あれ?」

 そんなこんなで私は旅人の君の仲間として村を出て行くことが決まった。正直飛び上がるほど嬉しい気持ちもあったけど寂しさとか色んなものが混ざってよく分からない気持ちだった。でも1つだけはっきりすることがあった。

「夢……が……変わった……」

 私の見る夢が変わった、最初の頃見ていた夢に戻った。でも最初は一緒でも結末が違う。最後に君が現れて私の言葉を皆に伝えてくれる、それで私は救われるんだ。

「君は……きっと私が本当に鯨になっても……話そうとしてくれるんだよね」

 不思議な君はきっと私が思ってるよりもずっと凄い人なんだと思う、きっと王様にだってなれちゃうような人だと思う。

「君に選んでもらったんだから頑張らないと……」

 私は君をたまたま見つけただけの人だけど、君に必要とされるようになりたいんだ。

「とりあえず村長を止めるために塩を集めなくちゃ」

 私が要らなくなるその時まで私は君のことを全力で助けるよ。君は私の……その……あれ……だから……大事な人っていうか……弟分っていうか……その……そんな感じだから……!!

 




 


なんだかんだと30話になりました。どうかこれからもお付き合いください。

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