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10万年後の神様は公務員 2

『あ~あ、見ちまいやがった』

『あ、ああ、ああああ……これって僕……死ぬんですか……!?』

『あ?モルトパールの時にやったんじゃねえのかヨ?あれと一緒だお前の心の臓を俺への捧げ物として受け取るんだヨ』

 そういうことは早く言って欲しい、なんだかじくじくと痛み出した気もするし。というかじんわり熱いような……。

『モルトパールの奴は不器用だからそりゃあ痛かったろうが俺は違うぞ。本当に痛いのは一瞬だけだ』

 ということはこれからその一瞬が来るってことになる……!?

『ふっ』

『いぎっ!?』

 激痛と一緒にごっそりと僕から何かが引き抜かれる感じがした、いや違う。本当に抜き出されたんだ……刀の先に刺さっているのは僕の……。

『ああん?ちっちぇ心の臓腑だな。まあいい問題は大きさじゃねえしナ、それじゃあまあ』

 ああ、持ち上げた刀から僕のものがこぼれ落ちる。僕の……が。

『いただきます』

 重力に従って落ちていった先はアバドンさんの口の中。あまりにもあっさりと飲み込まれてしまった。

『なんだ、味は良いじゃねえか。それじゃあボチボチ始めるぞ』

 刀を今度は自分の方へと向けて……突き刺した……!?

『いちいち驚くなヨ。これが血の契約なんだからナ』

 アバドンさんの傷から流れ出た血は僕の身体へと流れ込む。

『我が血において命ずる、供物の心を代価とし、こいつに血の祝福を、俺が命じる、俺の弟にくたばるまでのお節介を、アバドンの名において命じる、こいつと俺に切れない誓いを』

 身体がザワザワと何かに集られているような感じがする……これって大丈夫かな……実は食べられてたりして……。

『他の場所は食わねえから心配そうな顔すんナ』

 ばれてた……流石に神様は勘も良い。

『胸触ってみろ、穴なんかもうねえから』

 言われたとおりに触ってみると確かに傷1つない、本当に不思議だ。確かにえぐり出された感覚はあったのに元通りだもんな。

『そうそう、モルトパールのと違って目に見えない変化だから言っておくけどヨ。お前の心の臓は俺の与えたものにすり替わったからナ。前の奴よりは頑丈になったがそいつ自体の強度はそこまでねえから気をつけろヨ。その代わりって言っちゃ何だがその心臓がある限り首が落ちでもしなきゃお前はそうそう死ななくなったぞ』

『は?』

 心臓が無事なら死なないっていうのはあまりにも当たり前じゃないだろうか、だって心臓止まったら死ぬし。

『姉貴に向かってそんな言葉遣いしていいと思ってんのかヨ?』

 胸ぐらを掴まれて吊られてしまった。しまった……さっきよりも遠慮がない……これはデコピンで済まないかもしれない……。

『ごめんなさいアバドンさん!!』

『姉貴だって言ってんだろうが!!姉貴にさん付けする弟がどこにいやがんだヨ』

 ええ……そういうことなの……ちょっと神様のキレるポイントが分からない……。

『えっと……アバ姉さん……?』

『なんだ愚弟、漸く俺のことを姉貴と認識したナ』

 あ、愚弟ですか。別に神様基準で考えたら僕は愚かだけどさ……。

『下ろして……?』

『いいだろう、愚弟の頼みは聞くものだしナ』

 素直に下ろしてくれた……良かった……許してもらえたようだ。

『あの、心臓が無事なら大丈夫ってどういうことですか……?』

『そのまんまの意味だヨ、お前の腕がもげようがはらわたが零れようが心臓が無事ならお前は生き延びることができる……つうのは少し言い過ぎだナ……精々怪我の治りが早くなったのと身体の生命力が拡張されたくれたくらいに思え。きっとお前はその方が良い』

 結局、最初の言葉通り死に難くしてくれたってこと……?

『ま、虫の心臓なんか要らねえって言うんなら。愚弟が泣いて返してくださいって言えば心臓返してやっても良いけどナ』

 そんな……そんなことって……なんてこった……こんなことってあるのか……!!

『アバねえさん!!』

『うわっぷ……!?なんだお前いきなり飛びかかってくるんじゃねえヨ。そんなに嫌なのか……お前も俺のこと気持ち悪いっていうのかヨ……なんだ……おまえも……他の奴らと一緒……なのかヨ……』

 なんかぶつぶつ言ってるけど、どうでもいい。とりあえず今はこの気持ちをぶつける方が先だ!!

『ありがとうっ!!』

『は?』

『まさか本当に死にたくないっていう願いを叶えてくれるなんて……凄いよアバ姉さん!!』

『おま……虫の心臓……だぞ……嫌だろ……だっておまえ……』

 虫の心臓大いに結構、生きられない心臓なんて僕はいらない。どうせ10万年も僕の中にあったんだからそろそろ休ませてあげた方が良いよ。

『ふ……ははは……お前頭おかしいんじゃねえの……けどヨ、俺は心底お前が気に入ったぜ』

 何かアバ姉さん凄く嬉しそうだ、良かったアバ姉さんが嬉しそうだと僕も嬉しくなってくる。

『これからよろしくね!!』

『おう、精々死ぬなよ。お前にやった心臓が無駄になるからナ』

 てことはモルト母さんとアバ姉さんはどういう扱いになるんだろう。聞いてしまおう。

『そういえば、アバ姉さんとモルト母さんはどういう関係になるの?』

『かっ!?』

 アバ姉さんがフリーズしてしまった……何か不具合でもあったのだろうか。

『……めんどくせえ事になったナ……おい……お前に神の機構の説明すんのもなんだが聞いてくれるか』

『うん、大丈夫だよ』

『結論から言うと俺とモルトパールの間にはなんの関係もない、が、お前がいる時だけは姉と母という役割を持つことになる。そもそも神ってぇのは基本的に創造神から自分の領分を与えられてその範囲を収めるんだが、お前だけその範囲がダブってる状態なんだヨ。分かったか?』

えっと?え?なんがなんだか?

『分かってねえな。まあアレだ。神は世界のバランスを取るためにいい感じに調整してるんだ。そのための権限を持ってるんだがそれは基本的に被らない。お前がその例外になってるってことだ』

つまり世界っていう公共の地を守るために働いてるってことか。公共の利益を守るために働いてるってことは公務員さんだね。でもって僕は公務の権限が被っちゃってるイレギュラーってことかな?

『分かったよアバ姉さん!!つまり神様は公務員なんだね!!』

『こうむいん……多分そうだナ!!(聞いたことねえけど多分あってるだろ)』

10万年後の神様は公務員でした。







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