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10万年後の旅立ちは少し物騒 2

 ペスカさんはウルトラ村長を止められるらしい

「いやあれは無理だと……」

「ペスカおじさんはよく分からない力を使うの……おじさんが言うにはちーととか言ってたけどあれは神様も傷つけられる力だよ……」

 ちーと……チート?ズルをしている?つまりは何かの法則を無視して動けたりするって事なのかな?それともそれ以外のなにか大きな力が使える?

「おっと……種明かしはそこまでだぞ?」

 噂をすれば……ペスカさんが僕たちの前に立ちはだかった。

「俺としちゃあここを素通りさせてやってもいいんだが……ただの気の良いおっさんだと思われてるのも癪だからな。少しばかり遊んで貰うぜ?」

 僕はできるだけ遊びたくない……素通りさせて貰えた方がずっと良いなあ……どうにかして素通りさせて貰えないかなぁ。

「戦いたくないので通して……もらえない……ですか……?」

「だ・め・だ」

 ダメだった……そんなに楽しそうに言わなくても良いじゃないか……。

「そんなに不安そうな顔しなさんな、別にとって喰う訳じゃあねえ。俺の力は時を止める……ということになっている。周りを見てみな」

 時間を止めるってそんなばかな……光の速度を超えられるわけでもないだろうし……そんなことができるならとっくに……。

「え……!?」

 全てが止まっている、波もデリさんも。

「そんな……ありえない……!?」

「あり得ないってことは基本的にはないんだぜ?ここではなんでも起こると思え、今までの常識を持ったままだとすぐに死んじまうぞ?」

 このことを伝えにきてくれたのか……普通に口頭で言ってくれた方が良かったなあ……でも一つ疑問がある。

「時間を止められるなら王様にだってなれるはずなのに、どうして……?」

「ああ……それな……本当は能力の説明なんてしたら死亡フラグまっしぐらだからやらねえんだけど……お前の疑問ももっともだし俺はもう冒険をする気もねえ。だから少しだけ教えてやるよ、今止まっているのはこの村だけだ。他のものは全部普通に動いてる、これがどういうことか分かるか?」

 範囲限定……つまり時間を全部止めているわけではない。僕も止まっていないし……つまり指定した分しか止められない?

「……範囲の限界と指定がある……?」

「ん~、そうだな……半分くらい合ってるか……実はな……俺の能力って信頼で成り立ってるんだよ。俺の能力を信じる奴がいる範囲しか俺の能力は使えないし通じない。仮に孤立無援になったとしたら俺の力なんざ微々たるものだ」

「信頼……?」

 能力が信頼されないと使えない……それが範囲に影響する……自分だけじゃ戦えない……不便な能力だって言いたいのかな?

「まあ、俺の力なんてどうでもいい。こんな風に理不尽な力に晒されることもあるってことだ。思考停止しないように覚悟だけはしておけ。それじゃあ、あと3つで能力を解除する。俺はそれでもう終わりだ、村長にだけは気を付けろよ。最悪鯨サイズにまで巨大化されるぞ」

「え?」

「3,2」

「ちょっと待ってください!!あんなウルトラ村長どうすれば!!」

「1、0。まあ、頑張れ?」

 なんて無責任な!!こんなことを言うのはお門違いだと思うけどペスカさんが何とかしてくださいよ!!あんなの無理!!

「どうしたの?何かあった?」

 デリさんがこっちを不思議そうにのぞき込んでくる。そっかペスカさんの話をしていた時にはもう止められていたんだ……。

「うん……大丈夫……あとペスカさんはもう来ないと思う……」

「ほんとう!?それならあとは村長だけだから楽になるね」

 村長が楽……?そんなことがあるのか……大きいものは強いんだよ?

「村長さんが楽って……むしろ一番厳しい相手なんじゃ……」

「大丈夫だよ、村長は弱点があるから」

 弱点って言っても……そんなものあの巨体の前じゃあんまり意味がないんじゃないのか。

「ぬううううううううん!!!」

「うわああああああ!!!いったそばからあああああ!!!」

 本当に鯨の時と同じくらいの大きさになろうとしているんじゃないの……!?見る見るうちに大きくなっていく!!

「出たなー!!くらえ!!」

 デリさんが大荷物を村長に向かって放り投げた。

「デリさん何を……!?」

 まさかあの中に秘策が!?

「はぁあああああああああああああ!!!」

 簡単に弾かれてしまった、というか粉々になった……あれに追われて逃げられるとはとても思えない……無理だ……。

「ようし!!これで村長は追いかけてこれないよ!!」

「え?」

「見て、村長縮んでるでしょ?」

「ぬわああああああああああああ!?」

 確かに村長さんのサイズが縮んでいる、でもどうして……縮むようなことなんてなにも……?

「あれ……何か降って……?」

 白いものが降り注いでいる……なんだろうこれ……結晶かな……。

「舐めてみて」

「しょっぱ……!?」

 めちゃくちゃしょっぱい……普通の塩よりもかなりしょっぱいような気がする……いや確実にしょっぱい……なにこれ。

「しょっぱいでしょ?これは特製なの、何倍も塩が濃いんだよ。これをありったけぶつけたから村長が動けるようになるまでしばらくかかるはず。今のうちに!!」

「デリさん……あの大荷物って全部……」

「そうだよ、全部塩。集めるのに2日もかかっちゃったけどね」

 僕はまた……なにもできなかった……何も知らなかった……デリさんが2日もかけて荷造りしていた理由を考えもしなかった……僕は……!!

「ほら行くよ!!」

 デリさんが僕の手をとって村の外へと泳ぎ出す。僕が同じようにデリさんの手をひいてあげられる日はくるだろうか……。

 




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