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10万年後も災害は過ぎ去ってからのほうが大変 4

「どういうことですか……?」

 陸の血が半分入っている?たしかに水棲ほ乳類の身体はしていたけれどハーフとかそう意味合いでなるものではないような……。

「……失言だったな、忘れてくれ。デリは普通の水の民よりも水がなくても大丈夫だというくらいに思っておいてくれ」

 頑なだ、今何を聞いても答えてくれないな。これは後でデリさんに聞いてみよう……デリさんも答えてくれるか分からないけど…。

「しかし……ついてくる者がいらないとなると……何か餞別に与えなくては……そうだな……骨がいいか……鯨の骨は魔除けになる……後で加工して渡そう」

 骨をくれる……そうだ……お守りみたいなものかな……できればその……お金とか欲しいなあ……なんて思うけど……ダメかなあ……。

「それと……これがお前が今日まで働いた分の代価だ」

 良かった!!ちゃんとお金がもらえるみたいだ。厚かましいとは思うけどやっぱり先立つものがないと旅なんてできないよね。

「……重い……!?」

 なんか金属片みたいなものがいっぱい入った袋を渡された……けど重すぎて……こんなもの……持ち歩けるのかこんなもの……。

「重いか?それくらいになるのだが……持ち運べないとなれば別に持っていかなくても……」

「いえもらいます!!」

 たとえ重くても……お金はお金だ……重いけど……重い……けど……。

「そうか、なれば良い。用件は以上だ。旅立つも良し、ここに定住しても良い。好きなようにするといい」

「出るぞ」

 ペスカさんに連れられて部屋を出た、なんか色んな事を言われたなあ。

「……正直な話……村としてはお前に出て行って欲しくない。今回の働きで村長もお前の能力を把握した、お前がいることで村の利益になる。ここに居れば居るほどお前を取り込もうとするだろう。恐らくダレあたりと番になるように話は進む。でもな……お前は多分ここから出て外を見た方が良い、その方がお前にとって良いと俺の直観が言ってる。それでもお前が戻って来たいなら歓迎するが……」

 ……どうしてペスカさんはこんなに僕のために考えてくれるんだろう、ただの良い人で片付けるにはあまりにも親身すぎるような気がする……まるで自分自身のことみたいに……。

「ペスカさん……あなたはどうしてそんなに僕の為に……?」

「あ?別にいいだろそんなこと。気にするな……俺はお節介なチョウチンアンコウなのさ」

 チョウチンアンコウ……そういえばペスカさんはチョウチンアンコウっていう言葉はすんなりと飲み込んでくれたけど……もしかして……。

「ペスカさん……小さい鯨ってここにはいるんですか?」

「小さい鯨だあ?そんなもんいねえよ。あれは全部でっかいんだ」

 小さい鯨はいない、つまりイルカはいない……もしもペスカさんがイルカのことを知っていたら……それは……。

「ペスカさん、デリさんってイルカみたいですよね」

「なんだいきなり……確かにあれは魚っつうよりも……そっちに近いな」

 イルカが通じた……それはつまりペスカさんは……でも……どういうことだろう……とりあえず誘いをかけてみよう。

「ペスカさん……この世界にイルカっていないみたいですよ」

「は?まさかそんなわけ……っ!?」

 大層驚いた顔をしている。やっぱり何かしら隠してることがあるみたいだ。もしかして人間のことを知ってるのかも……。

「お前……気づいたのか……俺が……その……転生者だって……」

「え?」

「え?」

 てんせいしゃ……転生者……!?なにそれどういうこと!?輪廻転生って本当にあったの?えええええええええええええええええええええ!!?

「転生者ってなんですか!!」

「おっまえ!!分かって聞いてた風だったじゃねえか!!なんで聞いた方が驚いてんの!!」

 そんなこと言ってもなんか情報を知ってるのかなくらいしか思っていなかった!!藪をつついたらマウンテンゴリラが出てきた気分!!

「だってだってここは10万年後の地球じゃないですか!!」

「えええええええええええ!!?そうなの!?」

 ダメだ情報が錯綜しすぎていて何がなんだかよく分からない。私の常識非常識がリアルタイムで起こっている。

「だって僕はコールドスリープから目覚めてここにいるんですよ!!」

「だって異世界に転生させてくれるってなんか髭の生えた爺が……待ってコールドスリープ……そんなもんできてるの!?」

 もしかして、なにか超自然的なものとであってペスカさんは10万年後にお魚さんの身体で産まれてきたってことなのだろうか。

「あの爺……確かに10万年も経てば異世界だろうよ……手抜きしやがったな……そりゃあ世界移動より未来に送ったほうが楽だろうよ!!どうりでところどころ文明の跡みたいなもんがあるわけだ……畜生……」

 なんか僕の方が正しいっぽい……良かった……異世界なんていうものにコールドスリープで来られる訳ないもんね。

「ありがとな、なんかすっきりしたわ。一瞬ぶち切れそうになったが二回目の生には変わりない……それにほぼほぼ異世界と変わんねえことに気づいたからいい……まあ今度爺に会ったらぶん殴るけど……」

「いえいえ……それはなによりです」

 多分僕よりだいぶ前に産まれてた人だったんだろうな、そうじゃなかったらコールドスリープでそんなに驚くわけないもんな、

「ここではあり得ないことは普通に起こる、鯨だってあんなんじゃなかったろ。でも……楽しいぞ……前いた所よりは確実に……前に俺も旅をしたんだ。それでいろんな事をしたしいろんなものも見た、俺はここで落ち着いちまったがお前が上に行けるかもってのは本心だ。精々頑張りな」

 どこか遠いところを見つめながらペスカさんはそう言った、きっと色んなことがあったのだろう……それがどんなものだったのかは分からないけど……きっと凄い冒険だったに違いない。

「それと女には気をつけな……俺も酷い目にあったからよ……デリはちょっと……病みの気配があるからな……」

 鉛のような金言をいただいた。



爺「あれ?ワシが悪いことになってない?」

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