表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/191

10万年後も災害は過ぎ去ってからのほうが大変 3

 しばらく経つと村の喧噪もだいぶ収まってきた、鯨の部位もまたおおかたさばけたようで残っているのは骨の一部くらいになっていた。その間はずっと通訳を続けていたからもう喉が限界だった。

「ごれでおわりでずが……?」

「お、おう。後はもう大したものはねえが……少し働かせすぎたな……声ガッラガラじゃねえか。すまねえ、便利だからって酷使していい理由にはならねえのによ」

 ペスカさん……いい人なんだけどここ数日に激務はちょっと常軌を逸していた……というかペスカさんのほうが働いてる気もする。心なしか頭の提灯が陰ってきてるし。

「だいじょうぶでず、やずめばなおりまず」

「……そんな状態のときに悪いが……これから村長のところに行くぞ」

 え、なんだろう。もしかしてまだ重鎮の人の接待とかが待っているのだろうか。それはちょっと御免被りたいというか……。

「おじごどでずが……?」

「ちげえよ、お前に旅人の身分をやるって言ったろ?それが漸くできた。それをお前に渡すんだよ」

 良かった、これ以上の酷使はないようだ。流石にこれ以上喋ったら喉が使えなくなるところだった。

「おら、ついてこい」

「ばい」

 旅人の身分をくれるって普通に聞き流していたけどそ……それって一体どういうことなんだろう。旅人って自称するものであって別に身分とかそういうものではないような気がするのだけど。

「……村長から説明があると思うが旅人っていうのはおいそれとなれるものじゃない、それだけは肝に命じておけよ」

 ……ちょっとよく分からない。旅人には簡単にはなれないものなのか。

「入れ」

 村長さんのところに来るのは2度目だ、流石に2回目だから大きい村長さんにも驚くことはない。まあ、ウルトラ村長がいきなり出てきたらびっくりするけどね。

「来たか……ペスカからお前に旅人の証をやってくれと嘆願された時には驚いたが、今までの働きを加味すれば十分すぎるほどだろう。お前のおかげで鯨の廃棄はほぼなかった。いつもは3割ほどがダメになってしまうからな。鯨を早めに呼び込んだことと相殺しても功労の方がよほど大きいだろう」

 背筋が凍る、村長さんは僕が何をしていたか知っている。ということはいの1番に首を落とされていてもおかしくなかったということだ。忙しさにかまけて忘れていたけれど僕がすべきことはまず謝罪のはずだ。

「ごめんなざい……なにもじらないのにかっでにうごぎまじだ……」

 頭を下げて許しを請うことしか僕にはできない。いくら倒せるとはいえ災害を呼び込んだのは事実だ、それを棚に上げてのうのうと生きることはいけない。

「よい、それも全て含めて功の方が勝ったと言っているのだ。それでお前に旅人の証を与えるのだが……旅人について3つほど言っておかねばならないことがある」

 本当に許されて良いのだろうか……僕のしたことはそんなに軽いことではないはずだ。

「……罪の意識があるのならこれからの行動で償うのだ」

「はい……」

 僕のしたことの償いは僕の行動でするしかない、それを忘れないでおこう。取り返しのつかないことにならなかったのは運が良かっただけなんだ。

「それでは1つ目だ。旅人はあらゆる障壁を無視して全ての街・村・国へと入ることが許される。2つ目、旅人は自由を約束されるかわりにその命の保証は自分自身で行わなければならない。3つ目、旅人が故意に街・村・国に損害を与えた場合はその場で死刑となる、その際に旅人の証を与えたものも処罰される」

 ……これって僕がなにかやらかしたら村長さんにも罰がくだされるってことだよね……それはダメだ……これ以上の迷惑なんてかけられない!!

「ぎもにめいじでおぎまず……」

「その顔ができるなら大丈夫だろう、これが証だ」

 村長さんが何かを手渡してくれた、それは輪っかのように見える。でも太さはかなりあるから手首とか足首とかにつける感じではない。

「それを首につけていることが旅人の証だ、死刑の時はその首輪ごと切り落とされることになる」

 やっぱり首だった……旅人なのに首輪つきなんだ……首輪をすることで特権を得るっていうのは……なんだか皮肉だな。

「うむ……よく似合っている」

「ありがどうございまず……」

 喜んで良いのかわからない……首輪がよく似合うって褒め言葉なのだろうか……他意はないはずだ……きっと……たぶん……。

「それでだ……海で拾われたお前が満足に旅ができるとも思えない。ここから送り出す以上はすぐに死なれても目覚めが悪い、お前がどうしても嫌と言うのでなければ同行者を1人つけたいと思う。なに、いらないと思ったなら次の場所に着いたときにこっちに返してくれればいい」

 おっしゃるとおりでございます、だから僕はデリさんと一緒に旅に出るんだ。だから追加でもう1人っていうのは……いらないかな。

「使い捨てる用途ならば奴隷でもいいのだが……あいにくこの村には奴隷がいないのでな」

 奴隷……?奴隷なんているのか……いやいや……仕方のないことかもしれない……人間だって奴隷がいた年数の方が長いんだ……。

「でりざんどいぐので……だいじょうぶでず」

「そうか……もう目星をつけていたのか。いいだろうデリをつれて行くと良い」

 良かった、ダメって言われたらどうしようかと。

「半分だが陸の血が入っているデリは他の者より適任だろう」

 え?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ