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10万年後の鯨は災害 3

 なんとなくデリさんの見てはいけないところを見てしまった気がするけど、とても忘れられるような感じじゃあない。でも見なかったことにした方がいいんだろうなあ。

「……ここ嫌いなんですか?」

「う、ううん。そんなのことないよ!!」

 目が泳ぎまくってるし手がわちゃわちゃと忙しない、これを見たら誰だって嘘をついていることを見抜くことができると思う。

「村から出たい?」

「まっさか~!!良いところだって言ったでしょ?」

 さっきと変わらない反応が続いている。こんなに嘘をつくのが下手でよくもまあ今まで隠し続けてこられたなあ。それともここの人って表情とかしぐさから読み取るのが苦手だったり……もともと魚だったとしたらそれはありえるのかな。

「……鯨が無事に片付いたら」

 これはチャンスだ、僕は僕のことを諫めてくれる仲間が欲しい。デリさんはこの村から出たい。というかいきなりここから広い世界に旅立てなんて言われても僕は困る。ちょっと怖いところがあるけど……これはタイミングが良いと言うのではないだろうか。

「僕と一緒に旅に出ませんか?」

「……え?」

 これ以上ないくらい簡潔に言ったと思うのだけど……何か分かりにくい表現があったのだろうか。それとも普通に僕が嫌いとか。それは……へこむな……嫌われるようなことはして……たなあ……鯨呼んできたし……なんか運命の相手じゃないって言っちゃったし。

「えっと……いい……?」

「……?」

 いいって何に対して言っているんだろうか。私でいいのってことなのか、僕なんかについていくのは嫌だってことなんだろうか。たぶん後者だろうなあ。

「あ、そうだよね。僕なんかと一緒に居ても良いこと何もないもんね……分かった」

 引き際が大事だってことを僕は学んだ、致命傷を負ってから引き返しても死ぬだけなんだって。追いすがることが有効な時もあるけれど今は違うだろう。

「あ、や、そうじゃなくて……私でいいの?ダレおばさんとかの方が私なんかよりもずっと役に立つと思うけど……」

「……だって僕のことをここに連れてきたのはデリさんだし。一番信頼しているのはデリさんだから、一緒に来てくれるならその方がいいなあって」

 闇を感じたとしても命を救ってもらった恩は莫大だ。デリさんも外に出たいと思っているのならそれを叶えてあげたい。

「だって……私は……その……さっきも見たでしょ……思い込みがすごいっていうか……暴走することがあるの……だから止めた方がいいよ」

「別に大丈夫……デリさんには僕の増長を止めて欲しい。さっき僕を起こしたみたいにね」

 実は今も結構痛かったりする。見かけによらずというか、基本的にここの人たちは海での移動が基本だから肉体的スペックが高いんだと思う。

「でも……」

 デリさんが何か言おうとした瞬間だった、村の入り口にあたる方向から地鳴りのような音が聞こえてきた。

「……鯨だ」

 大きな音を立てて鯨がその姿を現す。やはり遠近感が狂うほどの大きさには圧倒される、恐怖に貫かれた身体は勝手に震えだしてしまう。

「やっぱりあんなの……どうしようもない……」

「そんなことないよ?だいたいあっさり倒してるけど……」

 そんなことあるわけない、あんな大きな生き物をあっさり倒せるのなんてそれこそ同じくらい大きなものじゃなきゃいけない。そんなの光の巨人か戦隊の合体ロボットくらいしかいないよ。

「村長が」

「ぬううううううううあああああああああああああ!!!!!」

 目を疑った、いや鯨を見たあとに大きさで目を疑うことがあるとは全く思っていなかったけどこれは予想外にも程があった。

「いや……村長さん……ええ……?」

 とてつもなくでかい村長さんがいた。いやもともと大きかったけどここまで巨大化するの?もしかしていつもは常に濃縮塩水に浸かって縮んでいらっしゃったの?

「ね?村長ってすごいんだよ。なんでも村長になる前はいろんなところで怪物退治をしてたらしいし。その時の2つ名が進撃の巨貝(カイタン)だからね。鯨が出るたびにこの大きさになるけどいつ見てもすごいよね」

 あ、そうか。またもや勘違いをしてたみたいだ。ここに村があるってことは定期的にここに鯨が来るってことで、それでもここに住み続けて居られるってことは鯨をほぼ確実に何とかできるってことなんだ。それが巨大村長とは思ってもみなかったけどさ。

「……そういうのは早く言ってよお……」

「だって聞かれなかったから」

 確かに聞いてないし勝手に動いたのは僕だけどさあ……なんだろうこの空回り感……これはもうなんか……なんかなあ……はぁ。

「あ、見てみて。村長の必殺技が出るよ」

「え?必殺技?」

 村長さんが何か構えをとっている。左腕で鯨を宙づりにして……ん?右腕を……胴体にぶち込んだ!?貫通してる……うわあ……滝のように血が出てるよ。

「すごいのはここからだよ」

「え?」

 もうすでに凄い惨状なんだけど……ここから……腕をひきぬい……て……なにかつかんでいるね……どくどく動いているあれは……心臓だね……ハートキャッチだね……あ……握りつぶした。

「ぬうううあああああああああああああああああ!!!!!!」

 村長の雄叫びは鯨との戦いが終わったことを知らせる鐘となった。うん。あっさりだね。





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