#3 魔獣の襲撃
「助けたいって...本気で言ってる?」
「あぁ、本気だ。」
俺は軽く頷いた。そうするとクレアは
「冗談もいい加減にして。村の皆はあなたたちのことを嫌っているのよ?」
と、俺に言った。しかし、俺には想像も出来ないことだった。けど、俺が転生者だとバレたらまずいのは俺にもわかる。でも、それはあくまでバレたらの話だ。自分から言うことがなければバレることはないはずだ。
「ようするに、バレなければいいんだろ?」
「それはそうだけど...」
「クレア、確かに俺は能力が使えない。でも....勝てる勝てないなんてのは、自分と周りの人間が過去と今の情報で勝手に決めてる偏見だぞ?」
「....っ!」
「だから俺は」
「でも!戦闘中に能力が発現するかもしれない。そしたら...!」
「なあ、クレアは何で俺のことを心配しているんだ?」
クレアはきょとんとしている。俺、今変なこと言ったかな?クレアはため息をつくと
「心配ねぇ....確かにしてるわよ」
と、言った。
ん?これは.....あれかな?恋愛フラグってやつかな?会って間もないけど、
「転生者の仲間なんてそんなに嬉しいことは無いし。まあ、能力がわらないのは問題だけど。」
「うるせぇ...」
一瞬で恋愛フラグとやらはへし折れた。まずフラグすらたってないか、今のは。するとクレアはまた俺を引き止めるようにこう言った。
「アベル、あなたが助けに行けば魔獣に殺されるか、村人に転生者だとバレて殺されるかのどっちかよ。」
俺は、はぁーと大きくため息をつき、そして
「安心しろ、俺は殺されない。誰も殺させはしない。」
そう言うと俺は、急いで外へ向かった。外はまだ騒がしく、人も多かった。人が逃げていく反対方向に向かい、走っていく。道中にあった武具屋の剣を取る。
「おい!それ売り物じゃ無いんだが!?」
「ちょっと借りる!」
強引な方法で武器を手に入れた俺は、魔獣がいるであろう広場へ向かう。そこではまだ魔獣が暴れていた。
不意討ちを狙ったけど、見つかってしまった。魔獣が一直線に俺の方に向かってくる。俺はその攻撃を横に避け、魔獣の後ろ足に切りつけることに成功する。それによって怒ったのか、魔獣は俺ばかりを狙うようになった。突進してきたら横に回避、隙をついて攻撃、これを繰り返した。
「よし、いい感じだ。このまま......!?」
魔獣は俺を諦めたのか、近くにいる逃げ遅れた子供を狙い、その子供の方に走っていった。
「まずい!!」
俺は急いで子供と魔獣の間に向かって走り、剣で魔獣の攻撃を子供から反らす。すかさずカウンターをする。そして、隙をついて子供を離れた場所まで逃がした。
「これでよし。後は魔獣を.....」
しかし、逃がすことを意識しすぎていた。振り返るともうすでに魔獣が攻撃を仕掛けてきていた。
「しまっ....!!」
咄嗟に剣を盾のようにして使い、魔獣の攻撃を防ごうとする。しかし、俺はいとも簡単に剣ごと吹き飛ばされる。そして、村人の家の壁にぶつかった。俺はよろめきながらも立ち上がり、剣を構える。すると、逃げていた男性が戻ってきて
「もういいよ!!あんたも逃げろ!!」
と言った。
いつもの俺なら逃げていただろう。しかし、何故か俺は逃げなかった。本当はここから逃げ出したい。でも何故か逃げなかった。なぜならこの魔獣は、俺が倒さなければいけない。もしあの魔獣が俺の匂いを嗅いでここまで来たとするなら、これは...俺のせいだ。村人の怪我も全部、俺のせいだ。だから俺は逃げない。逃げてはいけない。
「ここで逃げるわけには......いかないんだ!!」
すると俺の髪が赤く染まる。それと同時に体の動きが軽くなる。
「何だ?急に体が軽く...」
自然と力も溢れてくる。これなら...
「...勝てる!」
突進してきた魔獣の攻撃を素早くかわし、カウンターをする。そして、すぐに振り返ると同時に上へジャンプし、上から切りつける。すると魔獣が怯んだ。
このチャンス、無駄にはしない!
俺はすかさず剣で連撃を与える。そして、
「はぁぁーーー!!!」バシュ!
俺は魔獣にトドメをさした。魔獣はその場に倒れている。
「倒した.....のか?.......っ!?」
俺は、クレアに言われたことを思い出す。
『戦闘中に能力が発現するかもしれない。そしたら....!』
転生者だとバレて殺される....だったな。さっきのが能力のおかげなら、早くここから離れた方が良さそうだ....な!?
広場の周りから逃げていた村人たちが俺を囲むように寄ってくる。
「まずいな.....」
一人の男性が、俺の前で立ち止まった。よく見ると、俺に逃げろと言った人だ。
この人はせっかく俺を心配してくれたのに、いきなり気持ちを裏切られたらそら怒鳴りたくもなるな。
心配事ばかりで頭がいっぱいになる。すると、男性が口を開く。怒鳴るな、これは。
「あんた凄いな!ありがとう、カッコよかったぜ!」
ほら怒鳴って......ん?あれ?
「怒らねえの?」
「..?よくわかんねえけど、あんたのおかげで誰も死なずにすんだんだ!そんなやつになんで怒るんだよ。」
「あ、あぁ.....そうだよな....はは......」
こいつらが俺を殺そうとしない理由はわからない。俺が能力を使ったこと気付いてないのかな?まあ能力かどうかはわからないけど。そんなことより、クレアはどうしてるだろうか。
クレアは、俺が剣を貰った武具屋にいた。え?盗んだ?....勘の良いガキは嫌いだよ。武具屋の店主はいつもの元気は無く、地面に座り込んでいた。
「.......え、何してんの?」
「あぁ、クレアか。実は店一番の剣が盗まれたんだ.....」
「あー、御愁傷様です。そんなことより...」
「そんなこと?お前、ふざけんなぁ!?こっちは店一番の剣盗まれたんだぞ!?盗ったやつは魔獣倒したら返すって言ってるけど絶対嘘じゃん!」
「ん?その人、もしかして盗んだのって黒髪のボサボサ頭の子?」
「?ああ。」
「絶対アベルじゃん」ボソッ
クレアは俺ががいる広場に来た。村人の皆に囲まれていた俺を心配したのか、
「っ!?え、本当に発現したの?助けないと....」
俺と村人は、何故か仲良く話していた。クレアは村人を掻き分け俺を見つける。俺は
「いやー、意外といけるもんだよ?」
みたいな適当なことを話していたら思いっきりチョップをされた。
「お前らも一回戦ってみたら..」ゴスッ
俺は痛いとも言う間もなくその場に倒れる。
クレアは黙って俺の襟をつかむ。
「帰るよー」
「は、はい」
クレアは俺を引きずりながらその場を離れる。
クレアに引きずられながらどこにいくのかを気にしていると、クレアは武具屋の前で止まった。
「はい、剣返して」
「あ、そうだったな.......あれ?」
剣が無い、となるとあるのはあそこだな。
「どうしたの?」
「忘れた」
「え、忘れた?」
「うん忘れた」
「どこに?」
「広場」
「.....取ってきて、ね?」ニコッ
「わ、わかった...」
笑ってるはずなのにクレアが恐い。仕方ないから取りに行こう。前にこいつが女神みたいって言ったやつ出てこい。ぶん殴ってやる。
広場に着いた.....けど、無い。
剣が無い。
なんでこうなるかなー....
嫌な予感がする...




