6-10 山賊砦2
公園探しを通じて、いろんなアスレチックを発見した。
オレが子どもの頃に比べて、公園の設備が充実したってのもあるんだろう。
探してみれば、アスレチックは思ってた以上に多くの場所にあった。
大小さまざまなアスレチック。その中でもオレのハートをガッチリ掴んだのが、例の市民公園にある巨大アスレチック『山賊砦』だった。
クルクルと斜面を周回しながら、丘全体に敷き詰められたアトラクションを乗り越えて、頂上を目指す――山賊砦はアトラクションの数、多様さともに他のアスレチックを圧倒していた。
オレも挑戦したくなって身体がウズウズした。
だけど、ひとつ大きな問題があったんだ――。
歓声をあげながら、走って飛び跳ねて、山賊砦に群がるガキンチョたち。
大人といえば、そんなガキンチョどもの保護者だけ。
オレみたいな奴が入り込む余地なんか1ミリもなかった。
少し離れたベンチから指を咥えてじっと見続けること。
それだけしかできなかった。
いかにも、「子どもの付き添いで来てる父兄ですよ」って雰囲気を醸し出すように心がけながら。
当時のオレに出来たのは、そうやって眺めながら、自分がアスレチックで遊ぶ姿を想像することだけだった。
だけど今、目の前には憧れていたソレがある。
鮮やかな芝の緑と対比的な、風雨に晒されて色褪せたダークブラウンの木材とロープたち。
柔らかく湿った風が頬をそっと撫でた。
春草の香りが優しく鼻孔をくすぐる。
もう何年も前のことなので、正確には違うのかもしれない。
けど、記憶の中にある山賊砦とソレは同じ姿をしていた。
騒がしいガキンチョはひとりもいない。
ただ、静かにオレを待ってくれているようにも見える。
胸の奥から熱いものがグッと込み上げてきた。
そして、見上げた山頂、本来ならゴール地点を示す山賊の旗が掲げられていたそこに――サタン子ちゃんがひとり立ち、こちらを見下ろしていた。
その姿を認め、自然と頬が緩んだ。
嬉しかった。安心した。
サタン子ちゃんがそこにいたことに。
一緒にアスレチックで遊べるんじゃないかって。
両手を拡声器のように口の前に構え、大きく口を開いた。
「サタン子ちゃ――」
「こないで」
だが、オレの呼びかけはサタン子ちゃんに遮られた。
冷たく静かな声だった。
サタン子ちゃんの口は真一文字に閉じられている。
オレの脳内に直接語りかけてきたのだろう。
たった4文字の短い言葉だけど、今までの拙い喋り方と同じではなかった。
それには、明確な拒絶の意思が込められているように感じられた――。




