6-6 代行サービス
『勇者アプリ』で実行可能コマンド――その最後のひとつが【MISSION】だ。
もう何度も言ってきたが、今までのバイトはオレの好き勝手にやって来ただけ――ひと言で要約すると「幼女と遊んでました」だ。
ベビーシッターとか、保育士さんとか、そういうジャンルだけど、サタン子ちゃんはまったく手を焼かせない子だったから、本当に気ままに楽しく遊んでいただけだ。
砂山つくったり、泥団子つくったり、絵本を読んだり、オママゴトしたり。
だって、最初にもらったアドバイスが比呂子さんからの投げっぱなしな「お前のやり方でやってみ」だったしね。
だから、好き放題してきたし、それで特に文句も言われなかった。
それどころか、三食昼寝付き、その上、お小遣いまで貰えちゃうっていう神待遇だった。
けど、正式に勇者登録したことによって状況が変化した。
ゼル子ちゃんの話を思い出す――。
「今まではチュートリアルということで、比較的自由に行動できたかと思いますが、これからは明確な目標が設定されますの。最初に勇作サマが勇者としての果たすべき大きな目的――それはサタン子サマを一人前の魔王に育て上げることですの」
どうやら、そこから始めなきゃいけないらしい。
いよいよ本格的に魔王とバトルかとも思っていたんだけどね。
なんでも、「熟練の勇者サマでしたら、いきなり強力な魔王の支配する異世界を担当することもありますが、勇作サマはまだまだ駆け出しですので」だってよ。
勇者も半人前なら、魔王も半人前。そっからのスタートだ。
そんで、「サタン子ちゃんを一人前の魔王にする」ために、ひとつずつ小さなミッションをクリアしていく――それがこれからのオレの仕事だ。
まあ、仕事らしいっていうか、ゲームっぽいっていうか……。
そんでもって、【MISSION】コマンドで、現在受けているミッションや過去にクリアしたミッションの内容を確認できるそうだ。
――とまあ、以上がゼル子ちゃんから3分間で説明してもらった内容だ。
昨日今日で『勇者アプリ』については、一応ひと通り説明を受け終わったことになる。
ごっちんの命令のひとつ目はクリアだ。後は、ちゃんと時間内にバイトを終わらせなきゃな。
そういえば、バタバタしていて、結局まだ『勇者アプリ』のオープニング見てなかったな。
ゼル子ちゃんが気合い入れてつくったみたいだし、暇なときにでも見ておこうか――って言って、後回しにした結果、メンドくさくなってやらないっていう勇作くんの黄金パターンだ。
夏休みの宿題も9月に入ってから始めてたし、そんでもって、結局半分くらいは未提出だったし……。
つーか、最近は「夏休みの宿題代行サービス」なんてもんまであって、しかもそれに依頼殺到だとかってね。
依頼者の子どもの学力に合わせて、適度に間違えてくれたり、筆跡をそっくりにマネて同じような字体で仕上げてくれるとか。サービス良すぎだろ!
そんでもって、宿題代行サービスのアルバイトってのも人気あるみたいね。在宅でできるし、家庭教師や塾講師と違ってガキンチョの相手しなくていいから、人付き合い苦手な学生とかにはもってこいだ。
うん、まあ、そんな話は良いとして――、
「どう考えても、この扉を開けるしかないよなあ……」




