6-4 シーソーシーソー
ごっちんのプンスカ状態は、オレの安っぽい土下座ひとつくらいでは収まってくれるわけもなかった。
「今すぐ説明の残りを聞いてくること。制限時間は3分――」
畳に頭を擦りつけているオレの前に立ったごっちんが、厳しい声で命令してきた。
「ちゃんと監視してるからね。1秒でも過ぎたら、許さないからね。ムダなことくっちゃべってるんじゃないわよっ」
こわっ。
普段からよく、ごっちんを怒らせているんだけど、今回はマジギレみたい。
オレとしては、只々身体を縮こめるくらいしかない。ヤドカリさんみたいにできたら良かったのに……。
「その後は、すぐにバイト開始よ。12時までに終わらせてきなさいっ。いいわねっ!」
「はっ、はい」
「わかったなら、そこに立つ」
言われるがままに従った。
ごっちんはオレの横を素通りして部屋の入口へ――ドアを開けて、オレを手招きした。
立ち上がったオレに、部屋の入口に背を向けて立つようにアゴで指し示した。
ごっちんの意図がつかめなかったが、言われたとおりにする。
「できなかったら、ひるめしぬきだからねっ!!!」
「ぎゃあああ」
渾身の前蹴りを鳩尾に食らい、廊下へと蹴り出された――。
「――勇作サマ、大丈夫ですか?」
腹部を押さえて、しかめっ面のオレに、ゼル子ちゃんが心配そうに声をかけてきた。
ボロアパートの廊下で痛みを堪えてうずくまること数分。
なんとか歩けるくらいまで回復したオレは、スマホの『勇者アプリ』を立ち上げてホームへやってきたところだ。
ゼル子ちゃんは今日もカワイくて、ホ○ミ1回分くらいはHPが回復した気がする。
「だ――」
大丈夫じゃなかったけど、ゼル子ちゃんの顔を見たら元気になったよ、といつもの調子で軽口を叩きそうになったところで、ごっちんの言葉を思い出した。
あー、これ、監視されてんだろうな。
余計なやり取りしてたら、また、鉄拳制裁なんだろうな。
さっきの蹴りはシャレにならんかった……。
アレ以上の攻撃は「シーソーシーソー」って鳴き声の召喚獣のお世話になること間違いなしだ。
さすがに、ここではおちゃらけられない。
「昨日の説明の続きをお願い。3分以内で」
オレのそっけない物言いに、ちょっと拗ねたような、悲しそうな、そんな顔をしたゼル子ちゃんだったけど、すぐに笑顔に戻り、きっちりとオレの要求に応えてくれた。
ごめんよ、ゼル子ちゃん。
この埋め合わせは今度必ずするからね。
M7○星雲からやってくる人より短い滞在時間。
後ろ髪を引かれる思いで、オレはホームを後にした。
そういえば、「そのうっとうしい髪をさっさと切りなさい」ってごっちんに言われてたな。床屋行くの、めんどくせえ。
次回更新は年明けになります。
みなさま、良いお年を。
餅を詰まらせて作中の召喚獣のお世話にならないよう、お気をつけくださいませ。




