5-12 究極の空間
「――勇作サマは正式に勇者として登録されました」
すでに勇者になったつもりでいたが、どうやらこれまではチュートリアルというか、仮免みたいなもんだったらしい。言われてみれば、今まで好き勝手にサタン子ちゃんと遊んでただけだもんな。
これでようやくお墨付きがもらえたようが、そうなると色々と制約とか出てくんのかな?
面倒くさい縛りとかあったら嫌だな。
「それでなにが変わったの?」
「はい、ひとつずつ順番に説明していきますね――」
ゼル子ちゃんの話によると、正式に登録された勇者には担当のナビゲーション・エンジェルがつくそうだ。
それで、こうやって色々と説明してくれたりと、勇者の手助けをしてくれるんだって。
もちろん、オレの担当はゼル子ちゃん。ちなみに、比呂子さんの担当もゼル子ちゃん。他にも何人か担当してるって。
「複数の勇者を同時に相手にしなきゃならないときはどうすんだ?」と疑問を尋ねてみたら、「わたくしは同時に複数存在できるから問題ないですよ」だって……。
「こう見えても、わたくしは第二位階の天使ですの」
と誇らしげに返された――。
それで、ここは各勇者に与えられる『ホーム』と呼ばれるオレ専用の空間で、24時間365日いつでもアクセス可能。オレが望めばお風呂場からいつでも転移可能だと。
しかも、オレが許可しなければ、他人は立ち入りできないんだって。ゼル子ちゃんはここに常駐しているが、頼めば席を外してくれるって!
これを聞いて、オレは飛び上がりたくなるほど嬉しかった!
そう。この生活を始めて以来、なによりも欲しかったものがようやく手に入ったんだ。
誰かに白い目で見られず、寝床の不安がなく、三色昼寝付きで、しかも、カワイイ女の子に囲まれているという、これまでのオレの人生からしたら、考えられないほどの恵まれた環境だ。
だが、そんな完璧のように思える状況でも、ひとつだけ欠けていたものがあった。
まさに、画竜点睛。つーか、竜に瞳を忘れたり、耳にお経を書き忘れたり、モザイク入れ忘れたり、ガレット・デ・ロワに間違えて鍵を入れたり、それ飲み込んじゃったりとか、世の中うっかりさん多すぎだろ。
まあ、オレもうっかり何年間も引きこもりニートやったり、30年間女の子と仲良くするの忘れてたりするから、他人のこと言えないか。うん、ちょっとうっかりしてただけだな。
話は逸れたが、この生活に欠けていたもの、それは――
『決して誰の邪魔も入らない鍵付きの部屋』
健康な男子だったら、誰もが欲する究極の空間だ――。
六畳間も昼間は基本的にオレひとりだが、あそこは鍵がついてない。
だから、今日の比呂子さんみたいに、いきなり誰かが入ってくる恐れがある。
滅多にない事とはいえ、高度な精神集中が必要とされる場合には、やっぱり気になるものだ。
それに健康な男子の生理的欲求は時と場所を選ばない――。
ほら、急にもよおすことってあるじゃん?
そうなるとどうしても解消しないと収まらないじゃん?
トイレや浴室という選択肢もあるが、いくら個室とはいえ、すぐそこに小学生くらいの女の子がいる状況だと、やっぱり落ち着かないじゃん?
「むしろそういう状況の方が興奮する」という変態紳士もいるが、オレはそこまでハイレベルではない。
しかも、都合がいいことに、ここは異世界扱いらしく神様から貰ったスマホも持ち込み可能だ。ネタには困らない。
後は、眉間にしわを寄せてダンディズムを演出しながら、ゼル子ちゃんに「少し考え事をしたいんだ。独りにしてくれ」と大○明夫ヴォイスで告げればいいだけだ。
完璧!!!!!
というわけで、
『勇者ゆうさくは究極の空間を手に入れた!』




