5-4 約束
「あんたたち、いいかげんにしなさいよっ!!!」
イチャつくオレたち――正確には比呂子さんが一方的に手を出してきてるだけだが――に耐えかねたのか、ごっちんの怒声が飛んできた。こっちをキッと睨みつけ、スポンジを持った泡まみれの手をプルプルと震えさせてる。
一方の比呂子さんはどこ吹く風といった感じで、ごっちんを完全スルーでセクハラ継続中。
そんな中、板挟みになったオレはどうすればいいんだよ、一体……。
「よーし、じゃあ、そろそろにしよっか」
比呂子さんが空気を読まずに発言。
なんでひとりだけラブラブカップルみたいな雰囲気なの?
この後、最悪な展開しか想像できないんだけど……。
「なんすか?」
「ほら、約束したじゃんかよ~」
「約束?」
「えー、勇作忘れちゃったの~?」
「なんか約束とかしてましたっけ? まったく記憶にないんですけど……」
「お風呂で洗いっこしようって言ったじゃんよ~」
そういえば、比呂子さんが一方的にそんなこと言ってたな。
冗談だと思って流していたつもりだったんだが、比呂子さん的には約束したつもりだったんか……。
「嫌ですよ。そもそも、オレはオッケーしてないですよ」
「むー、けちー」
なにカワイクほっぺ膨らませてるんすか?
「さっきはひろこのお願い聞いてくれるって言ってたじゃん」
「うっ……まあ、言いましたけど……」
「ねっ、おねがい」
比呂子さんはオレの背中に柔らかい胸を押しつけながら、耳元でそっと囁いた。
――パリーン。
あ、お皿が割れた。
ヤバいめっちゃ睨んでる。
逃げろ逃げろ、とオレの本能が警鐘マックス。
「わかりましたよ」
「やったー」
言うなり、比呂子さんはオレの手を掴んで風呂場へ連行しようとする。
オレは慌ててタンスからバスタオルと着替えを取り出しながら、なんとか脱衣所へ緊急避難。
「ごっちんめっちゃ怒ってましたよ」
「へーきへーき」
そんなこと我関せずと、鼻歌交じりでパッパと服を脱ぎ捨ててく比呂子さん。「ちゃんと隠してください」とバスタオルを押しつけ、オレも素っ裸になり腰にタオルを巻いた。ふたり揃って準備完了。
浴室のドアを開けて、いざ入浴――。
…………うーん。
本来ならめっちゃ盛り上がるシーンなはずなのに、オレのテンション超低空飛行。
比呂子さんはよくわからん状態だし、ごっちんはキレてるし……。
女の子と身体の洗いっこしながらも、なんだこの、コレジャナイ感……。
比呂子さんは相変わらずのテンションのまま、ノリノリでオレの身体を洗ってくれてたが、オレはなんの興奮もせずに事務的に済ませただけだった。
ふたり並んでバスタブに浸かっているが、はしゃぐ比呂子さんを他所に、オレは「このノリいつまで続くんだろう。いつになったら元の比呂子さんに戻るんだろう」と目を閉じて考えていた――。




