5-1 ひろこポイント
2回目の勇者バイトから一週間後の夕方、唐突に比呂子さんがやって来た。
この一週間、3回勇者バイトをやった以外は取り立ててなにもしていない。
寝て起きて、スマホいじって、筋トレして、ごっちんをからかってたくらい。筋トレはいいね。やった分だけステタースアップした気になれるし、なによりお金がかからない。
「よう、勇作。元気にしてっか?」
「うわっ!?」
その時オレは玄関に背を向けて、こたつに寝っ転がってスマホいじっていたから、背後から突然声をかけられて本気でビビった。
「なに、焦ってんだよ。エロサイトでも見てたのか」
「いや、見てませんよ。単純に驚いただけっすよ」
ホントだよ。ホントに見てないよ……今はね。
危ないところだった。
「ちなみにそのスマホ、履歴とか全部ごっちんに筒抜けだからな。程々にしておけよ」
「えっ!?」
うぎゃー、それまじー!?
「嘘だ。安心しろ。相変わらずいいリアクションだな、勇作は」
動転してるオレには構わず、比呂子さんは六畳間備え付けの冷蔵庫から缶ビールを取り出した。
ちなみに、この部屋には2つ冷蔵庫があり、こっちは比呂子さん専用の『飲んでも減らないビールサーバー』だ。と言いつつも、オレも勝手に飲んでるけどね。もうひとつ、キッチンには普通の冷蔵庫もちゃんとあって、食材などはそっちに入っている。
取り出した缶ビールの一本をオレに放り、比呂子さんも自分のビールを豪快にあおった。
「この前も言ったかもしれんが、いつでも勝手に呑んでいいからな」
「ういっす。あざっす」
ゆっくりとプルタブを開けてちびちびと飲み始めてたら、比呂子さんがいきなりキャラチェンジ――只今絶賛売り出し中の新商品を紹介するコンパニオンのおねえさんみたいに缶を顔の横に持って、にっこり営業スマイルと声優みたいな作り声に大変身!
「なんと、このビール1本につき、1ひろこポイントゲットですっ! ちなみに、現在は96ひろこポイントですよっ!! すごいですねっ!!!」
……勝手に飲んでたのバレてんのね。
つーか、そんなに飲んでたんだオレ。
まあ、ほとんど引きこもってたし、手近なところにビールが置いてあったら、そりゃー無意識に手がのびちゃうわな。
「なんなんすか、そのポイント?」
「1ひろこポイントにつき1回、勇作がひろこのお願いを叶えてくれるんですよっ」
…………ウィンクされた。
「いや、そんなんなくても、比呂子さんのお願いだったら断れるわけないじゃないっすか」
「えー、そうなんですかぁ~。ひろこウレシイ~~!」
…………身体クネクネしてる。
「それにー、100ひろこポイント貯めると勇作のお願いを1つヒロコが叶えてあげるんですよ~」
なにそれこわい。
むしろ、罰ゲームじゃないか。
しかも、あとちょっとで達成だ…………しばらく控えよう。
「なんでもいいですけどぉ~、あんまりエッチなお願いは…………。でも、ヒロコがんばりますっ!!」
ひと通りオレのことをからかって満足したのか、比呂子さんは何事もなかったかのように平常モードに戻りサクッとゲームをやり始めた。
…………疲れた。出会って5分でオレのライフはもうゼロだ。
打ちのめされたオレはスマホいじりに戻ることにした――。




