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4-14 おめでとう

 ――目が覚めたら、部屋にごっちんはいなかった。

 さっき言ってたように買い物に行ってるんだろう。

 時計を見ると11時過ぎ。4時間も寝てたのか。

 そのおかげで、まだけっこう熱っぽいけど、少しだけ楽になった。


 手持ち無沙汰だったから、仰向けのまま「知らない天井だ」とか、枕に顔を埋めて「綾○の匂いがする」とか、シ○ジ君ごっこやってるうちに段々とテンションが上ってきちゃって、


「僕は僕が嫌いだ。でも好きになれるかもしれない。僕はここにいてもいいのかもしれないっ。そうだ、僕は僕でしかないっ。僕は僕だっ! 僕でいたいっ! 僕はここにいたいっ!! 僕はここにいてもいいんだっ!!!」


 と完全になりきりながら立ち上がったら、背後から拍手とともに


「おめでとう」


 うぎゃああああああぁぁあああぁぁ~~~。

 いつの間にか帰ってきていたごっちんにしっかりと見られてた……。

 恥ずかしさのあまり、蒲団の上で転がって悶絶した。

 つーか、ごっちんも知ってんのかよ。


「そんだけ元気なら、大丈夫そうね。食事の支度しちゃうからおとなしくしてなさい」

「…………はい」


 ごっちんがつくってくれたのは、カツオ出汁の香りが鼻腔をくすぐるシンプルなおかゆだったけど、「シンプルなお粥を美味しそうに描くのは至難の業」だから説明は省略。

 それと桃缶は美味しかったけど、はちみつグレープフルーツジュースは……うーん、微妙だった。


 ――食事が終わり薬も飲んで、さて、横になろうかと思ったとき。


「ほら、背中拭いてあげるからあっち向いて」


 とごっちんが湯気がのぼる大きめのタオル片手に近づいてきた。


「自分でやるから別にいいぞ」

「いいから、さっさとするっ」

「お、おう」


 有無を言わせぬ勢いで押し切られてしまった。

 シャツを後ろからまくり上げられ、むき出しになった背中にぽかぽかタオルがそっと置かれる。

 しっかりと汗を拭きとるように少し強めにこすられて、サッパリとしていく。ヒリヒリするちょっと手前の痛気持ちいい、絶妙の力加減だった。


 まさか、ロリ美少女に背中ごしごししてもらう日が実現するとは……。

 じかに手が触れているわけでもなく、タオルでやられているだけなのに、自分でやる場合とこんなに心地よさが違うとは思わなんだ。ほんと、極楽じゃ。などと思わず老人口調になっちゃうくらい気持ちよかった。

 背中が終わり、脇腹や脇の敏感ゾーンまで手が伸びてきて、ちょっとこそばゆい。

 一方、肩越しにちらっと見たごっちんの顔は真剣そのもの。病人であるオレを気遣ってくれてる思いがひしひしと伝わってくる。


 なんだかんだ言って、ごっちんは甲斐甲斐しいなあ。

 蒲団も貸してくれたし、わざわざおかゆまでつくってくれた。

 弱ってるときに、こんなにされるとアカンな……。


「こんなに丁寧にゴシゴシするとは、ごっちんは男の身体大好きっ子だな」

「なっ!?」

「なんだったらパンツの中もやっていいぞ」

「ばかーっ!!」


 顔にタオル投げつけられた。


「後は自分でやりなさいっ!」


 あ、やっぱ怒っちゃった。

 どうもオレはシリアスに向いてない人間で、一定以上のシリアスレベルになると、どうしてもフザケたくなっちゃうんだよな。

 子どもの頃から「真面目なときに茶化すんじゃないっ!」っていろんな人に怒られてきたが、どうしてもやめられない。そのせいで、だいぶ損してきたが、これはもう、こういう性分だと思って諦めてる。


「それと着替えおいておくから、終わったら声かけなさいよっ!」


 大きなウニクロの袋をオレに押しつけ、ごっちんは脱衣所にこもってしまった――。



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