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4-13 リコピン

 蒲団に横になったオレのおでこに、ごっちんは絞ったタオルを乗せてくれた。


「食欲はある?」

「ダルいから、今はそれより眠りたい」

「わかったわ。起きたらちゃんと食べるのよ」

「ああ」

「なにか食べたいものある?」  


 サムゲタンって言おうかと思ったけど、炎上必死なのでシンプルなおかゆをお願いしておいた。いや、原作はすっごい名作なんですよ。ついでにいうと『神○き世界の英雄伝』も打ち切りになっちゃったのが残念な作品だし。


「それと桃缶」

「はいはい」


 やっぱ、カゼをひいたら桃缶だよね。カーチャンは買ってくれなかったから、子どもの頃からひそかに憧れていた。

 この「カゼをひいたら桃缶」って民間療法だと思ってたけど、最近の研究によるとちゃんと科学的な根拠があるんだって!

 なんでも、「缶詰め処理中に果肉の細胞壁が破壊され、栄養素が体内に吸収されやすくなる」そうだ。同じ理由で新鮮なトマトよりもトマトソースの方がリコピンがいっぱい入ってるんだって。

 ピコリンじゃないよリコピンだよ。ピコリンはメチルピリジンのことだからね。抗酸化作用が強くてコレステロール対策におすすめのリコピンだよ。ダイエット効果や美白効果もあるっていわれてて、サプリもいっぱい出てるけど、効き目のほどまではオレは知らん。


「あとは、グレープフルーツジュースにはちみつを溶かしたやつが飲みたい」

「??」


 ごっちんはキョトンとしていたが、深くツッコんではこなかった。

 「カゼの時になにを食べるか」って地域や人によって結構違うからね。すりおろしリンゴとか、卵酒とか。

 ごっちんもそんなもんだと思ってくれたみたいだ。本当の理由は絶対に言えないな……。


「寝つくまで手を握ってて欲しい」


 ダメもとでお願いしてみたら、「もう、しょうがないわねえ」とか言いつつも、ちゃんとOKしてくれた。


「勇作が寝たらちょっと買い物に行ってくるから、起きた時にワタシがいなくても心配しないでね」

「ああ……って、あれ、バイトは?」

「今日は休みにしてもらうから大丈夫」

「なんかスマンな」

「そんなこと気にしなくていいから、病人はちゃんと寝てなさい」

「ああ、そうさせてもらうわ、あんがと」


 オレは素直に目を閉じた。

 全身が火照っている中、おでこのタオルとごっちんのヒンヤリとした小さい手が気持ちよかった。

 その心地よさを感じながら、少しずつ眠気に包まれていく…………。


「普段は調子いいくせに、ホント、勇作は変なとこで殊勝なんだから――」

 

 でも、そんなところもキライじゃないけどね。


 そんなささやき声が聞こえたような気がしたが、夢か現実かどっちかわからないままオレは意識を手放した――。

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