4-9 おかえりんこ
ごっちんからスマホで呼び出されたオレは、サタン子ちゃんとお別れして現実世界に帰還した。
ちなみにこのスマホはごっちんが買ってきてくれた。例のファミレスと同じ神様関係者専用のケータイショップでだ。
これは普通のスマホと同じようにも使えるが、いくつか特別な機能がついている。
そのひとつが、さっきみたいに異世界にいてもごっちんとメッセージをやり取りしたり、通話したりできる機能だ。
もうひとつは『神様ネットスーパー』で買い物ができること。サタン子ちゃんにプレゼントしたリボンも『よいこのひらがなえほん』も、この『神様ネットスーパー』で手に入れた。現金じゃなくて『神様ポイント』でしか商品を購入できないけど、『神様ネットスーパー』で買ったものは異世界に持ち込める仕様だ。
絵本はサタン子ちゃんに渡してきた。オレがいない間もこれを読んで平仮名を覚えてくれることだろう。
今度は他の絵本とか図鑑とかも持っていこうかな。それくらいの『神様ポイント』は残っていたはずだ。
現実世界に戻って風呂を上がったオレは、バスタオルで髪を拭きながら六畳間へ向かった。
脱衣所の扉を開けると、こたつの上に弁当がふたつ並び、バイトから帰宅したごっちんが既にこたつに入ってスタンバっていた。
「おう、ごっちん、おかえりんこ」
「ただいまんk……。あんた、なにいわせようとしてんのよっ!!」
古典的なネタに引っかかりそうになって真っ赤な顔してるごっちんは、やっぱ単純でかわええな。
そうそう、「『ただいま』と『おかえり』を言う立場が逆じゃね? おまえが『ただいま』って言う方じゃね?」と疑問に思った人がいるかもしれない。
その意見ももっともだ。語源的には『ただいま』っていうのは「ただいま帰りました」の省略だから、言葉の意味としては後から返ってきた方が「ただいま」で、先に帰ってきてた方が「おかえり」が正解なんだと思う。
けど、次の例を考えてみて欲しい。会社勤めの旦那さんと専業主婦の奥さんっていうふたりの夫婦を思い浮かべてくれ。
今日みたいな冬の寒い日、旦那さんはいつものように朝早くから会社に出かけ、いつものようにサビ残で深夜に帰宅した。健気な奥さんは疲れて帰宅した旦那さんに暖かい料理を食べて欲しいと、旦那さんの帰宅時間に合わせて栄養満点の鍋料理を準備完了。後は旦那さんの帰宅を待つばかり、と思ったときに奥さんはふと気づいた「ポン酢が切れてる!」。
奥さんは急いで財布片手にコンビニに走ったが、旦那さんとは入れ違い。ポン酢を買って戻った奥さんをすでに帰宅していた旦那さんが笑顔で「おかえり」と出迎え、奥さんはそれに「ただいま」と応えた――。
なんかオカシくね?
ちょっとコンビニ行ってきた奥さんとサビ残までしてきた旦那さんの『帰ってきた感』を比べたら、圧倒的に奥さんが「おかえりなさい」って言う立場じゃね?
つーことで、風呂に入ってたオレよりバイトに出かけてたごっちんの方が『帰ってきた感』が高いから、オレが「おかえり」って言う立場でいいんだな。オレは幼女と遊んでただけだしな。
とかもっともらしい屁理屈を並べてみたが、単にごっちんに「ただいま○こ」って言わせたかっただけ、ってのが本当のところだ。




