4-6 共感性羞恥
岩壁を登りきって、なんとか山頂にたどり着いた。
ぐるりと周囲を眺めると、離れたところにある一際高い山の頂上に黒い小さな人影を発見!
「サタン子ちゃーん」
「――サタン子ちゃーん」
「――――サタン子ちゃーん」
「――――――サタン子ちゃーん」
呼びかけてみたら、こだまが返ってきた。3回も……。
返事がなかったので、もう一度叫びながら大きく両手を振ってみた。
それに気づいたサタン子ちゃんは……えっ!?
出し抜けにこっちに向かってジャンプしてきた――。
オレは慌てて受け止めようと焦って両手を広げ、踏ん張るように両足に力を込めたが、サタン子ちゃんはオレの手前に音もなく優雅に着地した。
サタン子ちゃんに向かって両手を投げ出したまま固まるオレ……。
なんだコレ、レフトハンギング――ハイタッチしようとして相手に気づいてもらえなかった悲し状況――より気まずいぞ。
ちなみに動画サイトにレフトハンギングを集めた動画があって、オレなんかは大爆笑で見ちゃうんだけど、耐えられずそっ閉じしちゃう人も多いらしいね。そういう「他人が恥をかくシーンが見られない」のを『共感性羞恥』っていうんだってね。これが強い人はド○えもんも見れないんだってね。
さすがにそこからサタン子ちゃんを抱きしめるわけにもいかない。「やあ、サタン子ちゃん元気にしてた?」とキョドりがちに声をかけたら、サタン子ちゃんは小さく頷き返してきた。
「それにしてもどうしたの、これ? サタン子ちゃんがやったの?」
「さたんこ、つくった。やま、いっぱいつくった」
「そっか、えらいなあ」
「さたんこ、えらい?」
「ああ、えらいえらい。がんばったね」
「えへへ」
褒められたのが嬉しかったみたいで、ニッコリ笑顔が反則級の破壊力だ。
聞いてみたところ、前回の砂山づくりがかなり楽しかったみたいで、あれから3日間ずっとひとりでやっていたそうだ。
気に入ってくれてなによりだけど、加減を知らんというか……魔王のチカラは凄すぎるというか……。
辺り一面、水墨画で描かれそうな世界だ。仙人とか住んでそう。
「どうやって山をつくったの? ちょっとやってみせてくれる?」
「うん」
コクリと頷いたサタン子ちゃんが、なにもない方向を指差した。
すると少し遅れて、ズドーンという大きな音とともに、そこに大きな岩山が現れた。
衝撃で地面が揺れ、サタン子ちゃんを抱えたオレはたたらを踏んだが、崖っぷちでなんとかギリギリ踏みとどまった。あっぶねー。
やっぱり、さっきから続いてたコレの正体はサタン子ちゃんの造山活動だったのか。いや、本人からしたら、ただの砂遊びなのかもな。
だけど、ただの子供の遊びで命を失ってはたまらん。
元の砂場に戻してくれるようにお願いしたら、ちょっと寂しそうな顔をしてたけど、「今日はもっと楽しい遊びしようぜ」って言ったら、大きく目を見開いて嬉しそうにしていた。
「ゆーさくぱぱ、あそびにきてくれてありがと」
なに言ってんだ。
遊んでもらいに来たのはオレの方だぜ。




