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13-13 ターザンごっこ

 ブラック企業をトンズラこくかたちで辞めた後、やることもない、お金もない、家にいて家族からの冷たい視線への免疫もまだできていない頃の話だ。

 ないないずくしだったオレにあったのは無尽ともいえる時間だけだった。

 日中、家にいると両親がせっついてくる。「早く職を探せ」「いつまでそうしてるんだ」と。

 そのことに居心地の悪さを感じていたオレ――その頃はまだそんなウブな気持ちがオレにもあったのだ――はぶらぶらと外を歩き回り、そのうち、公園巡りをするようになった。


 歩いては見つけた公園で一休み。そして、また歩き出す。

 いろんな公園と出会った。お気に入りの公園も見つけた。

 約半年も、雨の日を除いて、ほぼ毎日歩き続けたのだ。


 そんなフィールドワークの結果、分かったことがひとつある。

 公園には2種類ある。

 「小さな公園」と「大きな公園」だ。


 「なにをアタリマエのこと言ってんだ」と思うかもしれない。

 だけど、オレは物理的な大きさで公園の区別したのではない。

 単に大きさではなくその性質によって、オレは両者を区別したのだ。

 その便宜上の呼び方としての「小さな公園」と「大きな公園」だ。


 「小さな公園」とは、最低限の遊具が揃っているだけの比較的小規模の公園、いわゆる、「近所の公園」のことだ。

 ここには、徒歩圏内のご近所さんしか遊びに来ない。

 日本全国どこにでもあるような、ありふれた公園だ。

 わざわざ足を伸ばしてくる人はいない。

 それくらいだったら、近所に代わりになる公園はいくらでもある。


 それに対して、「大きな公園」は普通の遊具だけでなく、複合遊具やアスレチックなどを備え持つ、広々とした公園だ。

 ここは地元の人だけじゃなくて、わざわざ自転車や車に乗って、遠くからも人が集まる。


 今、オレとサタン子ちゃんが遊んでいるのは、「大きな公園」だ。

 「大きな公園」は安心だ。オレとサタン子ちゃんの二人連れでも、気兼ねなく遊ぶことができる。

 なぜなら、ここには様々な場所からいろんな人が集まっているからだ。


 サタン子ちゃんは今、滑車から吊り下がったロープに捕まってターザンごっこができる遊具に並んでいる。

 サタン子ちゃんはこの遊具がお気に召したようで、もう何回も順番待ちの列に並んでいる。

 列には十人くらいの子どもたち――幼稚園児から小学校高学年くらいまで――が並んでいる。

 この子どもたちは、兄弟や友だちと一緒に遊びに来てるのを除いて、みんな知らぬ顔同士だ。

 どこから来た子か知らないし、親が誰だかも知らない。


 知らない子が隣で遊んでいて、それが当たり前。

 これは「大きな公園」だから、起こる現象だ。

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