12-27 スイカ割り名人
ジメジメとした洞窟型ダンジョン。
入り口からここまで幅3メートルほどの通路。
曲がり角も分岐もない一本道だった。
その一本道を走ったり跳んだりとふざけた挙動で進んでいくうちに、ついにモンスターが現れた。
バスケットボール大のコウモリだ。
そいつがキイキイ鳴きながら、こちらに向かって飛んでくる。
オレは恐れずそいつの接近を待ち構えた。
ちょうどいい距離までコウモリが近づいてくる。
剣はダラリと下げたまま。
なにも考えない。
いや、オレはひとつのことだけを頭に浮かべる。
――Bボタン連打だっ!
「ダダダダダッ」と頭の中にあるコントローラのBボタンを某スイカ割り名人が如く16連射。
オレの思考につられ、剣を持った右手がくるくる回り、コウモリを切り裂く。
手応えもなく、コウモリは息絶えた。
これこそが、ダンジョンに入る前に色々試して発見したテクニックだ!
ダッシュや2段ジャンプなどのアクションが頭で考えただけで発動する。
これに気づいたオレは、そこから一歩進んで考えてみた。
――もしかして、元のゲームのコマンド入力するイメージすればいいんじゃね?
結果はこの通り、見事にその通りだった。
ダッシュする際も「後ろに進むと思って、すぐに前に進む」なんて面倒なことを考える必要ない。
「左右ね」と脳内コントローラをチョチョンなイメージで十分なのだ。
自分というキャラをコントローラで操作すると考えればいいのだ。
なんか、ハ○ターハンターにそんなキャラいたよね。
元になったゲームは当時のゲームのご多分に漏れず、連打によるゴリ押しで割となんとかなるゲームだ。
素人のオレがガチャガチャと剣を振り回すより、「Bボタン連打」の方がよっぽど効率的。
この調子でガンガン進んでいこう。
このゲームのダンジョンは通路と小部屋から構成されている。
しばらくオレは通路を進んでいく。
最初のコウモリ以外はモンスターに遭遇することもなく、最初の小部屋に到達した。
オレが小部屋に入ると、入り口と反対側の出口、その2つがバリアのようなもので遮られた。
小部屋の中には一体のモンスター――ゴブリンっぽいのがいた。
元のゲームには存在しないヤツだ。
ゼル子ちゃんもモンスターはオリジナルだって言ってたな。
ともあれ、コイツを倒さない限り、この小部屋からは出られない仕様なんだろう。
さあて、サクッと倒すか。