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11-11 叙述トリック

 遂に、ひろちゃんが真相を口にする――。


「酔いつぶれて寝ちゃったんだよ、ゆーさくは」

「へっ!?」


 思わずマヌケな声が出てしまった。


「だから、わたしがゆーさくをここまで運んだんだよ」


 うぎゃー。

 さんざっぱらエラそうに推理とかしておいて、出発点からして間違ってんじゃねーかよ。

 なにが、「『ホテル行こうよっ!』とか、誘っていてもおかしくないな」だよっ!

 なんでオレがホテルに誘ったことは前提で、そっから推理してんだよ。

 まさに、砂上の楼閣そのまんまじゃねえか。

 恥ずかしすぎるわっ!!


 いや、ちがうんだよ。

 これは、あの、そのっ…………。

 ……………………………………。


 コホン。

 そう。あれだよ。

 これはいわゆる「叙述トリック」ってヤツなのだよ。


 みんなも綺麗に騙されたことだろう。

 これまでの推理はすべて、「オレがひろちゃんをホテルに誘ったこと」を前提に進められてきた。

 しかし、この前提、そんなに素直に信頼していいものなのだろうか?

 そもそも、オレは「酔っ払ってヘンなテンションだったら、勢いで女の子をホテルに誘う」ような軽佻浮薄な男だろうか?


 さきほどの回想シーン(11-4参照)では、わざと読者がそう誤解するように、さもホテルに誘ったことが自然なように描写した。

 しかし、それこそが巧妙に仕組まれた罠だったのだよ。


 よく考えて見給え。

 明晰な頭脳を働かせ給え。

 蒙昧な自己と決別し給え。

 過去の私の振る舞いを想起し、愚かな偏見と先入観を打ち払い給え。

 私という人間の本質を、曇りなきその目で見通し給え。


 つーかさあ、ヘタレな勇作くんが酔っ払ったくらいでホテルに女の子を誘えるわけないじゃん!


 さっさと気づけよな…………オレ。


 あまりにも見事な叙述トリックだったから、今の今までオレも騙されてたわ。

 すまんすまん。


 てゆうか、初デートで女の子を残して酔いつぶれるとか、置いて帰られて、そのまま音信不通コースでも文句言えないレベルの大失態だよな。

 だけれども、ひろちゃんはそんな情けないオレを見捨てないでくれた。ありがたいことだ。


 まあ、そんな大失態でも、自分からホテルに誘っておいて記憶なくすよりはまだマシなのかもな……。

 でも、これでハッキリと答えが出た。


「てことは……」

「うん。大丈夫。まだ魔法使えるよ」


 ひろちゃんの眩しい笑顔に安心としたような、残念なような…………。


 はあ。疲れた。

 でも、結局、これでよかったんだろうな。

 勇作くんらしい、なんとも締まらない結果だったけどね。


 ――とホッと一息、油断しきっていると、


「それに、私もまだユニコーンに懐かれるし……」


 ひろちゃんから会心の一撃ッ!


 自分から言ったくせに、恥ずかしさでポッと顔を赤らめるひろちゃん。

 カワイさが限界突破してる。


 完全に油断しきっていたところをクリティカルに不意打ちされ、こんなんキュン死するわ!


 だけど、そのおかげで、今まで緊張して肩に入ってた力がスッと抜けた。


 二人とも照れながら笑い合う。

 うん。いいんじゃないかな。

 なんか、オレとひろちゃん、二人らしいじゃんか。

 これで今度こそ、一件落着かな?


 いや――そうじゃない。


 まだ解き明かされていない謎がひとつだけ残されている。

 その謎が解けるまでは、オレは決して納得することができない。

 その謎とは――。

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